FC2ブログ
貪婪で強欲な王が
戦争の末に全てを失った
倒れ臥した男を
受け止めたのは彼自身の影法師だったが
その地はもはや彼の領土ではなかった



いつでもその他大勢の一人だった男が
今しがた倒れた王の骸を見つけた
なるほどこれが存在感というものか
身ぐるみはいで歩いていると
王と間違われて射殺された



簒奪者は玉座を得た
誰もがひれ伏し
何もかもが足元に広がった
足の踏み場がなくて身動きがとれず
天を仰いで嘆こうとしたが
天もまた足元に落ちていた



お城の皇女に恋をした男は
彼女のために戦い傷ついたが
所詮身分違いの恋は届かず
彼女は隣国へと嫁いでいった
だが心は傷つかなかった
男は幼馴染の女の腕の中で死んだ



恋して焦がれて身を焼いた男が
鳥になって女のところへ飛んでいった
女は恋人と二人で鳥を見上げた
悲しみの嘆きは喉を引き裂いたが
その澄んだ啼き声は女の耳に死ぬまで残った



身の程をわきまえた男が
ある日二人の女に言い寄られた
少し気になっている女と
少し裕福な女
どっちとも決められないまま
時間だけが過ぎていく



幸福を探し続けて
星をいくつもめぐった男
薔薇にフラれ狐に笑われ
見かけた青い鳥は誰かの元で囀っていた
幸福は探すものではないのだと気づいた男は
どこかの星で蕾を抱いた花になった
誰もまだ彼の元を訪れていない



とんでもない大金を手に入れた
使っても使っても使い切れず
やがてだんだん虚しくなった
ある日酔いどれた男は道端で転んだ
手にしたただの黒い石を家宝にすると言い残して
あとは全部人にやってしまった



口も頭も腰もすべて軽い男が
たくさんの女を渡り歩いた
誰もが彼をそんな男だと認識していたが
認識してたが故に変わらぬ現実に気づき
月日が経つにつれて夢から覚めるように去っていった
急激に男は老いて道端に倒れた
もう誰も彼を見向きはしなかった



合わせ鏡に迷い込んだ男が
探し続けた恋人の面影を見つけた
手を伸ばして捕まえたはいいが
時計の針が呪力を解いてしまった
それで彼の腕は彼女の影の中で
今日も生きている
スポンサーサイト



2008.09.08 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top