紫水晶咲き誇る
真珠の珠をちりばめて
蛋白石は匂い立つ
金剛石を抱きながら
紅玉石を啄ばんで
緑柱石が歌唄う
淡く紫陽花咲き誇る
霧雨の珠をちりばめて
真白い百合は匂い立つ
天の涙を抱きながら
甘く赤い実を啄ばんで
小鳥はほがらに歌唄う
(2008.05.30)
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生とは何か
生きていくとは何か
子を為すことか
繁栄の為か
連綿と続く系図を
おのれが途切れさせぬためか
子を為して
死する生物
それが自然の理か
生とはなんだ
生きていくとはなんだ
絶えんとする種の
生とはなんだ
そうではない種の
生とはなんだ
分からないから
生きているのか
分からなくとも
生きていくのか
そもそもその疑に
意味はあるのか
そもそも答えは
存在するのか
生とは何か
生きていくとは何か
それでも世界は
生きていくのか
(2008.05.29)
光る空を見て
怖がっていた女の子
お留守番の家の中
小さな妹と二人
毛布の中に隠れてた
轟く空を聞き
おびえていた女の子
傘を差すのも怖くて
雨の中を一目散に
おうちの中へ帰っていった
外を歩くのは
今でも少し怖いけど
窓のそばに立つ
大人になった女の子
裂けて鳴る空を見ては
美しさに感じ入り
やがて日常に戻ってく
身動きが取れなくなった場所で
ただひたすらに頭を使う
でないときっと
うずもれてしまうから
探し当てたものはけして
そこにとどまったままではない
無慈悲に零れ落ちる記憶が
砂の色の秒針を奏でる
厭うなかれ
隠された一粒を探り当てよ
雨が打ち付けて
風が渦を巻く
こんな夜にはきっと
迷子になった夢を見る
途方に暮れたまま
さまよい歩く
一人ぼっちの夢を見る
まばゆい光が射しても
虹の橋が架かっても
何処へ向かうか
分からないままの
迷子になった夢を見る
街を歩く若者達は
大きなストラップだ
使っているようで
使われている
いつのまにか
従属している
連絡も
交流も
予定も
財産も
情報も
芸術も
全てがその中に
内包され
全てがそれによって
支配されている
それが全て陰謀だとしたら
街を歩く人々は
大きなストラップは
支配者を失って
半身を失って
いつのまにか
立ち位置を見失う
連絡も
交流も
予定も
財産も
情報も
芸術も
どこかへと消えてしまう
それが全て小さな機械の
逆襲だとしたら
依存するなかれ
それはただの小さな機械だ
真夜中のスイーツみたいに
アタシを誘惑してよ
濃厚な生クリームで
アタシの中を満たしてよ
眠れない夜のお酒みたいに
アタシを陥落してよ
焼け付くほどの強さで
アタシを波に沈めてよ
孤独な夜のメールみたいに
アタシを翻弄してよ
指の先まで震えるくらい
アタシの飢えを感じてよ
雨や雪や氷は
ただの水となって
ただの流れとなって
その地を駆けた
時に乾きつつ
時に溢れつつ
低きを求めて
その地を駆けた
鳥が集い
獣が寄って
命が巡る
草が茂り
木々が生えて
緑が満ちる
やがてそれは川と呼ばれ
やがてそこは岸と呼ばれた
そう名付けたものが
岸辺に集い
住み着いた
草木を育て作物と呼び
獣を馴らして家畜と呼んだ
たくさんの血を流し
たくさんの争いを生んで
それらの多くを川に流した
たくさんの血を交わし
たくさんの子を産んで
それらの多くを岸で育てた
雨や雪は氷は
ただの水であり
ただの流れとして
その地を駆けた
時に乾きつつ
時に溢れつつ
多く潤しながら
その地を駆けた
自由に奔放に
あるがままに
その地を駆けた
やがてそれは固められて
やがてそこは固定となった
そう仕向けたものを
ただの水の流れは
ただ静かに受け入れた
その水底で爪を研ぎ
その漣で咆哮を消し
いつか竜となる日まで
やがて再び吠えるまで
岸辺の歴史はそうして
今日も流れに刻まれていく
(2008.05.27)
罅割れた時計が
血塗られた過去で
止まる夜には
気をつけて
眠りに就いていた
亡者達が起き上がり
枯れた薔薇を
持ってくる
蒼褪めた花びらに
偽りの接吻を落とそう
立ち消えの悲鳴に
朽ちた鐘が響く
涸れ井戸の中に
落ちた骨が濡れる
星無き闇を見上げ
零れ落ちる溜め息が錆びる
新しい夜明けを乞うて
瑞々しい螺子を捜す
亡者達が近付く
三日月の鎌を持って
逆廻りの時計が
屠られた過去で
止まる夜には
気をつけて
(2008.05.20)
楽天家で
大雑把で
でも小心者
気付いたら
指先の血がない
胃が固まってる
動悸もする
私ってそういう人間だったみたい
何でも出来る人は
きっととても器用だけれど
何でも出来る人は
だからこそ一番が難しい
たった一つでもいい
それを言えば
誰かが私を思い出す
そういうものがあるといい
あなたが好きです
そう書かれた小さな紙片
押入れの奥
忘れ去られた手帳の中に
幼い私の胸を焦がした
切ない恋の欠片
捨てられなくてもう一度
手帳に挟んでそっと戻した
危険な橋を渡るのだとすれば
どうすれば良いだろう
今にも崩れそうな足元を無視して
目もくらむような高さも無視して
対岸をただ見つめていれば良いか
ボロボロの手すりに怯え
橋を揺らす風に怯み
足の一歩も踏み出せず立ち竦むか
危険な橋を渡るとすれば
どうするのが良いだろう
己を鼓舞して突き進むか
使命だと言い聞かせて踏み出すか
たいした理由もなかったとしても
行かなくて済む言い訳を考え
行きたくなんかないのだと欺瞞を言うか
それが本心とかけ離れていても
危険な橋がここにある
渡るべきか否か
知っているわ
これが幸せな恋ではないこと
知っているわ
これが満たされぬ恋であること
二人はただ
眠るように死んでいく
そんな恋の只中にいた
朽ちた舟で緩やかに漕ぎ出す
誰も届かない水底へ
折れた翼で何処までも堕ちてく
光も射さぬ地の底へ
だから誰も捜さないで
だから二人を連れ戻さないで
二人はただ
この月のない夜だけでも
一緒にいたいだけ
知っているわ
これが幸せな恋ではないこと
知っているわ
これが許されぬ恋であること
だけど今は捜さないで
生きた大気
退化を欠いた
今は舞い
進化を監視
ただ命の後の意だった
説明はそここそ廃滅せ
短き夜の良き時間に
確かめ行く夢が下
眠りの輪廻
長き世は予期かな
そこにただ他にこそ
否という意図ない
(2008.05.19)
怖いんだ
あの喉を切り裂きそうな感じが
怖いんだ
あの穢れを拒む白さが
ボタンを一つ留めるたびに
首を絞められていくカウントダウンが聞こえる
袖に腕を通すたびに
忙しい一日の始まる悪寒がする
怖いんだ
あの糊の効いた襟元が
怖いんだ
皺一つない隙のなさが
本当だよ
怖いんだ
でも本当に怖いのは
クリーニングのタダ券なんだ
(2008.05.16)
お休みの朝は
焼きたてのパンと
採れたてフルーツ
とろっとろのオムレツに
チーズを乗せて
それからたっぷりカフェオレ
よく晴れ上がった青空と
開けた窓から入る風と
小さく流れるクラシックの中
その日の予定を考えながら
ゆっくりたっぷりと朝食を
なんてこじゃれた朝は
なかなか出来ないけど
君が隣にいれば
出来るかもしれないよね
だから一緒に暮らしてみないか
どこで食べる料理より
あなたの作るご飯が美味しい
ありふれた食材の
ありふれたメニューでも
誰かが首を傾げても
たとえば毒が盛られても
あなたの作るご飯なら
僕は美味しく食べるだろう
何よりのご馳走は
あなたの愛が込められた
あなたへの愛のこもった
あなたの作るご飯なのだから
東の窓のカーテンを
開け放したまま眠る
朝になれば
太陽が瞼をこじ開け
頬にキスをしてくれるから
南の小窓を少し
開け放したまま眠る
夜を渡る
そよ風が髪を撫でては
夢にウィンクしてくれるから
北の窓はそっと
閉ざしたままに眠る
窓の外で
誰かが私を呼ばう声が
聞こえたりしないように
西の扉はそっと
閉ざしたまま眠る
朝が来て
太陽が夢から解き放つまで
眠りの中にいられるように
さくさく進めばいいってものじゃない
足踏みも時に大事だった
急いで通り過ぎてしまえば
見ることのなかった景色があるように
誰かの後になってもいいじゃない
人と較べる必要がないこともある
自分がどれなら許せるのかを
見極めてしまえばそれだけの話
たくさんのありがとうと
たくさんの大好きを
花束にしてプレゼントする
あなたのくれる愛情には
きっと足りないけれど
あなたのくれる慈しみには
きっと及ばないけど
たくさんのありがとうと
たくさんの大好きを
カタチにして
コトバにして
プレゼントする
見返りを求めない
大きな愛を
ありがとうと
夕暮れが遠くなって
空が輝きを残す
白い綿毛野原を
柔らかな風が駆けた
ほらあそこにいるよ
隣の僕が囁く
僕は目を凝らして
僕の指先を追った
綿毛舞う風の中
駄目だ見えないんだ
隣の僕に囁く
大人になったんだね
小さな僕が呟く
僕と空を見上げて
でも君は見える
夕暮れの空や
軽やかな綿毛を
そう僕は見える
太陽に架かる虹や
道端の小花を
ほらあそこにいるよ
小さな僕が笑った
僕はまばたきを一つ
僕が見たものを見つけた
白い綿毛野原で
(2008.05.15)
地球は本当に廻っているのか
世界は本当に丸いのか
夜空の星は本当に遠いのか
海の果ては本当に陸地なのか
時間の速さは一定なのか
永遠はどこかに存在するのか
自然は本当に毀れるものか
生きているとはどういうことか
心は一体どこにあるのか
生き終えたならどこへ行くのか
果たして本当に明日はあるのか
果たして本当に昨日はあったか
私というのは一体誰か
(2008.05.14)
あなたに手紙を書くことにしました
何を書いていいかも分からぬまま
筆を走らせてみることにしました
元気ですか
どうしてますか
私は変わらず生きてます
青空の下で草を食む
兎のようにのんびりと
困ったときに耳の後ろを掻く
あの癖は今もまだ残ってますか
今でもまだあなたの唇は
苦い煙草の味がしますか
あなたの隣にはもう誰かがいますか
いいえもうあなたの隣に未練はないけれど
あなたは今幸せでしょうか
答えを聞いたとき私は
祝福するのでしょうか
嫉妬するのでしょうか
それも分からないから
答えは必要ありません
あなたに手紙を書いてみました
思いつくままに書いてみました
出すことのない手紙だけれど
人差し指の上に乗せた
小さな鳥にそれは似ていた
啼くでもなく
羽ばたくでもなく
じっと動かなかったけれど
落としたら砕けてしまう
水晶細工にそれは似ていた
冷たくもなく
透明でもなく
硬質さだけを抱いていたけど
接吻すれば吐息で飛ぶよな
淡い花びらにそれは似ていた
匂うでもなく
誘うでもなく
僅かに蜜を光らせただけで
そういったものにそれは似ていた
言葉には出来ず
形にも出来ず
それでもなお愛しいようなものに
君を探してる
いつか出会えるだろうか
まだ知らない君を
ずっと探してる
羅針盤の指し示す方角は
気まぐれな風のようで
占い師の告げる言葉より
あやふやな未来への道標
君を求めてる
いつか出会えるように
まだ知らない君を
ずっと求めてる
何も書かれぬ手紙が決める行き先
流れ落ちる星図のように
明日を探すための星さえも
曖昧な彼方への道標
君を探してる
いつか出会えるだろうか
まだ知らない君に
ずっと恋してる
いつか出会えたのならば
そう告げたくて
今日もまた探しているんだ
柔らかな午後の日差しの
降り注ぐ丘で草を食む
若駒の鬣を
揺らす初夏の風
吹き上がる若葉を
受け止める青い空
新萌えの木々に隠れ
囀る小鳥たちの
響き渡る歌声と
遠く光る海の潮騒
広がる世界の
片隅で深呼吸
いい天気だよ
出かけようよ
こんなところに
篭ってないでと
君が言う
悩んでたって
笑ってたって
同じ一日よ
もったいないと
君が言う
柔らかい五月の風や
目にも優しい若葉の色や
抜ける青さに溶ける雲雀や
甘く香ったお茶を飲んだり
他愛ないよな話をしたり
芝生の上で昼寝をしたり
いい天気だよ
外へ行こうよ
一人っきりで
篭ってないでと
君が言う
嘆いてたって
楽しんだって
同じ一日よ
楽しもうよと
君が言う
(2008.05.08)
終わってしまうのは
あっという間
手を伸ばしても
もう届かない
ああすればよかった
こうしたらよかった
そう悔やんでも
もう戻らない
幸せな恋の
終わりみたいに
夜明けの夢の
目覚めみたいに
いってしまうのは
あっという間
手を伸ばしても
もう届かない
(2008.05.06)
掌の上のタマゴのように
こわれものの小さな世界
落とせば割れてしまうだろう
でも
割らなければ見えてこない
掌の上のタマゴのように
不安定で未知なる世界
見えないままに転がしている