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恋人と温泉旅行に出かけた。
温泉から上がって部屋でくつろいでいると、恋人のバッグで電話が鳴った。
いつまでも鳴っているので出ようかとバッグを覗き込むと
トートバッグの底に光るナイフを見つけた。
見なかったことにした。
電話はいつまでも鳴っている。



散歩に行くと言い残して部屋を出た。
最終電車で逃げ帰ろうとしたが、次の駅が終着駅だった。
仕方なく戻ることにした。
一駅分歩いて疲れたが、駅に恋人が待っているのを見て冷や汗をかいた。
どこまで言ってたの、と無邪気に問う恋人の、バッグから覗くスカーフがナイフをくるんでいるのが見えた。



帰り道で雨が降り出した。
私、折りたたみの傘を持っているのよ、と恋人が言ってバッグに手を入れた。
スカーフの中の柄を掴もうとしたので、慌てて止めた。
もうちょっとだし走って帰ろう。
血の雨に降られるよりは、雨に濡れたほうが百倍マシだ。



冷えた体を湯で温めることにした。
団体客が疲れを癒しに入りに来ていた。
浮かない顔をしているね、と一人の男に言われたのでわけを話す。
それならこれを持っていきなと、蛇使いが蛇の卵をくれた。
南国の果物に似た匂いの卵を持ったまま、温泉を出て部屋に戻る。
恋人が誰かに電話をしていた。



部屋に戻ると恋人が待ち受けていた。
遅かったのね、と笑いながらお茶を勧めてきた。
緑色のそれは、お茶というよりも入浴剤入りのお湯のように見えた。
毒々しい色の湯飲みから目をそらし、こんなものを貰ってね、と蛇の卵を見せてみた。
恋人は大きく悲鳴を上げた。



卵が割れると中から暗闇が出てきた。
部屋中が真っ暗になった中で恋人に問う。
お前のバッグの中に入っているナイフは何なのだ。
何のこと、ととぼけた彼女はぱくりと蛇に飲まれてしまった。
とたんに暗闇が弾けて、星空のような一振りのナイフだけが部屋に落ちていた。
柄に蛇が巻きついている。



巻きついた蛇がナイフを飲み込んでしまった。
取り返しのつかないミスをした気になったが、どうしようもない。
蛇が近寄ってきたので、近くにあった箒で庭へと掃き出した。
真っ暗な庭先に、蛇使いが立っている。
金色の瞳がこちらを見て光っていた。



さあ、サーカスへ出かけよう、と蛇使いは言った。
賑やかなジンタが庭先に流れてくる。
彼女はどこへ行ったのだ、返してくれと言うと蛇使いは笑った。
鶏や牛を捌くみたいに君を捌いて食べようとした女をかい。
それでも恋人のいない世界は灰色なのだと訴える。
蛇使いの腕に巻きついた蛇がするすると天に伸びて、空中ブランコになった。
一緒に行けば教えてあげようと、蛇使いが誘う。



手を取ろうとした途端、音楽が止んだ。
どうやら時間切れだ。
君はどこまでも草食らしいね、と蛇使いが笑った。
草を食べるのに夢中で、目の前に大きく開いた赤い口があることに気づかない。
だが罠を回避する勘と、出くわさない運は持っている。
理解できずにいると、ロープは蛇に戻り、赤くぬめる口を開けた。
あっという間に飲み込まれてしまった。
運と勘はどこにあるんだろう。



キスの感触で目を覚ますと恋人がいた。
野原に恋人と二人きりでいたらしい。
ラベンダー色の空が見える。
お寝坊ね、と恋人が笑ったがそれどころではない。
あのナイフは何だったのだと訊くと、あなたは誰と来るつもりだったのと訊き返された。
ジンタの曲が鳴ったが、出所は恋人が持っていた電話だった。
促されて耳に当てると、ここにいない恋人の最期の声がした。
ここにいる恋人を見ると、血まみれたナイフを舐めて笑っている。
いつの間に入れ替わったのだったか。

次に目が覚めたとき、隣で寝ているのはどちらの恋人だろうか。



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2009.10.19 Mon l 一枚の茶葉 l コメント (0) トラックバック (0) l top

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