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目を覚ましたらいなくなっていた。
「ミミ」
呼んでみるが、気配がない。
かわりに、海鳥の声と潮騒が聞こえた。
私の右耳は海岸沿いにいるらしい。



手紙を書こうにも右手がいない。
左手で書いてみたが、なぜか気持ちと裏腹になってしまう。
やはり逆になってしまうらしい。
白紙の手紙を恋人に出した。
二人の思い出の記念切手を貼ったので、察してもらえればよいが。



目を覚ましたら声が出かけていた。
どうしても歌わなくてはならないのに。
困り果てていると、友人が連れ帰ってきてくれた。
どうやら無人のホールで練習していたらしい。
返ってきた声は自信に満ちていた。



目を覚ますと右手が金塊を持っていた。
どうやら、寝ている間に抜け出して宝探しをしていたらしい。
大金持ちになったが、転売ルートなど知らないし、下手に売ればこちらが捕まってしまう。
もとあったところに返してきなさい、と右手を強く叱ると拗ねてしまった。
抗議のつもりか、一日中脇腹をつねったままなので、買い物もままならない。



有名な高級スイーツをいただいた。
そういう日に限って、「舌」がいない。
味覚が出かけているので、味が分からない。
ロールケーキは血も滴る肉の味がした。
いったい私の「舌」はどこで何を食べているのやら。



目の前を泡が立ち上っていく。
どうやら、今日の左目はシャンパンの中にいるらしい。
ぷつぷつと気泡が眼球を撫でていく。
赤いグラスの向こうに道路が見えて、歩いていく私が見えた。
なるほど、このレストランにいるのか。
思った途端にグラスが持ち上がり、私の左目は誰かの喉を滑っていった。
適当なところで戻ってきてくれるといいのだが。



どこかを歩いている。
目を覚ますと、両足が出かけていた。
どうやら、感触からすると、灼熱の砂漠のようだ。
砂浜でない証拠に、どうやら砂地獄に飲み込まれつつあるようだ。
窓の外の雪を見ながら手にした旅券を見下ろした。
バカンスは常夏の海にしよう



噎せかえるほどの香りに包まれている。
目を開けると、百花繚乱の花園が見えた。香りの元はこれらしい。
どうやら、鼻と左目が連れ立って出かけているようだ。
ふと見ると、足元に倒れている人影がある。
胸から金色の柄が飛び出て、地面は赤く染まっている。
落とした目線が血まみれの手を映した。鼻と目が出かけた先は、殺人犯のようだ。
しかし、通報しようにもここがどこだか分からない。
諦めて、花園を楽しむことにした



昨日までのことがどうしても思い出せない。
なんとなく分かるのは、記憶が出かけているということだけだ。
かわりに、自分のものではない思い出が蘇ってきた。
どうやら零落した王朝の王子であるらしい。
いい暮らしをしてたんだなぁと、狭い部屋の中、安酒を飲みながら思った。
落ちぶれた王子よりもなお、今の生活の方が侘しくてつましい。



気付いたら雑踏の中にいた。
どうやら全ての感覚が同時に家出をしたらしい。
徒党を組んだようだ。
ショウウィンドウで見つけた己の姿は驚くことに弟のものだった。
全てをのっとられた弟は果たしてどこに行ってしまっただろうか。
そして。ベッドの中にいるはずの私は、果たして生きているのだろうか。

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2009.12.02 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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