君のために言葉を贈ろうと
ずっと考えていたけれど
上手い言葉が見つからない
素敵な文句が見当たらない
君のために言葉を贈ろうと
今日も考えていたけれど
飾りすぎては嘘のようだし
簡単すぎては心に足りない
君のために言葉を贈ろうと
ずっと考えていたけれど
どんな言葉も物足らなくて
結局のところ口に出来ずに
だから黙って指を繋いだ
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探しても見つからないものが
呼べば出てくればいいのに
遠い昔に見た夢や
幼い恋の面影や
失くしてしまった本の頁や
落としてしまった指輪のかけら
探しても戻ってこないものが
呼べば出てくればいいのに
たとえばあなた
治りかけたかさぶた
力任せに剥ぐみたいに
滲み出した血の色で
指先を濡らすみたいに
無謀な恋をした
後に残るのは
消えない痕
(2008.06.27)
愛してると
言葉にしたら
きっとすべてが
嘘になる
愛してると
答えにしたら
きっとどこにも
行かれない
それだけの
話
(2008.06.25)
夜の声が聞こえる
僕を迎えにきた宇宙船だ
ベッドを抜け出して
窓辺へと駆け寄った
夜の声に応える
僕はここにいるんだよ
早く降りてきてよ
ずっと待っていたんだ
夜の音が聞こえる
近づいてくるのは船だ
流れ星のように
煌いて降りてくる
君を迎えにきたよ
窓にゴンドラが揺れる
全てを置いていくなら
君を連れて行くよ
夜の声が聞こえる
あれは大陸を渡る鳥さ
行こう彼らよりも高く
彼らよりも遠くへ
朝の歌が聞こえた
船は夢に溶けてく
ベッドの上の僕を
太陽が照らしてた
また日々に飽いたら
その時に迎えに来るよ
宇宙船はそれきり
夢の奥へと飛び去った
自転車に乗って
隣町まで行こうよ
キラキラ光る川に沿って
疲れたら土手に寝てさ
蒼い空でも見よう
まっすぐな飛行機雲追って
行く宛てはないけど
どこまでも行こうよ
背中を押す風に乗って
僕たちはいつでも
どこへも行けると信じた
キラキラな未来を知ってた
自転車に乗って
明日まで行こうよ
誰も追いつけないほどに
春爛漫の川べりも
淡い月夜のあぜ道も
他所の国へと繋がる海も
切手を貼らない手紙も
売られていった仔牛も
父親と語った木陰も
不思議な呪文の言葉も
どうどうと流れる大河も
人を抱いた母なる大地も
みんなみんなここにいる
音と一緒に胸の中に
初めてのデートは雨で
一つずつ差した傘の分
遠い距離を歩いた
雨音にかき消された会話は
ちぐはぐでぎこちなくて
けれどほっこりあったかかった
初めてのデートをいつも
雨が降る日に思い出す
一つ傘に入った今も
会話がなくて雨音だけでも
しっくりとなじんだりして
そしてやっぱりあったかいままで
どしゃ降りが流していくよ
気持ちも
言葉も
あなたの面影も
全て
大粒の雨にまぎれて
街を打つ音にまぎれて
全て
遠い遠い故郷を離れ
今朝私はお嫁に行きます
白いお肌のあの方か
赤い御髪のあの方か
それとも違う殿方か
熱い熱いお湯で磨かれ
今朝私はお嫁に行きます
あなたに良く似た息子やら
私に似てない子を育て
恋敵に良く似た娘さえ
育むはずの家を離され
今朝私はここから去ります
この身があなたと離れても
心はあなたのそばにいる
最後まできっと離れない
甘い甘い朝に呼ばれて
今朝私は味噌汁を作る
いりこと昆布で出汁を取ったら
油揚げタマネギそれからワカメ
赤味噌白味噌合わせ味噌
そしたらあなたを起こしに行こう
目覚めの朝餉を召し上がれ
(2008.06.23)
どこまで行っても暑い夜は
砂漠の上に寝転がる
降り注ぐほどの星空に
ぽつんと声をかけてみる
広い夜空と白い砂漠に
声は吸われて消えていく
おおい
おおい
聞こえるかい
どこからともなく返るエコーは
砂と風と砕ける星の
囁き声に紛れて届く
おおい
おおい
生きてるかい
どこまで行っても暑い夜には
砂と風と煌めく星の
夜の帳に包まり眠る
朝が来るまで
独りで眠る
(2008.06.19)
甘いお酒で宇宙へ飛んだ
月の色したカクテルで
良ければ君も一杯いかがと
流れる星に声をかけ
月の色したカクテルを
三日月グラスに流し込む
甘いお酒で宇宙へ飛んだ
三日月を丸く光らせた
紫陽花の下で雨宿り
目の前で雫が跳ねる
散って砕けた水晶を拾い
緑の紳士が声をかける
まだ暫くは降り続くだろう
お茶でも飲んでいきなさい
甘い梔子の香りの付いた
雨粒のお茶を淹れてあげよう
紫陽花の幹を上ってテラスへ
目の前の葉先を銀糸が落ちる
カエルと二人お茶を飲みながら
遠いお空に青を見た
垂れる銀糸が七色に揺れる
そろそろ止んできたようだね
紳士に見送られ水溜りの道へ
滴る雫の波紋を越えて
紫陽花の向こうへ歩き出す
世界はキラキラ光って踊る
軽やかに鳴いた蛙に見送られ
髪に甘い香りが残った
指先にヒミツを飼ってる
君の謎めいた微笑み
触れられたところから
電流が走る
刺激的で魅惑たっぷりの
君の張り巡らした罠
狡猾ささえ魅力な
衝撃に溺れる
君はただ笑って
僕に決断を迫る
痺れて捕まえられるか
嵌って囚われるか
もはや逃げる場所のない
僕の鮮やかな敗北
勝利の女神の前に
跪いた下僕
君はただ笑って
僕に接吻をねだった
忍び寄る恐怖は
幽かなる物音を立てて
息を潜めた背後に近づく
迎え撃て
迎え撃て
安穏と怯えていてはいけない
叩き潰せ
叩き潰せ
完膚なきまでに存在を消し去れ
忍び寄る恐怖は
幽かなる音さえも消した
対峙するものはそして眠る
いつもありがとう
隠れた言葉だから
返し方に悩んでしまうけど
いつもありがとう
あなたの言葉が宝です
乾いた土に染み込む水や
花を開かせる朝日のように
三時のお茶の甘い匂いや
月夜の弱いお酒のように
いつもありがとう
嬉しい言葉だから
大事に読ませてもらってます
いつもありがとう
あなたの存在が宝です
すべてが厭になって
誰も味方がいないとき
日々に疲れ果てて
孤独に慄いてしまったとき
思い出して
君だけは君を
見捨ててはいけないのだと
君だけでも君を
信じていなくてはいけないのだと
君だけが君の
進む道を選べるのだと
だけど
戻っておいで
そっちじゃない
君はまだ
君の未来を信じていい
だから
戻っておいで
そっちじゃない
(2008.06.12)
ありがとう
大好き
嬉しいよ
大丈夫
愛してる
可愛いね
美味しいよ
楽しいね
素敵だよ
たった一言
たった一秒
それで世界は
変わるから
(2008.06.11)
忘れてた
そんなコトバで
片付けた
あなたの今日が
過ぎ去っていく
甘い香りがしてる
コトコトコト
恋する果実をジャムにした
赤く染まった指先で
優しく唇に触れてみて
甘い予感がしてる
トクトクトク
焦がれる鼓動を歌にした
淡く光った月の下
あなたの窓辺に届けるわ
熱い時間に揺れる
カチコチカチ
壊せぬほどの夢を見た
浅く眠った胸の中
あなたと過ごす朝を待つ
愛の気持ちがしてる
ドキドキドキ
恋する果実をジャムにして
甘くあたたかな朝食を
キスと一緒に召し上がれ
温度差がある二人は
きっとこれ以上近づけない
分かち合い混ざり合うには
あまりにも違いすぎるから
熱を奪われて凍える者と
熱に耐えられず溶ける者と
同じ温度になるには二人
あまりにも離れすぎていた
初めからわかっていてもなお
ほんの少し夢を見た
同じ景色を見ることを
ほんの束の間信じてた
温度差のある二人は
きっとこれ以上騙せない
信じて手を取り合うには
あまりにも違いすぎたから
そぼ降る雨に
吐息をつく庭の木々
濡れて鮮やかな紫陽花の
葉陰に見えた子猫の背中
こちらへおいでと声をかければ
ひとりで生きると決めたから
人のぬくもりは要らないと啼く
放っておくのは寝覚めが悪いと
苦笑混じりに言ったなら
目障りならば去るわと啼いた
あれは私
肩肘張って
濡れるに任せた
紫陽花の色に隠れた
黒く小さな
あれは私
私が寂しくて寒いから
どうぞ隣に来て欲しいのと言えば
ようやく子猫は近寄った
暖かなミルクと紅茶を淹れて
窓越しの雨を見よう
ゆっくり静かに見ていよう
雨が晴れて青空になる頃に
きっと歩いていけるから
くちなしの花が匂う
雲の隙間から覗く
白い月の光を浴びて
くちなしの花が匂う
遠い夜汽車の音に
夜の吐息を零す
くちなしの花が光る
夢のあわいの闇を抜け
あなたの頬を照らす
くちなしの花が
あなたを思い出させる夜
あたしの中には
いつも誰かがいて
歌を歌ったり
夢を紡いだりしてる
見たこともないような花や
聞いたこともないような国や
聴こえるはずのない声や
想像もつかない未来が
生まれていくのが分かる
あたしの中には
いつも誰かがいて
いくつもの世界を
時折教えてくれる
道で見かけた花や
見飽きるほどの日常や
聴き慣れている言葉や
刻んできた歴史が
彩りを添えるのが分かる
あたしの中には
いつも誰かがいて
あたしの知る世界で
時折花を咲かす
(2008.06.09)
キリンになって
この街を見下ろそう
なんだこんなもんかと
思ったよりちっぽけだなと
首を振って
草原を目指すんだ
ゾウになって
この街を震わそう
なんだこんなもんかと
道行く人の憂鬱を
踏み潰して
夕焼けを目指すんだ
フクロウになって
この街を飛び回ろう
なんだこんなもんかと
星の方がずっといいやと
灯り啄ばんで
深い森を目指すんだ
クジラになって
この街を水浸し
なんだこんなもんかと
狭苦しい道を叩き
潮吹いて
大海を目指すんだ
シロクマになって
この街を押し潰そう
なんだこんなもんかと
電柱をへし折って
混じりけない
氷原を目指すんだ
ニンゲンになって
この街を突き進む
そうさこんなもんさと
ポケットに手を入れて
知らん顔で
どこまでも目指すんだ
(2008.06.05)
やってはダメなことを
やってはいけない
分かっていても止まらない
止める術を教えて欲しい
他に気をそらせばいいのか
出来ないように拘束するか
本当に切実に知りたい
止める手立てを教えて欲しい
自分じゃどうしようも出来ないこと
自分じゃ解決にたどり着けないこと
そういうこともままあることさ
たまには人を頼るのも悪くないって
ときには人に任せるのもありなんだって
そういうこともよくあることさ
誰かの方が上手いってこと
誰かの方が詳しいってこと
そういうことはままあるもんさ
人は全ての達人じゃない
だから助け合い生きているのさ
いつまでも
信じていられるほど
子供じゃあなかった
現実を知って
夢見ることの難しさを
覚えたけれど
現実の隣に
夢が存在するのだとも
知っていた
いつだって
信じていたかった
大人になったからこそ
大事にしていたのに
消えてしまった
嘆いてももう
戻ってはこない
あの瞬間に
時が戻るなら
今度はこの手を離さずに
しっかり捕まえておくのに
リセットできないゲームでも
最初からやり直せるけど
割れてしまったタマゴなら
他の料理に出来るけど
大事にしていたのに
消えてしまった
存在していたことさえ
確かめることも出来ない
ただ私だけが知っている
ただ私だけが覚えてる
私の時間だけが覚えてる