どことなく冷たい風の中
夏にさよならを言った
もうそんな時期かと
夏は酒を飲み干した
溜息は熱い風となって
秋の傍らを抜ける
秋は涼しい顔をして
夏の肩を引き寄せる
なあに
ゆっくりお行きよ
こちらもゆっくり飲み始めるさ
そんなわけで
夏と秋はバーのカウンターで
酒をのんびり酌み交わしてる
暑さと寒さが入り混じるのは
こんなときだとバーテンが笑う
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どこへ行ってしまったの
行くはずもない場所から
どこへ消えてしまったの
何の手がかりも残さずに
私が信じていたものは
ただの幻に過ぎないの
私が思っていたことは
ただの間違いに過ぎないの
どこへ行ってしまったの
行ける場所なんてないくせに
どこへ消えてしまったの
初めからないような顔をして
私が知っていたものは
ただの幻想に過ぎないの
私が見つめていたものは
ただの誤りに過ぎないの
どこへ行ってしまったの
どこへも行けたりしないのに
どこへ消えてしまったの
どこへも消えたりしないのに
早く早く出ておいで
去年のあたしが書いた詩を
今のあたしが書き直したら
どれくらい違うだろう
五年前のあたしが書いた物語を
今のあたしが書き直したら
良くなると同時にきっと
消えてしまうものもあるだろう
十年前のあたしが描いた夢を
今のあたしが書き直したら
それでもなおまだ
そこに夢はあるだろうか
書き直したいと思うこともあるけれど
書き直せないだろうと思う
昔のあたしたち
(2009.08.28)
古ぼけたラムネの瓶の
泡の底に眠る金魚
こども達も来なくなった
はやらない駄菓子屋の片隅で
時折目を覚ましては
瓶の口を塞いだままの
青い地球を尾びれで撫ぜる
店先の乾いた道沿いに
錆びちゃけた陽射しが降り注ぐ
寝ぼけまなこの仔猫が通り
瓶の金魚ににゃああと啼いて
揶揄い半分に尻尾を揺らし
驚く金魚が泡を蹴立てた
弾ける音に耳を澄ます
夕立が来れば日向の匂いが
店の中まで満たして濡れて
店番をしていた老婆の裾に
虹のかけらを落として揺れる
遠く広がる緑濃い森を
ラムネの泡越し金魚は眺め
するりと泳いだ鱗に映す
寂れた古い町の片隅
昼寝をしてるよな空気の中で
夢とよく似た駄菓子屋は
陽炎の中の幻と遊び
古ぼけたラムネの瓶では
ときおりあくびの様な泡を立て
今日も今日とて金魚は眠る
(2009.08.26)
夜の風が涼しくなったね
歩きながら君が言う
風に髪をなびかせて
君が軽やかに歩くから
優しい甘い香りが
僕をくすぐる
やがて来る秋にも
寒くなる冬にも
柔らかな春も
そして一年後の夏も
君とこうして歩きたい
歩きながら僕が言う
髪に星を光らせて
君が軽やかに笑うから
優しい甘い予感が
僕をくすぐる
確かな予感とともに
君に会いたい
君に会いたい
君とキスがしたいんだ
君に抱きしめて欲しいんだ
君に会いたい
君に会いたい
君に笑って欲しいんだ
君と抱きしめあいたいんだ
ああ
だから
今すぐ君に会いたいよ
今にも飛んで行きたいよ
君に会いたい
君に会いたい
君に会いたくてたまらない
君が大好きで止まらない
アタシの唇
あなたのキスを奪いたい
つやつやリップ
甘い香り乗せて
あなたのキスを奪いたい
吐息に乗せた
好きの言葉を
どうかあなた受け止めてね
アタシの唇
あなたにキスを奪われたい
ぷるぷるリップ
誘う色香乗せて
あなたにキスを奪わせたい
世界はどこまでも明るく
そしてどこまでも強かった
獲物を逃さない執拗さで
どこまでも追ってきた
白く柔らかだったものが
赤く熟れている
冷たく静かだったものが
熱く燃えている
世界はどこまでも激しく
そしてどこまでも厳しかった
逃げる場所などないのだと
どこまでも追いかけた
そして私の肌は
赤く燃えている
秋が来たよと鳴く虫の
まるでセミのよな元気よさ
物悲しさもどこへやら
工事現場か爆音か
少し冷たい夜風の
涼さえ吹っ飛ばすにぎやかさ
ノスタルジックもどこへやら
耳を劈く大音声
お願いだからもう少し
ボリューム下げて啼いとくれ
お願いだからあと少し
わびさび踏まえてやっとくれ
バニラアイスクリームのように
白く甘くなりたい
恋や愛のトッピングが
美しく映えるように
バニラアイスクリームのように
柔く冷たくなりたい
胸を焦がす熱い想いも
するりと喉を通るように
バニラアイスクリームのように
夏の陽射しに似合いたい
あなたの腕に抱かれたい
あなたのキスを貰いたい
喉を焼くような甘さに
あとであなたが水を欲しがっても
(2009.08.20)
あなたのそばにいないほうが
あなたの幸せになるのなら
私は素直に身を引くでしょう
あなたをそばで見つめるほうが
あなたを良い方へ導くのなら
私はあなたに寄り添うでしょう
あなたの幸せはあなたのものだけれど
あなたが幸せなら私は嬉しいから
私がそばにいないほうが
あなたの苦痛を癒すのならば
私は静かに立ち去るでしょう
私をそばに感じるほうが
あなたに安堵を齎すならば
私はあなたを抱きしめるでしょう
私の幸せは私のものだけれど
あなたと幸せを分かち合いたいから
もしいま答えが出ないのならば
私をそばにいさせてほしい
あなたがそばにいたがらないなら
すぐにだって去っていくから
私のそばでも痛がらないなら
どうぞ一緒に行かせてほしい
いつかあなたが答えを出すまで
(2009.08.19)
どんなことでも
どんなときでも
前向きに考えよう
良い方に考えよう
そう思うのが
私の努力
不安に潰されて
悪い方に考えて
泣きたくなったり
不満抱いたり
それでも欠かさぬ
私の努力
絶望的な観測で
未来の事態に備えたり
何が起こってもいいように
構えてみたりもするけれど
たとえば何かが起こっても
ほんのわずかでもいい方に
見方をシフトしてみよう
そう思うことが
私の努力
臨機応変
なるようになるよ
なってみなくちゃ分からない
不撓不屈
前向きに行くよ
やってみなくちゃ分からない
以心伝心
そう上手くはないよ
言ってみなくちゃ分からない
だから
無我夢中で行こうじゃないか
昔はよく
いろんなお菓子を作ってた
チョコケーキ
パウンドケーキ
シフォンケーキ
タルトに
ムースに
マシュマロに
クッキー
ゼリーに
ジェラートに
昔はよく
いろんなお菓子を作ってた
誰かに食べて欲しくって
誰かを喜ばせたくって
そして今
あなたのために作ろうと思う
こっそりいつか
あなたのために
冷たい水や
アイスや氷
そんなものが恋しくて
ついつい摂ってしまうけど
冷たい風や
乾いた空気
そんなものが恋しくて
クーラー点けてしまうけど
確かに今年の夏は暑いから
そんな気持ちも分かるけど
たまには熱いお茶をすすって
たまには暑い空気感じて
夏を満喫してみよう
無理をしない程度にね
焼け付く太陽
焦がすような日差し
アタシの肌をじりじりと
焼くつもりはないけど
ちょっとくらいならいいかな
太陽の誘惑に身を任せて
今年の夏は海に行こう
おニューの水着着て
アタシはあなたを誘惑するの
怒りたいような気分の時には
笑ってみる
ちょっと引きつっていても
ちょっとぎこちなくても
笑い飛ばしてみる
嘆きたいような気分の時には
笑ってみる
ちょっと眉根が近寄ってても
ちょっと口角が下がっていても
微笑んでみる
難しくったって
笑ってみる
心持ち眉間の力を抜いて
口の端を上げてみて
笑ってみようじゃないか
怒ってもいいときもあるし
嘆いてもいいこともあるけど
そうじゃないことも多いから
笑ってみよう
大きく息を吸い込んで
(2009.08.14)
どこだって君となら
面白い場所になるだろう
楽しい場所になるだろう
美しい場所になるだろう
一人では
気付かなかった感動や
予想も出来ない発見が
幾つもきっと見つかるだろう
どこだって君となら
どこへだって君となら
(2009.08.12)
あなたに会いたい
会いたい
会いたい
会いたい
その気持ちが溢れて
私を押し流したらいいのに
あなたのところまで
たどり着けたらいいのに
知らないうちに出来た痣や
覚えもないのに出来た傷
分からないままなのに痕になって
私の上に残って行く
全部消えてなくなればいいのに
それともそれをなくしてしまえば
大事な何かも無くすのかしら
私をずっとずっと遡ったら
誰に行き着くかな
もしかしたら
教科書にでも載ってる
有名な誰かがいるかな
もしかしたら
君と同じご先祖様に
行き着いたりするかも
もしかしたら
君とは世が世なら
敵同士だったかもしれない
私をずっとずっと遡ったら
面白そうだけど
とにもかくにも
私のところまで
繋いでくれてありがとう
君のどこが好きかなんて
聞かれても困るよ
ダメなとこなら
幾つも挙げられるけど
好き嫌いが多いとか
ヘンなこだわりがあるとか
ちょっぴり偉そうだとか
君のどこが好きかなんて
言うのは難しいよ
いいところなら
幾つだって挙げられるけど
家事が得意だとか
車道側を歩くとか
気遣い屋さんだとか
君のどこが好きかなんて
言わないとダメかな
言葉には出来なくても
君のこと好きなんだけど
いつも好きと言ってくれたり
甘えてきたり
抱きしめてくれたり
そういうの好きだけど
君を好きな理由じゃないの
君のどこが好きだか
聞いてみてもいいかな
アタシは君のどこが
好きなのか挙げてみてよ
それとも一緒に
考えようか
これからずっと先まで
オトナになって
捨てられないものも増えたけど
手放せるものもあることに気付く
意地っ張りで見栄っ張りな性格を
丸ごと放棄することは出来なくても
ほんの少し肩の力を抜いて
素直になってみることはできる
自堕落で好き勝手な生活を
イキナリ改善は出来なくても
ほんの少し手の届くところで
節制をしてみることはできる
守るべきものと捨てていいもの
それがなくても私の自我は保てる
その見極めの境界を
緩やかにすることが出来る
オトナになるって
意外とコドモのときよりもずっと
柔軟に変わることが出来るということ
遠い日の空の下にも
人はいた
よく晴れた夏の日の
朝の陽射しの下に
人はいた
同じような空の下で
生きている私たちに
降り注ぐものが
ただの陽射しであるように
世界中の誰一人
押してはならぬボタンを押さないように
ただ願い
ただ祈り
そして隣の誰かに笑いかけ抱きしめる
その手が傷つかぬように
その手が傷つけぬように
誰もが誰かに笑いかけ抱きしめて
青空の下で生きて欲しい
ただ願い
ただ祈り
愛が地球を救うようにと
(2009.08.06)
空に月が昇る頃
町は蜂蜜の色になる
甘い匂いに誘われて
君の唇にキスをした
甘く優しく蕩けてた
空の月が溶ける頃
町は蜂蜜の味になる
金色に光る道端で
君の指先にキスをした
甘く柔らかく濡れていた
やがて夜が明ける頃
空も町も染まってく
冷たく煌く蜂蜜に
君と二人で溶け合った
甘く安らかに溶けていた
(2009.08.03)
女の子はいつでも
可愛くなりたいと
思っているの
好きな人や
誰かや
自分のために
女の子はいつでも
可愛くありたいと
頑張ってるの
服や小物や
髪型や
しぐさやコトバで
男の子はだから
可愛いよって
言ってあげて
君の言葉や
笑顔や
抱きしめる腕が
女の子にとっては
可愛くなるための
力になるの
可愛いベイベー
小さなレイディ
こまっしゃくれた顔をして
おませな口調で煙に巻く
可愛いベイベー
小さなレイディ
年端も行かない子供のくせして
しっかりおしゃまな女の子
もっと大きくなったなら
君も誰かに恋をして
ホントのレディになっていく
可愛いベイベー
小さなレイディ
そうだねきっとそれまでは
僕が君の騎士になろう
いらっしゃいませ
お探しの品はこれでしょう
掌サイズの小さな鳥かご
小さすぎると侮るなかれ
何でも入る鳥かごなれば
歌う小鳥も大鷲も
羽を広げた孔雀でも
たとえば中に草花入れて
秘密の花園にも出来まする
たとえば中に恋しい人を
住まわせることも出来まする
過去や時間や思い出や
愛や憎悪や心まで
何でも入れてごらんあれ
お色は金と銀の二つ
どちらをお選びになりますか
閉じ込めるなら金のかご
守りたいなら銀のかご
さあどちらを選びます
ただしお一つご注意を
金も銀もどちらのかごも
所詮は同じかごの鳥
それでも良いならさあどうぞ
アタシたちのコトバは
空を飛ぶ電波になって
毎日何万字も
行き来する
アタシたちのコトバは
文字だけじゃなくなって
幾つもの絵や記号で
コエを出す
アタシたちのコトバは
シンコクでもクダラナくても
同じような軽さで
飛び交った
アタシたちのコトバは
ケイハクなウソばかりでも
ちゃんとどこかしら
ホントウもあるの
アタシたちのコトバは
ウソもシンジツも
アイもユメも空を
行き来する
どこか遠い町で
私は少年だった
少女の手を引いて
戦火の中を駆けた
空は赤く黒く
町は静かに燃えて
少年と少女は
ただひたすらに駆けた
もうダメだよと
嘆く少女を連れて
町の外れへと着いた
かつての日々が脳裏を駆けた
そこは森の始まり
少年は少女を連れて
全てから逃げるように
緑の中を駆けた
花に埋もれた広場で
二人は世界の終わりを見た
長い戦の終わりは
分からないままだった
柔らかな褥の上で
私は私だった
少年と少女の行方を
目覚めた私は知らない
ただひたすらに
幸せであれと
存在しない二人の
未来をただ願った