僕の言葉が君に作用する
君の力が僕に作用する
僕らの歩みが誰かに作用する
誰かの微笑みが僕らに作用する
君の手のひらと僕の手のひら
打ち鳴らしたこちらとあちらで
広がっていくような拍手の嵐
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会ったことのない
あなたが思い描く
アタシの像は
アタシじゃないよ
アタシはもっと
あけすけで
アタシはきっと
慌てんぼうだよ
会ったことのない
あなたが思う
アタシの顔は
アタシじゃないよ
アタシはもっと
ありふれた顔で
アタシはきっと
落胆させるよ
ひとしずく垂らした
とわの時間のその欠片
はにかんでキスをした
いとしさのささやきが
まぶたの上に降りてくる
もうすぐここに夢が降る
ヒミツの鍵を携えて
とうめいの天使が
リモーネ色の月を従え
だきしめた愛を配るだろう
けいけんな朝が来るまでは
どこへも行かずに目を閉じて
この世界が廻るのを感じながら
よるのとばりに包まれよう
いそがないでゆっくりと
ハッシャバイ
こもりうたを歌ってあげる
こどくさえも歌の向こうに
へいきな振りも要らないくらい
おやすみなさい
いい夢を
できれば二人で同じ夢を
(2008/11/26)
悩んでみたって
結局は同じこと
いつの間にか始まってる
恋のように
それはいつだって突然で
回避できないんだから
悩んでみたって
結局は変わらない
悪いことではないけれど
時はいつも
前に進んでいくばかりだから
悩む暇がもったいない
それならいっそ
歩きながら考えよう
それならもっと
笑いながら考えよう
悩みの行き着く先なんて
結局は同じ場所
料理が得意じゃない君が
一生懸命作ったごはん
美味しかったよ
ホントだよ
君が作るから美味しいんだよ
でも
今度は一緒につくろうね
追いかけてくるのは時間の足音
気付けばそこに明日が見える
道を作らなきゃその先は
転がり落ちる崖の下
落ちていってもいいけれど
何も形に残せない
締め切りなんかを決めないと
気付けば明日に流される
君が大人になったとき
あの星はもうないかもしれない
三つ並んだオリオンや
文字の形のカシオペア
君が大人になったころ
あの星は北極星じゃないかもしれない
ひしゃくを伸ばしたその先の
あそこに見えるあの星さ
そのころ地球はどうなって
僕らはどうしているのかな
たとえば地軸が傾いて
全てが海に沈むかも
たとえば星が落ちてきて
全てが燃えて尽きるかも
君が大人になるまえに
この星はなくなってしまうかもしれない
明日何が起こるのか
ホントのところは誰も知らない
君が大人になるころに
綺麗な世界であるようだといいね
だから僕らは少しでも
綺麗に世界を使うんだ
凍えた指先で紡ぐ言葉が
常夏の島を描く
青く光る空と
押し寄せる透明な海原
まばゆいばかりの白い浜辺に
降り注ぐ熱い太陽
吐く息が白い小部屋で
常春の山を描く
白くけぶる桜と
あふれ出す百花の乱舞
圧倒的なまでの萌えた新芽と
降りしきる春告げの歌
冷たさに震える身のままで
彩りの秋を描く
燃えるような赤い木々と
金色に照り映える黄の葉
温もりと冷たさの同居した風に
舞い落ちる渡り鳥の羽毛
忍び寄る寒さの夜更けに
厳寒の冬を描く
吹き付ける粉雪と
吹きすさぶ北風
息も出来なくなるような寒さと
降り積もる静寂の時間
泣きたいのならば泣けばいいよ
こらえた涙は
淀んで濁って
腐っていくよ
心の奥を
蝕んでくよ
泣きたいのならば泣けばいいよ
流した涙は
ほどいて溶かして
乾いていくよ
心の奥を
洗っていくよ
いつでも泣いてよくはなくても
どこでも泣いてよくはなくても
泣きたいのならば泣けばいいよ
必要ならば胸を貸すから
(2008/11/21)
不意に分からなくなる
どこに向かっているのか
行き先は知っているのに
不意に分からなくなる
そんなときはないかい
学校への道
会社への道
自宅への道
明日への道
分かっているのに
道を外れたくなる
不意に目にした路地に
反対側のホームに
行ってしまいたくなる
そんなことはないかい
ほらまさに今
そんなときじゃないかい
近道も遠回りも
寄り道も迷った道も
どれもがすべて君の道
不意に分からなくなるときには
思いつくまま歩けばいいさ
(2008/11/19)
頑張りも努力も分かるけど
無かったことにはしないけど
それでもダメなんだ
お願いだ
僕を困らせないでくれないか
僕はただ
笑って君を迎えたいのに
僕はただ
扉を設けただけなのに
頑張りも努力も分かるけど
無かったことにはしないけど
それだけじゃダメなんだ
熊のぬいぐるみのように
あなたを抱きしめてあげる
眠れない夜には一緒に
ぬくもり分け合いながら
同じ夢を見ようよ
手放せないタオルケットみたいに
あなたを抱きしめてあげる
あなたの優しさに包まれながら
くすぐったい気分で
同じ夜を過ごそうよ
母親と子どもみたいに
あなたを抱きしめてあげる
泣きたくなる夜には二人で
鼓動を分かち合いながら
同じ愛を感じよう
破られた地図の片隅
燃え残った手紙の言葉
色褪せた写真の景色
雨上がりの水溜りに残った人影
風の中に紛れたわずかなメロディ
どこにでもある
どこにもない世界
星が流れる夜空を見上げて
新しい恋を願おう
凍える体を自分で抱いて
新しい恋を祈ろう
明日会う人が恋しいとか
何気ない目線が愛しいとか
そういう恋がいつかあるように
誰かの腕が恋しくなる夜には
新しい恋を願おう
優しい指が欲しくなる夜には
新しい恋を祈ろう
凍える夜に流れる星に
何も考えずに
たとえばゲームをしてみる
心を空っぽにして
ただひたすらに落ちてくるブロックや
つみあがるキューブや
そんなものを相手にしてみる
対戦相手なんて要らない
一人きり
そういうのが欲しいときもある
君と僕との間に
交わされているのは
同じ言語だと思っていたのに
違うんだね
きっと次元が
きっと時空が
僕の言葉は
歪められて
跳ね返されて
伝わらない
噛み砕いても
骨を折っても
面白いほどに
伝わらない
いっそこのまま
なかったように
飲み込もうか
バベルの塔が
壊れたように
僕の心も
砕けていくよ
君と僕との間に
交わされているのは
同じ言語だと思っていたのに
違うんだね
別物なんだね
(2008/11/17)
私を置いていかないで
通り過ぎた過去の中に
私を置いていかないで
風に消えた幻の中に
連れて行けとは言わないから
どうか
私を置いては行かないで
写真も手紙も捨ててもいいわ
匂いも温度も忘れていいわ
私を置いていかないで
忘れ果てた過去の中に
私を置いていかないで
露と消えた夢の中に
共に行こうとはしなくていいから
どうか
私を置いては行かないで
小指の先の爪の分だけ
瞬きに揺れた瞳の分だけ
記憶を置いていかないで
まるで無かった過去のように
すべては置いていかないで
砕けて散った心の果てに
(2008/11/13)
たまには無心になって
釣り糸でもたらしてみようか
いいものが釣れたらいいけど
釣れなくても構わないくらいの気持ちで
ぼんやりと晴れた空眺めて
のんびりと揺れる波見つめて
何も考えないまま
何も気にしないまま
ただ太陽が動くのを
ただ潮風が当たるのを
感じながらすごしてみようか
指先に触れる感触が
新しい予感を連れてきて
そしたらそこだけに集中しよう
糸の先に何が待っているかなんて
もう一切考えないままでさ
釣っているのか釣られてるのか
意図の先には何があるのか
そんなことはあとで考えて
今はひたすら釣ってみようよ
たまには無心になって
釣り糸でもたらしてみようか
その先に恋が待つのか
それとも何も釣れずに終わるか
やってみなくちゃ分からないし
なにもないなんてありはしないから
どっちに転んでも悪くない
君と二人ここにいる奇跡
すり抜けてしまわぬよう
夢に消えてしまわないよう
ぬくもりごと抱きしめた
少し速く高鳴る鼓動も
仔兎のように震える肩も
見上げて微笑む潤んだ瞳も
全部全部抱きしめた
遠くにかすむ虹を見ながら
渡ろうと手を引いたよね
それで僕は悟ってしまった
君と二人ここにいる不思議に
さようならの代わりに
掻き消えてしまわぬよう
風に吹かれてしまわないよう
幻ごと抱きしめた
ストレスがたまっていてね、と言うと良い所があると連れて行かれた。
古臭い和室にちゃぶ台が置かれている。
心置きなくひっくり返したまえ。
力いっぱいにちゃぶ台を跳ね飛ばした。
味噌汁やご飯が飛んでいくのを見て酷く後悔した。
小市民めと笑われたが、大声で歌でも歌ったほうがマシだ。
恋人に電話をかけている。
ピンク色の公衆電話は次々に硬貨を吸い込んでいく。
次に会う約束をしている途中で切れてしまった。
返却口に出てきたのはどこか見知らぬ国のコインだった。
電話には使えないようだが、今度恋人に渡してやろう。
デパートでアイボリーのサラダボウルを見つけた。
サラダを入れると美味しく味付けしてくれるボウルだと言う。
評判を調べてみると、サラダの定義に厳しいボウルらしい。
結局のところ、どの料理もサラダ認定をしてくれないので、ただのアイボリーのサラダボウルだ。
私のサラダは私が決めるしかないらしい。
友人が耳打ちをしてきた。
月の雫でこっそり造った酒があるという。
酒盛りといこうじゃないか、と酒宴の用意をした。
それは私のものだ。
曇り空だったのに、隙間から月が覗いて怒ると取り上げてしまった。
今頃雲の裏側で酔いどれているに違いない。
次は昼に飲もう、と友人が耳打ちをした。
探し物が見当たらない。
無くした場所は分かっているのに。
通りすがりの僧侶が言った。
とっくに墓の下だよ。
それ以来、代わりの容れ物が通るのをずっと待っている。
凍えそうな夜の街で靴下を買った。
見栄を張って、空の色をした靴下を買ったが、冬空の青色だったのでとても冷たい。
凍えながら帰った。
太陽の色の靴下なら良かっただろうに。
スケジュール帖に覚えのない丸がついている。
いったいなんだったのか思い出せない。
思い出せないまま当日が来た。
山のようなオレンジが降ってきた。
オレンジ注意報だったらしい。
ジュースにしてもジャムにしてもまだ余っている。
腐る前にどうにかしないと。
さっき気づいたが、数日後の日付にも丸がついていた。
友達に遊ばないかと呼び出された。
迷路のような本屋に連れて行かれた。、
行く先々でオススメの本を紹介し合わないと先へ進めないらしい。
経済の棚と、官能小説の棚で行き詰った。
買いたい本があるのにこのままではレジまで辿り着けない。
友人が三日月になっていた。
しゃくれた顎とニヒルな口元が魅力的じゃないかと褒めてみる。
そうだろう、と言いながら酒を飲んだが、少々飲みにくそうだった。
程よく酔ったので、友人の上で眠ることにした。
三日月はいい揺り篭にもなる。
銀色の雨が森に降っている。
大きな木の下で見知らぬ女と二人雨宿りをしている。
ずっとあなたを待っていたのです、と女が言った。
思わず抱きしめようとしたが、女が何かを言いかけた。
この香りは恋人の香水だ。
大きな木を回り込んだところに恋人が雨宿りをしていた。
こちらを見てにっこり笑ったが目が笑っていない。
女を振り返ると既にそ知らぬ顔をしていた。
人生は
悪いことばかりじゃない
良いこと続きでもなくても
人生は
悪いばっかりじゃない
ひとつ見方さえ変えれば
あの子がどうして怒ったのか
良く考えてごらん
自分は正しいんだもん
間違ったこと言ってないもん
本当にそう思ってるの
それはあの子を泣かせてまで
主張したいことだったの
本当にそれは正しいの
幾つもの主張があって
幾つもの考えがあるよ
君が思っていることが
絶対の正義だなんて
言うことなんて出来ないのに
上から目線でいるならなおさら
大人のつもりでいるならなおさら
声高に主張を叫んではいけない
どっちが悪いとか
どっちが正しいとか
それを決めるのはあの子でもないし
君でもないよ
折り合う場所を決めることだけ
そこを目指してやってごらん
だからまずは
互いに折れて
ごめんなさいと言ってごらんよ
喫茶店のようなもの
気に入ったものがあれば
一息ついていけばいい
気になったものがあれば
メニューを眺めて見るのもいい
雨が止むまでひとやすみ
疲れが減るまでひとやすみ
喫茶店のようなもの
思いがけず美味しかったり
思っていたのと違っていたり
日をおかずに通ってみたり
一度来たきり忘れてみたり
眠れない夜のひとときに
憂鬱な朝の合いの間に
喫茶店のようなもの
そういう場所になればいい
(2008/11/10)
ここで待っていればいつか
迎えに来てくれる
だからずっと待っている
だけどそう?
ほんとうに?
ここで待っていればいつか
迎えに来てくれる?
だからずっと待ってるの?
それでいい?
ほんとうに?
ここで待っていてもいつかは
いつになるか分からない
だからいっそ歩き出す
それでいい?
ほんとうに?
ここで待つべきか歩くべきか
誰にもそう分からない
だからきっと自分次第
(2008/11/07)
この道をどこまで行けば
私に出会えるのだろう
遠くに浮かんだ星の描く
地図の中にも私はいない
どこかにあるはずの答えは
潮騒に似た風の中
届かないまま霞んで消える
手のひらに落ちる月の調べは
時々優しく胸を撫で
しかし行く道を照らすには暗い
ただ暁だけがそこにある
私に出会う旅
今もまだ歩き続ける
綺麗な絵本のように
一頁ずつ魅せたいの
夢なら十夜を繰り返し
百花繚乱のお話で
千もの夜を編みたいの
千変万化の夢の色
数えた十夜が二十五篇
まだまだ足りない夢の森
綺麗な絵本のように
ゆっくりと綴りたい
楽しく明るく恐ろしく
あなたの夢に忍び込む
色とりどりのお話で
あなたの夢を塗っていく
食べられるのを嫌がったクロワッサンが空に逃げて三日月になったが
満月に怒られて食べられてしまった。
ちょっと焦げてたけどなかなか美味かったよ、と昨日の月が言った。
奮発して綺麗なピンクのブラウスを買った。
朝焼けの色だねと太陽が言えば、夕焼けの色だろうと月が言う。
どっちの意見も通ったので、朝晩二度出勤する羽目になった。
勤務時間は短くなったが面倒くさい。
次に買うときは、オーロラ色のシャツにしよう。
ぎゅうぎゅうに押しつぶされて羊の群れの中にいた。
編み棒を取り出して片っ端からセーターや手袋を編んでいった。
裸になった羊は去っていくが、5935匹を越えたところで眠ってしまったので抜け出せなかった。
とりあえずほかほかしている。
グレーのカッターシャツにアイロンをかけている。
二代目だというアイロンマスターが来て、それでは皺が取れないという。
私ごとシャツを皺ひとつないようにしてくれた。
折り目正しい人間になった。
オレンジのリゾットを作った。
そんな邪道なものは食えぬと老人が怒る。
お客様、これはオレンジのリゾットではありません。
太陽を絞って作ったお粥です。
それならばと老人はぺろりと平らげた。
ペテン師めと太陽が呆れるので言ってやった。
食わせてしまえばこっちのものだ。
食えないやつだと笑われた。
水晶売りの老人が声をかけてきた。
青月光入りの水晶を買わないかと言う。
思ったよりも高かったが、買うことにした。
水晶を月に透かすと落ちた光の中に蒼い薔薇が咲いている。
芳しい香りの中で星の歌を聴きながら眠った。
目の前にでかい山がそびえている。
登るのも厭で、どうしたものかと考えていると声をかけられた。
こうすればいいんだよと、太陽がジェンガか将棋くずしのように木々や土を抜き取った。
なるほど、と思ったが、かえって時間がかかる。
太陽は沈んでしまって手伝ってくれない。
しまいには、上から落ち込んできたブロックに押しつぶされてしまった。
こんなことなら、北風でも捕まえて飛ばしてもらうのだった。
ピンク色の森にいる。
良かったら一緒に住まないかと森人たちに誘われた。
可愛らしいが目がちかちかするので丁重に断る。
彼らの姿をメモ用紙にスケッチして去ることにした。
森の絵は部屋の片隅で、時折ピンク色に揺れている。
今のところ、全身をピンクで染める勇気はない。
気づいたらロンドンにいた。
見つけたチッピーでフィッシュアンドチップスを食べていると、月がやってきた。
同じものを、と注文して腰掛けるので、仕事はどうしたと訊く。
こんな霧の夜じゃあ、仕事なんてやってられないよ。
お前さんもだろ、ジャック、と月にナイフを指差された。
計画を変更して月の野郎をやってやろうかと思ったがやめておいた。
切り裂かなくても、今宵の月は細すぎた。
古くなったノートを拾った。
中に書かれているのは見覚えのある自分の文字だ。
青臭さに赤面しつつびっしり書かれた黒い文字を追った。
文字を捕まえると、昔の自分が浮かび上がってきて、物語を再生しだした。
恥ずかしすぎたので、急いでページをめくった。
何も書かれていない白いページの上で、今の自分が待ち構えている。
さて、何を書いたものか。
指先から冷えていく
あいまいな私の境界線
夜気と同じ温度になれば
砕けて消える雪になる
涙の筋も凍りつく
不確かな私の輪郭線
月に照らされ闇に臥したら
明けても目覚めぬ夢になる
震えさえ消え落ちた
うやむやな私の境目を
熱で溶かして解いてくれたら
夜と別った私になる
緩やかに消えていく
体温のような
記憶のような
緩やかに止まっていく
鼓動のような
時間のような
すり抜けていくものを
抱きしめて離したくない
このままずっと
ともにいられたら
人種性別年齢
そんなものは
関係のない
宗教信条言語
そんなことが
瑣末になる
世界に必要なものは
愛
ただそれだけなのだろう
(2008/11/05)