薄暗闇の黄昏時の
町の片隅で扉が開く
此度のお客はどなたでしょう
ないものはございませんよと
店主が昏く笑んでいる
お菓子が欲しいの
痩せるお菓子が
お客の少女のその声で
テーブルの上並んだ瓶が
色とりどりのお菓子を見せる
切なく悶えて身も細る
甘く苦しいキャンディーはいかが
踊り続けたカーレンのように
疲れてしまうチョコレートなら
食べた量だけ痩せていく
小粒で軽いラムネはどうか
星屑まぶして時間を退ける
きらりと光る水飴もどうぞ
但しどれでもご注意を
甘い言葉には裏がある
甘いお菓子には毒がある
それでも良ければさあどうぞ
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重ね合わせた肌の隙間
残されたままの孤独が震える
絡め合った指先の合間
掴み損ねた明日が逃げる
二人
こんなに近いのに遠い
奪い合った熱の余韻
吐息とともに冷めて消える
溶かし合った時間の狭間
隠されていた不安が揺れる
二人
どれだけ近くても遠い
僕の言葉は君に届いているかい
君の声は僕に届けられているかい
言葉は思ったように気持ちを伝えなくて
時々すれ違ってしまうけれど
黙ったままでは伝わらないし
抱きしめたってきっと伝えきれないから
怖がってないで言葉にするんだ
時々すり抜けていってしまうけれど
話をしよう
君と二人
言葉を紡ごう
君と一緒に
僕の言葉は君に届いているかい
君の声を僕は受け止めているかい
君の特別になりたい
たとえばこんな寒い夜に
隣にいたいと思うような
たとえばこんな青い空を
一緒に見たいと思うような
君の特別になりたい
たとえば辛くて哀しいときに
泣いてもいいと思えるような
たとえば怖くて寂しいときに
抱きしめて欲しいと思えるような
君の特別になりたい
些細なことに気づいたときに
教えてあげたいと思うような
なんでもないこと話すときに
聞いて欲しいと思うような
君の特別になりたい
恋人という枠じゃなくていい
友達の中の一人でもいい
ただ
君の特別になりたい
(2008/09/30)
掌に乗るような
小さな小さな恋だった
吹けば飛ぶような
軽い軽い恋だった
追いかければ逃げるような
可愛い小憎らしい恋だった
涙を啄ばんでくれる
優しい優しい恋だった
小鳥のような恋は
ある朝
羽ばたいていってしまった
胸の中の籠はただ
風にきしんで揺れている
(2008/09/25)
時計の針を戻すすべは知らないが
なかったことに出来る魔法は知らないが
君の目を過去に向けないことは出来る
詐欺や詭弁といわないでくれないか
これもそう一つの愛さ
こういう日もあるさ
たどり着けなかったゴール
開けられなかった扉
そういう日もあるさ
これだけ走っていれば
終わることは始まること
終わったもののかわりに
新しく何かが始まること
枯れてしまった花は
種を落として芽を出して
死んでしまった鳥は
土に還って花になる
行ってしまった夏は
風を冷やして秋になり
逝ってしまった人は
誰かの胸で息づいて
通り過ぎた今日は
時を止めぬままに明日になり
戻らない恋も
いつかはきっと過去になる
終わることは始まること
終わったもののかわりに
新しく何かが始まること
嵐がやってきて
僕ら濡れ鼠
檳榔の葉の下で
抱き合いながら雨宿り
高い波の向こう
青空が光るけど
遠すぎて届かない
僕らまだ雨の中
小さな島の上で
僕ら濡れ鼠
飛ばされたりしないよう
君をぎゅっと抱きしめた
君ががんばってることを
僕は知ってる
だから言わない
がんばれとは
ただ応援しているよ
君が君の夢を
叶えることを
ただ願っているよ
君が君の明日を
切り開くことを
君が頑張ってることを
僕は知ってる
だから時々
抱きしめるんだ
私の言葉が
残るのならば
あなたに好きだと
伝えよう
言葉としての
カタチをなくして
風に吹かれて
消えたとしても
どれほど細かい
霧になっても
あなたのことを
包むよう
私の心が
残るのならば
あなたに好きだと
伝えよう
たとえどんなに
遠くにいても
雲から差し込む
光のように
どれほど暗い
闇の中でも
あなたのことを
照らすよう
私の姿が
どこに消えても
あなたに好きだと
伝えよう
(2008/09/24)
歌うたいの歌詞が
突き刺さる夜に
泣き濡れていたのは
公園のブランコの鎖
林檎売りの声が
滴り落ちる夜に
途方に暮れていたのは
電柱にぶら下がる街燈
売れぬ絵描きの筆が
かすれ気味な夜に
画布を塗り潰したのは
浮かれ烏の尾羽
迷い人の影が
倒れ臥した夜に
道を温めようとしたのは
半分に欠けていく月
(2008/09/22)
あたしは自分が好きだし
自分を大事に思ってる
前向き姿勢を目指してて
楽観思考を好んでる
争いごとは嫌いでも
自分の意思は曲げたくない
オトナな意見を口にして
コドモみたいにへそ曲げる
客観的に見たならば
可も不可もないかもだけど
それは確かに欠点や
短所もあったりするけれど
長所や美点も知っている
そんな自分が好きなんだ
僕はいつも
記念日を忘れてしまう
二人が初めて会った日も
初めて一緒に過ごした夜も
自分が生まれたその日さえ
一つだけ
覚えてるのは
大好きな君の誕生日
明日について考える
明日も今日と同じくらい
平穏無事であるだろうか
ささやかな幸せがあるだろうか
思いがけない苦難が待ち受けていたり
予想も出来ない驚きに見舞われたり
苦しんだり悲しんだりしないか
明日について考える
考えても答えは出ないけど
明日について考える
誰かが言う
お前の言葉なぞ
百年後には跡形もないだろう
誰かが言う
百年どころか
三日で忘れ去られることだろう
誰かが言う
お前の言葉なぞ
百万人の中の一つだ
誰かが言う
たとえ目にしても
通り過ぎていくだけの言葉だ
私は言う
だからなんだ
そんなことは知っている
私は言う
百年なんて知らない
ほんの一瞬でも残ればいい
誰かが言う
あなたの言葉が
ほんの少しでも救いになったと
誰かが言う
あなたの言葉で
ほんの少しだけ楽しくなったと
それでいいじゃないか
それがいいじゃないか
百万人のたった一人に
百万年のほんのひとときに
私の言葉が残ればいい
もう若くはないから
遠くまで走ることはできない
少し小高い丘の上から
せいぜい明日を見るだけで
遠い夢を見ながらは
もう走ることは出来ない
もう十代じゃないから
がむしゃらに走ることはできない
足場の悪い道のりならば
よろめき躓き這うだけで
ひたすらゴールを夢見ては
もう走ることは出来ない
それでもまだ
流れ落ちる汗を感じ
動いてる自分を知る
もう若くはないけど
まだ走ろうとすることは出来る
明日より向こうの未来の予測を
変えていこうと足を出す
今まで走った道のりを
振り返りながら足を出す
習うことはすべて
意味がないのかもしれない
学ぶことはすべて
役に立たないのかもしれない
君がもしそう思うのなら
それもひとつの真実かもしれない
けれども本当に
そうだろうか
君の歩む道のりの中で
確かに使わない公式があるだろう
君が選ぶ未来の中で
確かに縁のない偉人だっているだろう
けれども本当に
そうだろうか
君が暮らす日常の中で
たとえば回転は必要じゃないか
君が過ごす関わりの中で
たとえば言葉は必要じゃないか
習うことはすべて
何かの意味があるものだ
学ぶことはすべて
何らかの役に立つものだ
知識でも
会話でも
礼儀でも
学び舎はいろんなことを教えるだろう
常識や
理不尽や
人生も
この世界もまたいろんなことを教えるだろう
吸収しようじゃないか
土が水を飲み込むように
糧にしようじゃないか
水が木々を育むように
習うことのすべてに
何かの意味を見出すことだ
学ぶことのすべてを
役に立つのだと考えることだ
それが人生を楽しむコツだ
そう言ったなら
君はそれも学んでくれるだろうか
(2008/09/19)
超難解な漢字が書けても
超難問な数式が解けても
解らないことばかりだった
どうしてこんなに君が好きなの
大勢の中でも君を見つけて
どんな人でも君に見えてた
どこにいたって君ばかりだった
どうしてこんなに好きなんだろう
グラウンド走る君の背中や
誰かと笑う君の目尻や
そんなことまで追いかけてしまう
どうしてこんなに探しちゃうんだろう
誰も教えてなんかくれない
誰にも教えてなんてやらない
ただ君にだけ耳打ちしようか
どうしてもこんなに君が好きだよ
(2008/09/11)
あなたの喜ぶ顔が見たくて
あなたをハッとさせたくて
私は今日もつくります
余計なお世話と言われたり
見当違いと言われたり
することだってあるかもだけど
あなたの笑う顔が見たくて
あなたをビックリさせたくて
私はこっそりつくります
時々無意味に思えてみたり
無駄骨かもなと思ったり
ちょっぴり不安になったりしても
だけどやっぱり作りたいから
私は今日もつくります
死んでしまいそうな言葉たちよ
目を覚ませ
旅立ってしまった「ら」よ
戻って来い
置き去りにされた「です・ます」よ
しがみつけ
「いただきます」や「おやすみなさい」
「ごめんなさい」に「ありがとう」
胸の奥底で眠りに就くな
発せられる言葉の中で
打ち出されていく文字の中で
細々とでいい
生き抜いていけ
いちいち何にも言わなくたって
二人羽織の要領で
さんざんやってきたことは
四肢の全てが覚えてた
午後の二人の行き先は
ろくろく思案もせぬままに
しちしちいちいち決めもせず
葉っぱのように風のまま進む
くくくと笑える人生が
とうとう見えてきたようだ
流された舟のように
気が付いたらここにいた
舵も櫓もない舟の上で
時が経つのを感じてた
時に書を読み
時に詩を書き
そして眠っては夢を見て
空を見て
流れを見て
時の移ろいを知る
流された舟の上で
気が付いたらここにいた
流れ任せの時の上で
流されない生き方をしながら
時に恋をし
時に孤を愛し
そしてすれ違う舟を見て
人を見て
世界を見て
時の在り方を知る
時に勢いよく
時に澱むように
そして舟は流れていく
ここにあるのは
幾つもの物語の箱
幾つものもしもの話
幾つもの誰かの世界
だから
私のものだけど
私のことじゃなくて
私のことだけど
あなたのことにも似てる
何もかもを欲しがって
何一つ手に入らなかった
男が最後に見たものは
倒れた彼を受け止めた
ずっと一緒にいた影法師
何もかもを諦めて
何一つ手にしなかった
男が最後に見たものは
目と鼻の先にある
ずっと欲しかった存在感
ずっと一つを追いかけて
ようやくそれを手に入れた
男がそのあと見たものは
追うべき光がなくなって
あやめも分からぬほどの闇
たった一つを追いかけて
結局それを掴めずに
男があるとき見たものは
視野が狭くて見なかった
思った以上の広い世界
それでも一つを追いかけて
とうとうそれでも手に取れず
男が最後に見たものは
不意に口からこぼれ出た
一途な想いの美しさ
適度にものを欲しがった
そして適度に諦めた
男が思わず見たものは
ほんの一滴で傾きそうな
どっちつかずの欲しいもの
何か一つを欲しがって
それを求めて旅をした
男が探してみたものは
男のためには囀らぬ
どこかの誰かの青い鳥
どれか一つを選べずに
それでもずっと悩んでた
男が最後に得たものは
つまずき転んで倒れ臥し
たまたま手にしたただの石
だれか一人を選べずに
結局すべてを手に入れた
男が最後に見たものは
均等な愛に愛想を尽かし
皆で去ってくその背中
その一瞬を欲しがって
叶えてそれを手に入れた
男がその後見たものは
時計の針が過ぎ去って
途方に暮れた明日だった
(2008/09/04)貪婪で強欲な王が
戦争の末に全てを失った
倒れ臥した男を
受け止めたのは彼自身の影法師だったが
その地はもはや彼の領土ではなかった
いつでもその他大勢の一人だった男が
今しがた倒れた王の骸を見つけた
なるほどこれが存在感というものか
身ぐるみはいで歩いていると
王と間違われて射殺された
簒奪者は玉座を得た
誰もがひれ伏し
何もかもが足元に広がった
足の踏み場がなくて身動きがとれず
天を仰いで嘆こうとしたが
天もまた足元に落ちていた
お城の皇女に恋をした男は
彼女のために戦い傷ついたが
所詮身分違いの恋は届かず
彼女は隣国へと嫁いでいった
だが心は傷つかなかった
男は幼馴染の女の腕の中で死んだ
恋して焦がれて身を焼いた男が
鳥になって女のところへ飛んでいった
女は恋人と二人で鳥を見上げた
悲しみの嘆きは喉を引き裂いたが
その澄んだ啼き声は女の耳に死ぬまで残った
身の程をわきまえた男が
ある日二人の女に言い寄られた
少し気になっている女と
少し裕福な女
どっちとも決められないまま
時間だけが過ぎていく
幸福を探し続けて
星をいくつもめぐった男
薔薇にフラれ狐に笑われ
見かけた青い鳥は誰かの元で囀っていた
幸福は探すものではないのだと気づいた男は
どこかの星で蕾を抱いた花になった
誰もまだ彼の元を訪れていない
とんでもない大金を手に入れた
使っても使っても使い切れず
やがてだんだん虚しくなった
ある日酔いどれた男は道端で転んだ
手にしたただの黒い石を家宝にすると言い残して
あとは全部人にやってしまった
口も頭も腰もすべて軽い男が
たくさんの女を渡り歩いた
誰もが彼をそんな男だと認識していたが
認識してたが故に変わらぬ現実に気づき
月日が経つにつれて夢から覚めるように去っていった
急激に男は老いて道端に倒れた
もう誰も彼を見向きはしなかった
合わせ鏡に迷い込んだ男が
探し続けた恋人の面影を見つけた
手を伸ばして捕まえたはいいが
時計の針が呪力を解いてしまった
それで彼の腕は彼女の影の中で
今日も生きている
(2008/09/08)
私だってたまには
女の子みたいに
甘い甘い夢を見る
赤い糸の先や
包み込まれるぬくもり
絡めた指の形
甘く疼く心
私だってときには
小さな子のように
壊れない夢を見る
フリルやレースみたいに
華やかなものたち
砂糖菓子や花束
クリスタルやシャボン玉
現実はいつでも
冷たくて優しい
現実はときどき
夢よりも明るい
(2008/09/03)
運命って
どこで分かるのかな
いつ感じるのかな
本当は違ってても
あたしが信じればそれは
運命になるのかな
そもそも運命なんて
本当に存在するのかな
運命の人
運命の仕事
運命の日
本当にそれって運命なのかな
運命って
頭で分かるのかな
心で感じるのかな
明日あなたに逢えたら
それは運命なのかな
百円玉一枚
握り締めて駆けてった
通りの角の駄菓子屋で
練り飴
たこせん
フーセンガム
ラムネにチョコに
糸付き飴
頭と指を使って
計算しながら
できるだけたくさん
買おうとしてた小さな僕
当たり付きのガムを買って
オマケ付きのキャラメルを食べた
棒付きのアイス齧りながら
近くの公園のブランコを漕いだね
自転車に乗ってくる
アイスキャンディー売りや
大きな音を立てるポン菓子の機械
世界は素朴な甘さの冒険に満ちてた
百円玉一枚
握り締めて駆けてった
あのころの僕らの世界は
チープなのに
これ以上ないほど贅沢だったよ
動けなくてどうしようかと思った
前に進んだ途端に戻されて
見えていたはずの道が消えていて
途方に暮れたまま立ち尽くした
多分そんな日は
一度眠ってみるのもありなんだと
そう思いながら
君と離れ離れになっても
出会う場所を決めておこう
君と会えないときには
いないと呟いて電話するよ
くじけそうなときがあっても
きっと誰かが手を貸してくれる
負けそうな気持ちになっても
きっと誰かと支えていける
必要なものは最小限
いつだってどこにでも行けるように
それから夢と希望と君のこと
何があっても離さぬように