顔を出すのが遅くなった太陽
深い蒼の空に紅色の雲がさす
まだ光を放つ半月の下の
川沿いを一人きり散歩する
水の音を冷やされた風が揺らす
高い空を国を渡る飛行機が光る
まだ眠りに就いたいくつもの窓を
暁の白い月が横切っていく
ぼんやりと光っていた街灯が消えて
雲の向こうから赤い太陽が見える頃
ほんの少し汗ばんだ額を
優しい風が滑っていく朝が来る
そして今日が始まっていく
そして今日も始まっていく
カビや手垢のついた言葉は要らない
そんなことを言ってたら
何も言えなくなった
だれも使ってない言葉なんてない
そんなことを言ってたら
どれもありふれてしまった
自分はどこへ行ってしまったのか
言葉にこだわりすぎた挙句に
私がどこかへ行ってしまった
単純明快でもいいのだし
難解だっても構わない
心を表現できるなら
そこにあるのは
ありふれててもありふれてない
気取ってるようで気取っていない
私自身の言葉
私たちが生きている理由なんて
きっとそんなたいしたことじゃない
ただ生きているから生きている
美味しいものがあるから
楽しいことがあるから
好きな人がいるから
気になることがあるから
悲しいことがあっても
失敗することがあっても
嫌いな人がいても
何も気にならないとしても
私たちが生きている理由なんて
きっと特に言葉になんて出来ない
ただ明日が来ると信じてる
生きているってその程度
だけどそれがとても大事
新しいワンピースの裾を翻して
熱い風の中を駆けて行く
君のむき出しの白い腕に
太陽とヒマワリの光が揺れる
空にわきあがる入道雲が
笑顔の君の顔を照らす
世界はどこもかしこも白く光る
そして熱く甘く香る
どこまでも走っていける
溌剌とした脛を蹴立てて
君は時折振り返って笑う
僕を手招き手を振りながら
麦藁帽子とぺたんこのミュール
ワンピースには水玉のリボン
どこから見ても夏の少女の
君がいるから僕にも夏が来る
夏の夕暮れにこもった熱気が
風を膨らませわが身に迫る
甘く熟れた果実にも似て
どことなく気怠くなぶって抜ける
夏の夕暮れに昇った月が
雲をすり抜けてわが身に迫る
やわく爛れた果実にも似て
どことなく気鬱に粘って落ちる
夏の夕暮れに騒いだ胸が
夜を待ちわびてわが身を焦がす
硬くつぼんだ蕾より早く
どことなく気ままに匂って開く
たとえば夢にあなたがいて
私を抱きしめてくれたなら
たとえば空にあなたがいて
私を見守ってくれたなら
たとえば木漏れ日の中に
あなたの声がするのなら
たとえば風が吹きすぎる
そこであなたが笑うなら
たとえば私の行く先に
あなたが待っているのなら
それだけで幸せに
思うでしょう
どこにいても
どんなときも
あなたを感じてられるなら
月の夜には散歩しよう
街灯のない町並みを
車も通らぬ町並みを
窓の明かりも消えた夜に
闇夜に紛れた黒猫が
金色の目を光らせる
たった一声にゃあと鳴き
月に尻尾を翻す
どこか遠くで呼応した
闇夜の鴉の鳴き声も
笑いを含んで遠ざかり
川面の流れの音ばかり
せせらぐ川は月を受け
砕けた光をちりばめる
砕けたかけらが足元で
夜を含んだ飴になる
月の夜には散歩しよう
眠れぬ夜を過ごすなら
拾った月の飴を舐め
夜を身体に取り込もう
美味しいものを食べて
楽しい話をして
好きな人たちと過ごす時間
リラックスして
リフレッシュして
また頑張れる
美味しいものを食べて
たわいもない話して
好きな友たちと過ごす時間
何気ない一言に
なんでもない一瞬に
また救われる
そういう幸せを
感じられる日があること
そういう楽しみを
信じられる日があること
それでまた生きてける
まだ見たこともないあなた
まだ遠い存在のあなた
ここにいるのだけれど
いつか出会うはずのあなた
もう少し待たせるあなた
ここにいるのだけれど
小さな存在のあなた
大きな存在のあなた
ここにいて私に宿る
私は私のものだけど
私一人のものじゃない
私はあなたのものであり
あなた一人のものじゃない
どんなにどんなに愛していても
私は誰かのものじゃないし
どんなにどんなに一人でいても
私一人のものじゃない
私は私のものだけど
私一人じゃ生きられないし
私は私のものだけど
私以外のためにも生きる