元気かい
空に向かって手を振る
あれだよと
星に向かって指差す
雪降る夜の時計塔の下で
モザイクタイルの町並みの
中央広場の時計塔
皆が眠った雪夜更け
僕らは抜け出し空を見る
見えるかい
空に向かって広げる
届くかい
星に向かって呟く
雪降る夜の時計塔の下で
(2008.02.27)
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ここにいて
指一本で
遠くのホテルの部屋へ行く
来月の飛行機で空を飛ぶ
昔々の漫画を読んで
地球の裏のお菓子を食べる
ここにいて
指一本で
たとえば君が
次に生まれるとき
女でも男でも
ぼくは君に恋するだろう
たとえば君が
空を飛ぶ鳥なら
危険なときには君を守る
扉のない鳥かごになろう
たとえば君が
朝にかかる虹なら
強い陽射しに消えていっても
瞼の裏に焼き付けておこう
たとえば君が
昨日に置いて来た夢なら
今宵眠りに着くまでずっと
その欠片を探し当てよう
たとえば君が
眠り続ける姫ならば
その耳元で愛を囁き
ぼくもまた傍らで眠ろう
たとえば君が
一輪の小さな花なら
散った花びらを飲み干して
君の最期を見届けよう
たとえば君が
今ここにいないとしても
いつでもどんなときも
ぼくは君に恋するだろう
ありがとう
長い間
あなたがいてくれたから
私はとても助かった
ありがとう
いつだって
あなたがそこにいたから
私はどこまでも行けた
傷つけたり
傷ついたりしたけれど
私たちはとてもいい仲間だったね
私はもう行くけれど
暫くはきっと
あなたの癖を思い出す
あなたのペースを思い出す
ありがとう
本当に長い間
あなたがいてくれたこと
たくさんのありがとう
閉ざされた扉の向こう側に
置いてけぼりにされた小さな私
泣いていたとしてももはや
その声は届かない
聳え立つ瓦礫の向こう側に
取り残されたままの孤独な私
絶望に沈んだ瞳はとうに
伏せられたままで交わらない
心細さの中に立ち竦んだままの
怯えるだけの少女は今でも
どこかできっと泣いている
どこかできっと傷ついている
捨てられた心の向こう側で
置き去りにされてしまった幼い私
彼女は今も泣いてるだろうか
彼女は今も傷ついたままだろうか
それをもはや今の私は知る術もなく
風の音に幻聴を聴く
夜の帳に幻覚を視る
もう誰も来なくても
もう何も起きなくても
時は静かに音を立てて
歪むことはあっても
解けることがあっても
時はけして留まりはせずに
きっとただ
在るというだけの存在として
流れていくのだ
ただ在るだけの
留めることの出来ぬもの
だからこそ
それを惜しみ
それを愛するのだ
愛なんて呼べるほど
難しくはなかった
恋だよと言えるほど
簡単でもなかった
二人の間にあった
愛情の重さを
愛情の形を
愛情の深さを
言い表すには
言葉が足りなすぎた
愛なんて告げるほど
軽々しくなかった
恋なんて決めるほど
華々しくなかった
二人の間にあった
微妙な空気を
測れない距離を
強かった気持ちを
言い示すには
言葉は拙すぎた
(2008-02-26)
君が生まれたその時
僕は多分空っぽだった
あるいは
空の青さに見惚れていた
君が生まれたその時
僕はおそらく呆けていた
あるいは
鴉が広げた翼を見ていた
君が生まれたその時
僕はきっと信じていた
あるいは
生まれたばかりの君になってた
(2008-02-19)
苦しいんです
夜も眠れないほど
彼が私に侵食してくる
切ないんです
息も出来ないほどに
彼が私を追い詰めてくる
これは恋というものですか
消せないんです
振り払っても振り払っても
彼の気配が
もどかしいんです
熱に浮かされて彷徨い歩く
夢にも彼が
これは恋というものですか
いいえ違うのです
けして恋ではありません
けして風邪でもありません
哀しいんです
百花繚乱花の季節に
彼は私を閉じ込めていく
これは花粉症というのです
初めてのデートは
あなたから誘ってね
ぎこちなくていいから
私のこと考えて
完全は求めないわ
でもあなたから誘って
万全じゃなくていいから
プランニングしてね
草食的消極さで
あなたを言い表せても
最初くらいイニシアチブは取ってね
私は草原の花にはならない
男の子が思うより
女の子は純情でしたたか
花冠のその下で
鋭い爪を潜めてるの
初めてのデートは
あなたから誘ってね
強くなくていいから
少しは私を騙してね
草食的消極さで
あなたが怖気づくなら
私はもっと魅力的な獲物を
探すために狩りに出るわ
だから
初めてのデートくらい
あなたから誘って
花にするか
豹にするか
あなたに決めさせてあげる
あなたたちの輝きを
あなたたちの頑張りを
あなたたちの楽しさを
本当に凄いと思った
同じ一人の人間が
同じ世代の人間が
同じとは言えぬ人生が
本当に凄いと思った
私に何が出来るだろう
私は何が出来るだろう
あなたのようにはなれないけれど
あなたの夢とは違うのだけど
確かにそう考えさせた
あなたたちの輝きを
あなたたちの頑張りを
あなたたちの楽しさを
本当に眩しく感じた
私も誰かの光のように
いつかどこかで輝くだろうか
ときどきことばはつたわらない
だけどなかないで
だけどなげかないで
どきどきはきっとつたわるから
それを食べなくても
あたしは死なないけど
食べたほうがカラダにはいい
一人きりで食べても
あたしは死なないけど
誰かと一緒のほうがココロにはいい
そんなものを食べても
あたしは生きてけるけど
きちんとした食事が本当はいい
好き嫌いを減らして
たとえばあなたと一緒に
作りたての料理を食べたい
机の中にこっそりと
招待状が届いたら
それが合図の忍びごと
素知らぬ顔で
秘密の場所へ
ノックは三回
それから一回
それではどうぞ
秘密のお茶会
ビーカーフラスコ試験管
メスシリンダーガスバーナー
天秤ばかりと薬さじと
丸底フラスコ茶を淹れて
漏斗でコーヒー淹れたなら
薬壜出してご覧じろ
ラベルに書かれたKCN
光る結晶どれくらい
20杯ほど貰おうか
それなら私は15グラム
薬さじ乳鉢薬包紙
天秤分銅ピンセット
お次はこちらのスポイトで
誰もが見てないそのうちに
秘密の液体ひと垂らし
小瓶に貼られた髑髏のマーク
口元にやりと笑ってみせる
さあさあどれでも好きなもの
選んで皆でティータイム
今日の餌食は誰かしら
素知らぬ顔でティータイム
全てがそつなく終わったら
洗って綺麗に元通り
専用戸棚に鍵かけて
それでは皆さんさようなら
机の中にこっそりと
招待状が届くまで
毒を盛られたその人が
次の会を開くまで
どこにでもいる一生徒と
どこにでもある理科室の
顔をしながらさようなら
(2008-02-18)
君を想う寒い夜
甘い心乗せて
届けに行こう
星屑の降る中を白い息吐きながら
小走りに急ぐ月の道
夜空に浮かぶシルエットの並木
潜り抜けて会いに行こう
渡せなかったチョコが
夜の中で凍って砕ける前に
会いに行こう
胸と抱えた小箱とを
ことこと音を立てさせて
戸を叩けなくて立ち止まる
部屋の灯りをみあげたままで
今宵私に翼があれば
あなたの窓まで飛ぶものを
白い息吐きながら
柔らかく晒される月の下
夜空に流れた星屑一つ
こつんと小窓に突き当たる
音に気づいたあなたの瞳
窓の中から見下ろした
消えてしまったあなたはやがて
微笑みとともに戸を開ける
(2008-02-14)
雨が降る
雨が降る
強い風を伴って
雨が降る
雨が降る
全てのホコリを押し流し
雨が降る
雨が降る
やがて潤い芽吹いても
雨が降る
雨が降る
今宵この地に雨が降る
文字を追って
話を掴まえろ
言葉を辿って
正解を導け
それはそんなに
難しいことかい
難解な語句や
遠まわしな言い回し
そんなものがないのに
それはそんなに
難しいことかい
本を読んで
話を追いかけろ
話を交えて
経験を身に着けろ
それは
そんなに
簡単ではないが
それは
そんなに
難しくはない
いいよ
いつでも
聞いたげるよ
いいよ
いつでも
呼んでいいよ
きみの
気持ちが
晴れるように
きみの
悲しみが
消えるように
いいよ
なんでも
聞いたげるよ
いいよ
なんでも
話してごらん
きみの
ココロが
癒されるよう
きみに
あしたが
とどくように
いいよ
あたしで
構わないなら
いいよ
あたしは
聞いたげるよ
(2008-02-06)
眠れないよ
布団の中
目を閉じて
遠い夜汽車の音を聞いてる
何を載せて
どこへ行くの
誰を乗せて
どこに行くの
眠れないよ
ぬくもりの中
くるまって
遠い夜空の音を聞いてる
星は光り
どこへ行くの
風は笑い
どこに行くの
眠れないよ
暗がりの中
遠い夜明けの音を待ってる
夢を誘い
どこへ行くの
瞳閉じて
夢の中へ
軽やかな絶対さで
駆けていく君の足音
抗いようもなく
押し寄せてくる
歓喜の歌声
目に飛び込んでくる
柔らかな色彩の
君の笑顔と
春の色
窓を開けた途端
君が駆け寄ってくる
ぼくの胸の中で
君の髪が春に匂う
甘くてもいいじゃない
綺麗でもいいじゃない
大事に扱ってよ
壊れそうな飴細工みたいに
優しく扱ってよ
そして
噛み砕いてしまってよ
(2008-02-01)
キャラメル頬張って
駆け出してった
寒そうな手足
擦り傷に血が滲む
人生はお菓子のように
甘くはないさと
頬の中転がしながら
大人びた口調で
偉そうに笑う
キャラメル頬張って
駆け去っていった
意志を持つ背中
木枯らしに立ち向かう
毎日はお菓子のように
脆くはないよと
舌の上戯れながら
物知りの風情で
賢しげに笑う
キャラメル味の少年
冬の中
駆けてった
(2008-01-31)
甘い甘いチョコレートを
アナタにあげるわ
喉も
胸も
蕩けてしまいそうな
甘い甘いキスとともに
揺れる揺れる想いを込めて
アナタにあげるわ
誰も
彼も
太刀打ちできないほどの
めくるめくような夢とともに
溶かすほどの
甘い夜をあげる
年上の彼女はいつも
微笑んだままで
眠っている
目覚めた彼女に問えば
シアワセなのよと
そう言って笑う
いくつもの日々を
たくさん泣いて
たくさん怒ったから
もうあとは
笑うだけなの
これからの日々を
たくさんの人と
たくさんの愛で
過ごせるから
嬉しいのよ
年上の彼女はいつも
微笑んだままで
そう答える
だから最後は
あなたも笑って
みんなで笑って
シアワセなのよ
そう言って笑う
お別れするのは
哀しいだなんて
苦しいだなんて
陳腐な言葉で
見送らないでね
年上の彼女はそして
微笑んだままで
眠っていた
あなたのこと
ずっと見てたから
あの子に恋したこと
すぐに分かった
分かってる
ずっと隣にいたから
あなたが悩んでること
すぐに感じた
違う恋をしてしまった二人
きっと離れていく
あなたの幸せを願っているけど
今はまだこの手を離せない
どうしよう
板ばさみのまま
あなたに恋したこと
知りたくなかった
あの子のこと
嫌いだったら良かった
あなたが苦しくても
邪魔できたのに
別の恋を始めてしまった二人
こころ離れていく
指も腕も胸も全部繋げても
目線は噛み合わないのね
さよならを言うのならば
せめて私から言わせて
あなたの恋に気付いたことを
あなたに知らせたくないから
同じ恋をしていたはずの二人
今は離れていく
もう戻れないことは知っているから
今夜だけはそばにいて
まだ風は冷たい
まだ空は遠い
でも土はぬかるみ
柔らかくほぐれていく
そして蕾は膨らみ
やわやわとほどけていく
もう陽射しは強い
もう朝は早い
そう鳥がさえずり
楽しげに朝を迎える
そして木々は芽吹いて
ゆるゆると色づいていく
やがて来る春は
そうやって始まっていく
ここで一つの疑問が生じる
さてこれは一体なんなのか
今朝見た夢の続きか
昨日買って来た花の香りか
風呂上りのビールの泡か
遠い昔に捨てた台詞か
毎日の中で澱んだ空気か
あなたが寄越したおやすみメールか
この胸に巣食ったもやもやの
正体は全て分からないまま
深呼吸一つ大きく吸って
答えのないまま飲み下す
明日なんて見えなくて
生きていることが辛くて
いっそ終わらせてしまおうかと
明日も今日の続きで
生きていくことは苦痛で
いっそ断ち切ってしまおうかと
そう思っては
いけないだろうか
救いなんて見えなくて
孤独に沈むのが怖くて
もはや信じるものなどないと
望みなんて抱けなくて
絶望にまみれるのが不安で
もはや涙も枯れて果てたと
この身を捨てては
いけないだろうか
駄目だと止める者などなくて
やめろと宥める者などなくて
それでも生きては
いけるのだろうか
明日なんて見えないから
もしかしたらなんてこと
いっそ信じてしまおうかと
明日は今日より良くて
生きていくことは歓喜で
そう願ってみようじゃないかと
明日も生きては
いけるのだろうか
生きろと止める者に会うため
笑えと宥める者に会うため
行けるとこまで
生きてみようか
(2008-01-21)