たとえば君が
次に生まれるとき
女でも男でも
ぼくは君に恋するだろう
たとえば君が
空を飛ぶ鳥なら
危険なときには君を守る
扉のない鳥かごになろう
たとえば君が
朝にかかる虹なら
強い陽射しに消えていっても
瞼の裏に焼き付けておこう
たとえば君が
昨日に置いて来た夢なら
今宵眠りに着くまでずっと
その欠片を探し当てよう
たとえば君が
眠り続ける姫ならば
その耳元で愛を囁き
ぼくもまた傍らで眠ろう
たとえば君が
一輪の小さな花なら
散った花びらを飲み干して
君の最期を見届けよう
たとえば君が
今ここにいないとしても
いつでもどんなときも
ぼくは君に恋するだろう
(2009-02-26)
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閉ざされた扉の向こう側に
置いてけぼりにされた小さな私
泣いていたとしてももはや
その声は届かない
聳え立つ瓦礫の向こう側に
取り残されたままの孤独な私
絶望に沈んだ瞳はとうに
伏せられたままで交わらない
心細さの中に立ち竦んだままの
怯えるだけの少女は今でも
どこかできっと泣いている
どこかできっと傷ついている
捨てられた心の向こう側で
置き去りにされてしまった幼い私
彼女は今も泣いてるだろうか
彼女は今も傷ついたままだろうか
それをもはや今の私は知る術もなく
風の音に幻聴を聴く
夜の帳に幻覚を視る
(2009-02-24)
僕たちの旅は
とても遠くまで
とても近くだけ
丘の上から見える
ほんの小さな町と
そこから先に広がる空の
そのまた向こう
光る海岸沿いを
横切っていく線路に沿って
僕たちの旅は
とても果てしなく
とても短くて
朝日が顔を見せる
ほんのわずかの瞬間と
何億光年の星の
そのまた先と
光る銀河の中を
横切っていく彗星に乗って
僕たちの旅は
どこまでも
いつまでも
地図や天球儀の上を
雨の音
沈丁花の匂い
静かに溶け出して
夜はひそやかに
温む雨
涙にも似た温度
優しく溶け合って
夜は甘やかに
夢の中
染み渡る雨音
じんわり交わって
夜は軽やかに
過去にしがみついて楽しい?
どんな素敵な過去も
どんな綺麗な昔も
それはもう戻らないよ
過去に縋りついてれば楽?
どんな素敵な恋も
どんな立派な履歴も
それはもう過去のものだよ
そんなこと分かってる
そう言いながら
昔は良かった
過去を越えられない
そう言って今を拒んでる
過去に固執するの楽しい?
どんなに願ったって
どんなに祈ったって
そこにはもう戻れないよ
それはもう変えられないよ
諦めて踏み出せよ
過去があって今があるって
どんな素敵な過去も
どんな綺麗な昔も
未来には敵わないって
これから変えていこうよ
どっちつかずの自分に
胸の中の声が問う
どうしたいの
どこへ行くの
答えられないと知りながら
その声は消えない
どっちつかずの自分を
頭の中の声が責める
なにしてるの
なにがしたいの
答えは出ないと知りながら
その声は止まない
答えがどこかにあるのなら
答えを確信できるなら
どっちつかずの自分は消えて
一歩進めることだろうに
声は消えない
ずっとずっと
どうしたいの
どこに行くの
なにしてるの
なにをしたいの
あなたのことを考えて摘んだ花
甘く香って髪を飾る
淡く色づき指を染める
あなたのことを想って摘んだ花
愛を歌って風に揺れる
新しい日の夢に匂う
あなたのことを考えて摘んだ花
あたしの想いで咲いた花
苦しいんです
夜も眠れないほど
彼が私に侵食してくる
切ないんです
息も出来ないほどに
彼が私を追い詰めてくる
これは恋というものですか
消せないんです
振り払っても振り払っても
彼の気配が
もどかしいんです
熱に浮かされて彷徨い歩く
夢にも彼が
これは恋というものですか
いいえ違うのです
けして恋ではありません
けして風邪でもありません
哀しいんです
百花繚乱花の季節に
彼は私を閉じ込めていく
これは花粉症というのです
(2009-02-20)
初めてのデートは
あなたから誘ってね
ぎこちなくていいから
私のこと考えて
完全は求めないわ
でもあなたから誘って
万全じゃなくていいから
プランニングしてね
草食的消極さで
あなたを言い表せても
最初くらいイニシアチブは取ってね
私は草原の花にはならない
男の子が思うより
女の子は純情でしたたか
花冠のその下で
鋭い爪を潜めてるの
初めてのデートは
あなたから誘ってね
強くなくていいから
少しは私を騙してね
草食的消極さで
あなたが怖気づくなら
私はもっと魅力的な獲物を
探すために狩りに出るわ
だから
初めてのデートくらい
あなたから誘って
花にするか
豹にするか
あなたに決めさせてあげる
(2009-02-19)
美味しいものを食べたり
綺麗なものを見たり
君にも教えたいよ
いつか一緒に行こうよって
誘うから
その病を治すのは
あなたにしか出来ません
自分をとても愛しすぎ
悲劇のヒロインを演じてしまう
世界の全てを敵にして
自分を憐れみ目を瞑る
誰より自分が不幸だと
悲劇のシナリオを作ってしまう
世界にアピール振りまいて
私を愛せと訴える
自分のことしか見えなくて
慰めも同情も要らないと言い
頑ななまでに突っぱねて
そのくせ不幸を見せ付ける
ちっとも不幸じゃないくせに
見方ひとつで変わるというのに
悲しい自分に酔いしれて
優しい不幸に身を委ねてる
その病を治すのは
あなた自身にしか出来ません
褒められるのは嬉しいけど
褒められすぎると否定したくなるの
いい人だねって言われたり
頑張ってるよねって言われたり
綺麗だよ、可愛いよって言われたり
褒められると嬉しいけれど
違うんだよって言いたくなるの
いい人に見せてるだけだよ
頑張ってなんかないよ
もっと綺麗で可愛い人ばかりだよ
褒められると困っちゃうのに
褒められないのも悲しくなるの
いい人だねって言われたいの
頑張ってるねって言われたいの
綺麗だね、可愛いねって言われたいの
言われたいのに
言われたら困ってしまう
どうしたらいいのかな
旅行カバンひとつ
少しの着替えと文庫本を入れて
リズミカルに走ってく
電車に乗って旅に出る
通り過ぎる町並みに
いつか夢で見た世界を探しながら
行き先のない切符一枚
少しの希望と文庫本を持って
眠るように走ってく
電車に乗って旅に出る
過ぎ去っていく海原に
いつか夢で聞いた言葉を捜しながら
どこまでも
どこまでも
一人きり
旅行カバンひとつ持って
子どもみたいに泣く
大声上げながら泣く
顔真っ赤にして泣く
そんなふうにして泣くことは
もうきっと出来なくても
泣きたいときに泣く
そんな場所があればいい
ただ静かに泣く
はらはらと泣く
声を殺して泣く
そんなふうにして泣くことは
多分きっと苦しくても
泣きたいときに泣く
そんな場所があるといい
とろけるように甘い甘い
恋の味を召し上がれ
こっくりとっくり濃厚な
甘い想いを召し上がれ
スイートチョコの甘さに包む
ときめくような胸の鼓動も
ビターなチョコの陰に隠した
少しほろ苦い涙の味も
どうぞたくさん召し上がれ
胸焼けしそうに甘い甘い
恋の味を召し上がれ
毒にも罠にも気付かないほど
甘くするから召し上がれ
それを食べなくても
あたしは死なないけど
食べたほうがカラダにはいい
一人きりで食べても
あたしは死なないけど
誰かと一緒のほうがココロにはいい
そんなものを食べても
あたしは生きてけるけど
きちんとした食事が本当はいい
好き嫌いを減らして
たとえばあなたと一緒に
作りたての料理を食べたい
(2009-02-16)
好きだと言われたり
可愛いと抱きしめられたり
そんなこともたまにはいい
恋にはまだ遠くても
眠れないよ
布団の中
目を閉じて
遠い夜汽車の音を聞いてる
何を載せて
どこへ行くの
誰を乗せて
どこに行くの
眠れないよ
ぬくもりの中
くるまって
遠い夜空の音を聞いてる
星は光り
どこへ行くの
風は笑い
どこに行くの
眠れないよ
暗がりの中
遠い夜明けの音を待ってる
夢を誘い
どこへ行くの
瞳閉じて
夢の中へ
(2009-02-10)
そうして気付いたら一人
夢の中にいる
目覚めるには遠すぎる
夜明けの扉
君に告げた言葉が
空回りして空に羽ばたく
零れ落ちる甘い雨は
隠しそこねていた涙
戻れない場所があれば
今すぐにでも駆けていくのに
分かっていた
どこを見ても
夢の中にさえ君はいない
それならばいっそ
存在自体忘れてしまえたら
降り注いでくる虹の欠片
集めて花束にした星屑
優しすぎる場所の中で
今すぐにでも笑えたのに
分かっていた
どこを見ても
夢の中にまで君の面影
そうして気付いたら一人
夢の外にいる
行き着くには遠すぎた
永遠の手前で
暑いんだか
寒いんだか
空腹なんだか
満腹なんだか
誰かといたいんだか
一人でいたいんだか
泣きたいんだか
笑いたいんだか
痛いんだか
平気なんだか
自分でも分からないのに
あなたに答えを求めるなんて
甘えなんだか
馬鹿なんだか
初手を間違うと
難しくなるんだ
勝つことがじゃない
綺麗に終わることが
だからボクは今
こんなに疲れて
こんなに虚しい
いい人であろうとか
美しくあろうとか
そういうことなんだ
綺麗に終わることは
だからボクは今
失敗を悔やんで
こんなに空しい
どうせ不毛な試合
どうだっていいけど
初手を間違って
消耗してしまった
勝つことにじゃない
綺麗に終われなかったから
年上の彼女はいつも
微笑んだままで
眠っている
目覚めた彼女に問えば
シアワセなのよと
そう言って笑う
いくつもの日々を
たくさん泣いて
たくさん怒ったから
もうあとは
笑うだけなの
これからの日々を
たくさんの人と
たくさんの愛で
過ごせるから
嬉しいのよ
年上の彼女はいつも
微笑んだままで
そう答える
だから最後は
あなたも笑って
みんなで笑って
シアワセなのよ
そう言って笑う
お別れするのは
哀しいだなんて
苦しいだなんて
陳腐な言葉で
見送らないでね
年上の彼女はそして
微笑んだままで
眠っていた
(2009-02-05)
あなたのこと
ずっと見てたから
あの子に恋したこと
すぐに分かった
分かってる
ずっと隣にいたから
あなたが悩んでること
すぐに感じた
違う恋をしてしまった二人
きっと離れていく
あなたの幸せを願っているけど
今はまだこの手を離せない
どうしよう
板ばさみのまま
あなたに恋したこと
知りたくなかった
あの子のこと
嫌いだったら良かった
あなたが苦しくても
邪魔できたのに
別の恋を始めてしまった二人
こころ離れていく
指も腕も胸も全部繋げても
目線は噛み合わないのね
さよならを言うのならば
せめて私から言わせて
あなたの恋に気付いたことを
あなたに知らせたくないから
同じ恋をしていたはずの二人
今は離れていく
もう戻れないことは知っているから
今夜だけはそばにいて
(2009-02-04)
強要しないで
私の気持ちは
あなたのものじゃない
共用しないで
私の気持ちは
あなたのものじゃない
あなたが私を好きでも
私があなたを好きでも
強制しないで
私の気持ちは
あなたのものじゃない
矯正しないで
私の気持ちは
あなたのものじゃない
あなたのものじゃないのよ
嫌いって言うよりも
苦手って言ってよ
拒絶の柔らかさが違う気がするの
食べるものひとつ取っても
人の食べるものじゃないなんて言わないで
自分が嫌いだからって他人を見下さないで
歌う歌ひとつ取っても
気が知れないだなんて笑い飛ばさないで
自分に合わないからって他人を貶さないで
嫌いって言うよりも
それもありだって言ってよ
離れててもいいから切り捨てないで
折れた爪の先に引っかかった言葉
声にならないまま死んでいく
いっそ零れ落ちてしまえばいいものを
しぶとくしがみついたままで
振り落とそうとしても
剥がそうとしても
折れた爪のささくれに引っかかって
いつまでもそこにあるから
邪魔で目障りでしょうがない
折れた爪の先に引っかかった言葉
声にならないまま残ってる
いっそ切り落としてしまえばいいのだと
爪きりで切ってしまった
それ牽制のつもりなの?
分かりやすくて笑っちゃうわ
人のいい振りをして
有難がってる顔をして
あなた
どこまでも女なのね
それ交戦の構えなの?
いかにも過ぎて呆れちゃうわ
謙遜してる振りをして
私のことを貶める
あなた
どこまでも女なのね
戦う理由はないけれど
そんなつもりなら
相手になるわ
星を見に行こうと君が言った
空を雲が覆う真夜中に
流れる星を捕まえようと君が言った
闇が世界を覆う終末に
そんなものはどこにもないと
もはや見える世界じゃないと
君も僕も知っていたけど
間違いを正しに行こうと君が言った
雨で町が朽ちる真夜中に
哀しみを晴らそうと君が言った
灰が雪に見える終末に
そんなことは容易じゃないと
もはや戻る世界じゃないと
君も僕も知っているけど
それでも世界の全てをまだ知らない
明ける夜のある真夜中も
だから見に行こうと君は言った
終末の終わる明日のことを