どこかでにゃおにゃおと啼いている
あれは夜だ
とびきりの闇に星を散らして
窓辺で僕を呼んでいるのだ
猫なで声で誘っているのだ
どこかでにゃおにゃおと啼いていた
あれは夜だ
三日月の瞳に笑みを浮かべて
窓辺で僕を招いているのだ
猫をかぶって待っているのだ
どこかでにゃおにゃおと啼いている
あれは夜だ
あまりに声が切なげなので
窓を閉ざした秘密の部屋を
僕は思わず開けそうになる
アロマオイルみたいに
満たして
癒して
いつかなくなればいい
気づかれぬほどささやかに
どこかに留まっていればいい
誰かの通り過ぎた風に
不意に香って消えるような
まるで夢かと思えるほどに
か細く香って消えるような
アロマオイルみたいに
満ちて
和ませ
いつかなくなっていい
眠りの中に引き込まれ
ただひたすらに夢を見る
話はまるで木の葉のように
いくつも廻って舞い踊る
君は愛を無駄遣いして
いくつもの恋で泣いてきた
私は愛を出し惜しみして
いくつもの恋を逃げてきた
まるで似てない二人の女
君は夢を誇大に語って
いくつかはそれをものにした
私は夢を小出しに謳って
いくつかをなかったことにした
似ずに似ている二人の女
クールな才女を装いながら
理論武装に溺れる君と
頷き同意を装いながら
別の論理で釘さす私
似てて似てない二人の女
君は反省や後悔をいつか
忘れて再び恋する女
私は反省や後悔をいつも
使いこなせず恋せぬ女
それでもどこだか似ている二人
君も私も結局のところ
それでそうして生きてた女
私も君もそうして生きて
自分を愛して生きてる女
あたし何が欲しいんだろう
あたたかな愛
居心地のいい家
嬉しくなる歌
エンドレスな縁
温度差のない逢瀬
あたし何がしたいんだろう
飼い馴らした柔順さ
切っても切れない絆
口説き上手な唇
けれど羞恥う目元
蠱惑的な仕草
あたし何が欲しいんだろう
寂しがらない夜
静かに眠る朝
澄み渡った昼下がり
急かされるような夕焼け
曹達水の星空
あたし何がしたいんだろう
楽しいだけの一瞬
近づいて触れる肌
爪の先まで満たされる快楽
天に昇りつめるほどの愛
遠ざかれば消える夢
あたし本当は
何が欲しくて
何がしたいの
寄せて 引いて
寄せて 引いて
寄せて 引いて
寄せて 引いて
寄せて 引いて
寄せて 引く
その
確かな
実感
切れてしまった鎖の先に
錆び付いたままの十字架
弔いの歌を梟が啼いて
昏い星が夜露で濡らす
赤黒い匂いが闇夜に彷徨い
舌なめずりした夢が微笑む
饗宴を告げる廃墟の鐘は
背徳に堕ちた祈りを抉る
夜明けを押し留めんとして
暁闇を裂いた傷痕の月は
緋き涙で杯を満たして
全ての夢を酩酊に導く
嗚呼もはや夜は終焉
素知らぬ顔で空が白めば
あとには何も残らぬ舞台に
木立を抜けた朝日が光る
僕らは一緒に旅が出来る
僕らは共に冒険が出来る
みんなで一つのパンを分け合い
みんなで一つの毛布に眠る
みんなで決めた旅路を歩き
みんなで選んだ航路で迷う
僕らは一緒に旅をしてる
僕らは共に冒険をしてる
だけども敵がいるとしたなら
君の敵は君だけのもの
僕の敵は僕だけのもの
誰もが一人で戦うしかなく
誰もが一人で選ぶしかない
僕らはそれでも旅をしてる
僕らは共に冒険をしてる
目指す先がいずれ違っても
辿る道がいつか分かっても
暖かくして
出ておいで
一緒に夜を
眺めよう
流れる星を
獲ってあげるよ
ココアに浮かべた
マシュマロのように
ゆっくりと夜が
溶けていくのを
甘く二人で
飲み干そうよ
ほらまた一つ
星が流れた
君の願いを
ささやいてごらん
ほらまた一つ
流れていくよ
僕の願いは
もう叶ったよ
隣に座る
星のかけらが
空から降りて
叶えてくれたよ
いくつもの僕が
一度にしゃべるので
僕はいつも
正しい僕を
見つけられない
正しい僕なんて
いやしないさ
いいやいるね
ていうか僕だね
いやいや僕だよ
僕ではないね
どの僕にするか
決め切れなくて
ひたすら悩んで
唸っていたまま
三日と三晩
自問で潰れた
いくつもの僕が
一時にしゃべるのを
僕はいつも
ただランダムに
選び出してく
正しかろうが
正しくなかろうが
どんな僕でも
僕は僕だ
そう決めたのも
やっぱり僕だ
あなたの隣にいる
この温度が一番好き
触れた肩から沁みこんでくる
優しい優しいぬくもりが
あなたの目の前にいる
この距離が一番好き
見詰め合ったら照れてしまった
笑顔の吐息が重なる近さが
あなたの後ろにいる
この視界が一番好き
何があっても大丈夫な気がする
あなたの背中の大きさが
重たい雲をすり抜けた夕日が
世界をローズクォーツ色に染める
夢で咲いた花のような
ノスタルジアの歌の中
光り始めた街灯の下を
ローズクォーツ色の猫が通る
長く伸ばした尻尾の先に
まあるい月を咲かせながら
砕けた欠片をちらつかせながら
やがて蒼い蒼い夜が降る
猫はいつしか屋根の上
一声啼いて闇を呼ぶ
年を取った女が
昔の恋を思い出して笑う
とうに冷え切ったぬくもりを
後生大事に抱え込む
枯れてしまった花束も
黒ずんでいった銀の輪も
行方の知れぬ恋人たちも
すべての時を巻き戻し
年を取った女が
昔の恋を抱きかかえて眠る
徐々に冷えていく年月に
気づかぬように目を閉じる
優しい金色の香りが
頬を撫でる
仄かに甘い囁きが
髪を靡かせる
降り注ぐ陽射しよりも
輝いた小花
零れ落ちる月影よりも
におやかなあわい
眠りの中に落ちながら
香りをひとしずく飲み干そう
暖かい静寂に似た
優しい夢が見られるだろう
キンモクセイの魅せる夢は
たぶん
この季節に似て
どこか寂しく
きっと優しい
甘い唇にキスをして
君の微笑を絡め取る
ちろりと出した舌の先
僕を誘って惑わせる
招く瞼にキスをして
君の流し目掠め取る
ちろりとくれた眼差しが
僕を狙って濡れている
白いうなじにキスをして
君の吐息を飲み干した
ちらりと見せる欲望は
僕を煽って燃えている
捕らえられたのは
君と僕
果たしていったい
どっちだろう
おめでとうの言葉って
とても嬉しい
たった5文字の一言が
心をほっこり暖める
おめでとうの言葉って
とても優しい
ほんの5文字の声なのに
笑顔がほっこりほころんだ
お誕生日
おめでとう
ありがとうの言葉って
とても明るい
たった5文字の一言に
感謝の気持ちがあふれてる
ありがとうの言葉って
とても正しい
ほんの5文字の声なのに
まっすぐ届く気がするよ
祝ってくれて
ありがとう
カラダが訴えてる
生きてるんだよ
動いてるんだよ
ここにいるよ
ここにあるよ
カラダが伝えている
使ってるんだよ
働いてるんだよ
ここにいるよ
ここにあるよ
痛みを伴って
日ごろ使わない筋肉が
主張している
ここにいるよ
ここにあるよ
君が僕を好きなことを
僕はずっと知っていた
気づかない振り続けながら
僕はずっと待っていた
君が愛してると
僕に告げるのを
気軽な素振りでくれたチョコや
身軽な言葉のハピバースデー
そこに想いが詰まっているのを
僕はずっと知っていた
君が愛してると
言えずにいるのを
危ういバランスの二人
壊したのは君だった
待っていただけの僕を置いて
消えてしまってもういない
僕も君を好きなことを
僕はずっと知っていた
優位な振り続けながら
僕はずっと待っていた
君に愛してると
告げる日が来るのを
漆黒のマント翻して
夢を攫っていく
闇の中
赤く濡れる唇で
眠れる骸に
接吻を頂戴
磔刑の真実が
頽れるよりも早く
此処に来て
優しく抱きしめて
粉々に砕いてしまって
寝台に散った
新月の啜り泣きと
棺を埋め尽くす
薔薇の流す涙に
噎せ返りながら
冷たい微笑で
この指を絡めて
どうぞこのまま
攫って頂戴