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藤納戸


藤樹庵さんちの
フェルナンド君は
当年とって
十と二歳
人呼んで
フジナンド

日がな一日
藤棚の下で
昼寝をしてる
白に斑の


十と二年
そこで寝ている
フジナンドの
元は灰色の斑は
いつの間にやら
藤納戸色に
染まっている

藤樹庵さんに来る
お客さんは
藤棚の下
縁台に座って
買ったばかりの
団子を食べる

時折
店主に隠れて
こっそりこっそり
フジナンドに
お裾分けしたりなんかして

花が咲くには
まだだいぶ早い
早春の藤棚の下
円くなって眠っている
やわらかな藤納戸

ひだまりに優しく
咲いてる
年寄りの猫


■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤納戸

(2006/02/06)




藤花月宴


時季が来れば
それはみごとな
色が溢れる
藤の老樹

遠い昔に
創業をした
和菓子屋の隣

満月の夜に
通りかかると
目も覚めるような
麗人がいて

白髯の豊かな
老人とふたり
酒を酌み交わしたり
しているという

朝日の中では
藤棚の下に
眠る老猫

素知らぬ顔で
通りを見遣り
時折
小声で会話を交わす

花咲き零れる
月の夜なら
宴に招いてくれるらしいが

ともかく今は
涼しい顔の
藤の老樹と
斑の白猫

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤色

(2006/02/08) 



藤紫の花の下


見事に広がる
藤の樹が
屋根を織り成す
藤棚の
その向こうに
和菓子屋があって
年中
甘い匂いを
漂わせてる

裏に廻れば
ご隠居が
日がな一日
庭を見てたり
散歩をしたり
時には猫と
昼寝をしたり

春まだ浅い
うららかな日は
咲いてもいない
花の香がして
匂いに聡い
ご隠居は
それはいそいそと
藤棚へ行く

木漏れ日の中
藤紫の幻花が
降り注ぎ
ご隠居は猫と
縁台に座り
待ち人が来るのを
心待ちにしてる

藤紫の花の下
そこでは遠い昔から
幾つの不思議が
もう亡い人や
人でないもの
優しい夢を
連れてくる

そんなわけで
見事に広がる
藤の樹の下
暖かな陽射しと
花の香の中
老夫婦が今
莞爾と笑う

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤紫

(2006/02/09)


「和名色タイトル縛り」の「藤納戸」「藤」「藤紫」です。

なぜ三つ同時収録かというのは読んでもらえば分かるとおり、続きのお話になっているから。続きというか、同じ舞台ですね。

この和菓子屋と藤の老樹はその後、他のところでも使いました。
ちなみに、同じ名前の和菓子屋さんがあるらしくて(作ったときに検索かけたんだけどなぁ…)、時折そちらを探した方が迷い込んで来られます(笑)


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2007.03.17 Sat l 月々 l コメント (2) トラックバック (0) l top

コメント

そっかあ~もう1年以上も前の詩なんですねぃ。。
やけに記憶に残ってる詩なんですけど、良いものはいつ読んでも良いです♪
2007.03.18 Sun l ちゃりs. URL l 編集
コメント有難うございますv
覚えていてくださったんですねv

そうなんです、もう一年以上前なんですよ。私も月日の速さにビックリです(笑)

愛着がある作品なので、良い作品だと言ってもらえて嬉しいですv
2007.03.18 Sun l あーるぐれい. URL l 編集

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