時間は誰にでも平等で
誰の上にも等しく流れる
速い気がするのは
遅い気がするのは
あなたの時間の使い方
速いのが良いわけでも
遅いのが良いわけでもなくて
あなたの時間の使い方次第
もうすぐ今年は終わるけど
あなたの今年の一年は
速かっただろうか
遅かっただろうか
10年カレンダーを貰った
10年後の連休が赤文字で
キラキラと光る
来年のことさえ
考え付きもしないのに
再来年のことさえ
見通すことも出来ないのに
10年カレンダーを貰った
10年後の自分がどこかで
キラキラと光る
のかどうかさえ分からない
たまにはこんな日もあるよね
ガラスの靴落っことしちゃって
砕けて散って無くしちゃうような日
塀の上のハンプティダンプティ
落ちて割れていなくなっちゃうような日
せっかく書いた文字が
固まって崩れてどっか行っちゃう日
たまにはこんな日もあるよね
光の粒が降り注ぐ街
夜が澄んだ音を立てて
煌いているよ
ドキドキして眠れない子どもも
待ちくたびれて眠っちゃった君も
いつもと変わらない仕事の大人も
誰かのサンタクロースなあなたも
メリーメリークリスマス
優しいキスをまぶたの上に
君と僕の間を隔てる
この大きな窓は
頑丈で割れない
ほんの少し
声が届くだけ
だから
祈りを込めて
磨き続ける
二人を阻むものが
存在しないくらいに
ただひたすらに
君の冷たい指先に
接吻をする
このまま熱を
奪われてしまっても構わない
だからお願い
置いてかないで
君の冷たい唇に
そっと触れる
焦がれるほどに
溶けてなくなってしまいたい
だからお願い
置いてかないで
嫌いだなんて言わないで
苦手だなんて言わないで
僕の情熱を冷まさないで
膜に包まってしまうから
だからお願い
飲み干しちゃって
帰り道の夕闇が
いつか見た本の表紙みたい
惑星が二つ
深くなる群青の中で光る
帰ろう
帰ろう
暖かな場所へ
ムクドリ集まる楠の下
テールランプが魚の群れみたい
赤い尾鰭がひらり
暗くなる街路樹を照らす
帰ろう
帰ろう
明日が来る場所へ
銀色の花が
夜の闇に開く
芳しい香りが
秘密めいて漂う
あれは恋の花と
誰かがそう告げる
手折れば枯れてしまう
手折らねばやがて曇る
夜の銀の花は
月の雫に濡れて
恋の蜜で魅せる
銀色の花が
闇の中で招く
果敢なげな花弁が
たおやかに揺れて誘う
あれは恋の罠と
誰かがそう諭す
触れれば堕ちてしまう
触れねば消えてしまう
闇の銀の花は
愛の言葉に揺れて
妖しく身を震わす
摘み取っておしまいと
誘うように光り
惑わすように香る
やあ
これはようこそ
いらっしゃい
お探しのもの
用意してございますよ
これなるは
かつての英雄達が
重宝した金の鈴
行くか戻るか
西か東か
悩んだときには鈴を振る
愛か戦か
選ぶかよすか
迷ったときには鈴を振る
片方答えを口にして
ころんと一振り振ってみる
音が鳴ったら進むべし
沈黙したならやめるべし
ただしお一つご注意を
これなる鈴は気まぐれで
数度に一度嘘をつく
これなる鈴はそれゆえに
時折人を惑わせる
幾多の数多の英雄達は
それゆえ
末路を間違えた
それでも良ければさあどうぞ
輝く黄金をその手に取って
あなたの未来を委ねるならば
鈴は軽やかに鳴るでしょう
月を見ながら考える
空に忘れた手袋を
茜色したマフラーを
地球を見ながら考える
翼をなくした君のこと
夜の色した夢のこと
そしてゆっくり
日が暮れる
やあ
ようこそ
いらっしゃい
お待ちしていましたよ
あなたにうってつけの品はこちら
願いを叶えることのできる
紫の宝玉の指輪
右の小指でひと撫でしたら
願う言葉を口にして
指を鳴らして御覧なさい
見事宝玉が砕けたら
あなたの願いが一つだけ
この世のものになるでしょう
ただしお一つご注意を
これなる指輪は代償に
大事なものを奪います
どのお一つが無くなるか
それは指輪の気分次第
それでよければ
さあどうぞ
なるほど願うは
大切なものを
奪ってくれるなと
そう仰るか
それならそれで
良いでしょう
指輪は砕け塵と消え
しかしあなたの毎日は
前と変わらずあるでしょう
本当にそれを願うなら
試してみれば良いでしょう
さあ
どうぞ
口にして御覧なさい
指輪が叶えるはただ一つ
さあ
どうぞ
あなたの願い事を
ひとつだけ
叶えてあげましょう
さあ
口にしてごらんなさい
そのかわり
あなたの大事なものを
ひとつだけ
貰い受けましょう
さあ
声にしてごらんなさい
さあ
湯気の向こう側に
安らぎが浮かぶ
幸福の食卓
あたたかいものはなぜ
こんなにも胸を
満たすのだろう
立ち上る香りの
優しさや懐かしさ
慈愛のテーブル
温もりをくれるものはなぜ
こんなにも胸を
締め付けるのだろう
具沢山のスープ
誰かとつつくお鍋
甘い甘いココア
涙が出るのはきっと
胸を焦がす
あたたかさじゃなくて
舌を焦がす
熱さのせい
そんな強がりさえも
湯気の中に解けてしまう
あなたの言葉のすべてを
受け止めることはできないけれど
幾つか拾い上げることはできる
正しい答えであると
言い切ることはできないけれど
幾つか伝えてみることはできる
ただここで聞いていると
ただここで見ていると
あなたに言うことなら出来る
誰も見ていないわけじゃない
誰も聞いていないわけじゃない
あなたの思いの破片は
大丈夫
ここにある
この手は
誰かを抱きしめるためのもの
この足は
誰かの元に駆けつけるためのもの
この目は
誰かの幸せを見るためのもの
この口は
誰かに好きだと告げるためのもの
この耳は
誰かの笑った声を聞くためのもの
この胸は
誰かのために祈るためのもの
誰でも
誰かのために
マラソンみたいなもんさ
どんなに気が重くても
どんなに気が乗らなくても
一歩踏み出してしまえば
走り出しちゃうようなもんさ
風を切る感触や
流れていく風景が
時折分からなくなるくらい
一度走り出してしまえば
波に乗っちゃったりするのさ
いつまでもは走れなくても
どこまでもは進めなくても
中途半端には止まれない
一旦立ち止まってしまえば
次の一歩は分からないのさ
マラソンみたいなもんさ
まずは踏み出してみるのさ
腕を振ってみるのさ
いっそ夢を見てしまえば
駆けていっちゃえるのさ
甘い甘いチョコレートケーキ
あたしとあなたの交わすキス
喉の奥まで満たされて
甘い吐息が零れ出る
甘い甘いチョコレートケーキ
あたしとあなたの絡む指
胸の奥まで満ち満ちて
焼けつくような熱になる
このままじゃきっと
食べきれなくなってしまうから
ほんのちょっぴり口直し
スパイス効かせたつまみ食い
このままじゃきっと
うんざりしてしまうから
ほんのちょっぴり一休み
潤う露を飲み干して
甘い甘いチョコレートケーキ
あなたとあたしの恋の味
体の奥まで満たされて
このまま二人蕩けあう