どこにもかえらない

言の葉遣いになりたい。 たくさんの言葉とたくさんの感性で誰かの心の琴線を響かせたい。 そう思って今日もまた、詩を書いてます。

闇夜の夜話

月のない夜に
冴え冴えと光る
白い骨

しっとりと浴びた夜露は
乾いた骨を軋ませる

あれは昔の美姫の嘆きさ
通りすがりの鴉が啼いた

二度と戻らぬ恋人を
待って待ち侘び泣いているのさ


星のない夜に
白々と光る
冷たい骨

要らぬ熱を捨てた白さが
夜の帳に突き刺さる

あれは昔の騎士の名残さ
夜さり歩きの黒猫が云う

二度と逢われぬ恋人を
乞うて焦がれて泣いているのさ


鴉が啄ばむその骨の
黒猫が齧るその骨の

行方は誰も知らぬまま

月も星もない夜のこと

つぬじかぜのクースツヌ

いたずら好きの
小さな風は
つむじ風にもなれない
小さな竜クースツヌ

巻き上がるには
弱すぎて
吹き飛ばすには
小さくて

赤子の巻き毛を
揺らしてみたり
光る埃を
散らすだけ

小さな竜のクースツヌ
ある日どうにも
我慢がならず
大海原へ出て行った

照らす陽射しに
揺らいでみたり
寄せる波間に
沈んでみたり
つぬじかぜには
世界は手ごわい

ある夜とうとう
海の中

おやおやこれはお珍しいと
珊瑚の仙女が笑って言えば

これは遠いところの縁者であると
海馬の賢者が微笑んだ

歓迎を受けたクースツヌ
海の底にて日々過ごす

やはりつむじ風は起こせず
つぬじのままの竜だけど

月夜の卵を
漂わせたり
光る鱗を
撫でたり出来る

小さな竜のクースツヌ
時々海の向こうを思うけど
いつか大きくなる日まで
世界を廻れるその日まで

海の仲間の世界にそよぐ

あと幾夜

夢を見ない

目覚めたら

すり抜けてしまう

熱帯夜の

涼風のように

夢を見たい

目覚めても

余韻の残る

飛び立った

羽音のように

そして十夜

集めて

集めて

夜露のように

夢の波間

時々怖くなる
この幸せは夢なのだ
この毎日は嘘なのだ
目を覚ます日が
きっと来るのだと

大好きな歌を聴いても
美味しい料理を食べても
探していた本があっても
恋人が隣にいても

手が離れたら消えてしまう

きっと
きっと

わかっていながら
眠りにしがみつくのは
愚かしいことだろうか

いつか目を覚ますまで
泡沫の弾ける音も
夢うつつの朝日の色も
冷えていく温もりも

気づかぬ振りで目を閉じて
すがりつくのは
愚かしいことだろうか

わかっていてもなお
今はまだ
幸せな夢の波間を
たゆたっている

完未完

終わらなかったお話は

一体どこにいるの

綴られなかった囁きは

一体どこに行くの

誰か知ってる?


終わってしまったお話は

一体なにになるの

刻んでしまった呟きは

一体なにをするの

誰か分かる?



そこにある

終わっていないお話の

そこにある

終わってしまったお話の

誰か知ってる?

続きを知ってる?


(2007-06-25)

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秘密の少年

秘密の鍵を開けて
入っておいで
手入れを忘れた
茂みの中で
待っているから

錆びた鳥篭と
澱んだ池の傍
蔓薔薇の棘の中に
僕を探して


静かな庭を抜けて
逢いにおいで
歌を忘れた
小鳥達と
待っているから

崩れた四阿と
涸れた井戸の底
昼間の月光の中に
僕を探して


記憶の隙を縫って
ここにおいで
咲くに任せた
花の香りと
待っているから

もがれた羽と
動かぬ微笑み
裏庭に眠る
僕を探して


(2007-06-19)

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君へ

君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君を思い出しては
呼びかける

君は元気ですか

どんなものも
どんなひとも
君を忘れるには
足りなかった

君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君を思い出すなんて
嘘だけれど

君は元気ですか

どんなものも
どんなひとも
君を不意に思い出させる
ことがあるんだ

君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君の答えはきっと
返ってこないけど

元気ならいいんだ

おひさまふとん

おひさまふとん

ふかふかで

ほかほかだ

おひさまふとん

ふわふわで

きもちいい

おひさまふとん

きもちいいけど

ねぐるしい

少年の日の思い出

遠い日に見た夢が
癒えないままに
僕は大人になった

夏の日の潮騒が
胸の傷に沁みて
泣きそうな僕の砂浜は遠い

駆け出した僕の
擦り切れたサンダルの底に
刺さっていた淡い薄桃色

いつの間にかできた青痣
子供じみた感傷の色も
やがて色褪せてなくなる

砕けた貝の欠片
滲んだ葉書の言葉
夏風に揺れる風鈴のささやき

どこへ行ってしまった
灼熱の太陽と情熱に負けない
あの少年の日々よ

遠い日に見た夢が
癒えないままに
僕は夏を見てた

自由と涙

つないだこの手を離したら
もう泣いてもいいですか

温もり冷ました掌で
顔を覆っていいですか

だからお願いその隙に
どうかここから立ち去って

あなたがくれた花言葉
そっとささやいた星の唄

この両腕で抱きしめて
胸に仕舞ってしまうから

だからお願いその暇に
どうかここから出て行って

流した涙が乾いたら
扉を開けていきましょう

自由に羽ばたくこの腕で
青いお空を目指しましょう

だからお願いその腕で
どうか私を追わないで

ノスタルジック・ラムネ

僕ときみの夏は
あのラムネ壜の中
音を立ててはじけてた

急ぎ足のままで
駆けて行った夏空
青緑の壜の向こう

追いかけた僕らは
ビー玉に弾かれて
ゆっくり楽しむことを覚えたね


僕ときみの海は
あのラムネ壜の底
揺れるように沈んでた

きみの肌を照らす
青い海の陽射し
見上げてた波の向こう

漂った僕らは
泡沫に運ばれて
くすぐったげに笑ったね


僕ときみの恋は
あのラムネ壜の中
もどかしげにじれていた

届きそうで取れない
秘められていた想い
唇かすめて逃げる

困り果てた僕らは
割りたい衝動を堪え
密やかに飲み干した


僕ときみの夏は
あのラムネ壜の中
胸の奥底深く

ときおり音を立てる


(2007-06-15)

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安請け合い 

ご希望はなんだい

それは難題

お安いもんだい

いやいや問題

早起き何文

そいつは難問

何でもかんでも

出来るさ勘でも

ご用はなんかい

そいつは難解

いやいや簡単

言わせる感嘆

解決問題

どんなもんだい


(2007-06-07)

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パスワード

パスワードを探そう
この扉を開けるための
隠された言葉を
探しにいこう

見えない地図を頼りに
呪文を唱えよう
どれか一つくらい
当たるかもしれない

暗号めいている
秘密の言葉はどこに
君の街の数か
それとも夢の色か


パスワードを探そう
この世界を開くための
秘められた言葉を
探しにいこう

昔の歌を頼りに
呪文を囁こう
どれか一つくらい
当たるかもしれない

謎解きめいている
内緒の言葉はどこに
空の星の数か
それとも風の色か


パスワードを探そう
この私を招くための
逃げ去った言葉を
つかまえにいこう


(2007-06-06)

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想い

誰も見なくても

誰も知らなくても

多分私はここにいる

きっと私はここにある

この心の動くまま

雨の匂い

雨の匂い

埃っぽい日向でぬるんだ水の匂い

日に晒された道路の蒸発した熱の匂い

勢い良く飲み込む緑が吐く吐息の匂い

闇をわたって届く涼しい夜の匂い

驟雨が齎した小さな粒子の雫の匂い


雨の匂い

私に満ちる

スツールに捨つ

薄暗い灯りの中で
ギムレットを飲み干した
あなたがとても好きだった
強いお酒を飲み干した

口を開かぬバーテンと
時を閉ざしたジャズの中
隣に座った面影が
ジンの薫りを漂わす

せめて今宵はあなたと二人
ギムレットに酔いましょう
影も朧な灯りの下で
夢とお酒に酔いましょう

そして最後にあなたを一人
置き去りにして店を出る
今はもうないあなたの影を
店のスツールに置いていく

そこにあるものを

そこにあるものを
あると言うことが出来ない

手の届かなかった


そこにあるものを
あると信じることが出来ない

毀れ果ててしまった


そこにあるものを
あると認めることが出来ない

がんじがらめになった
プライド

目に見えないものを
手に取れないものを

感じることが出来たのに

形なすことが出来なかった

そこにあるものを
あると知ることが出来たら

それを
この胸に抱けるだろうか

クスリを失くす

私の精神安定剤はどこですか

いらいらします

震えます

火照ります

動悸がします


私の睡眠導入剤はどこですか

むかむかします

目が冴えます

乱れます

涙ぐみます


クスリを失くしてしまったら

宙ぶらりんの不安なまま


いいえ

いいえ

クスリなんてはなから失かった


ならば

ならば

己の力で取り戻そう

明日を待ちつつ眠れるよう


それでも

泣きたくなる夜ならば


誰か腕を貸してください

私を優しく撫でてください

あふれるほどの

要らないものを
要らないと言い切れたら
要らないものを
否応なしに捨てられたら
今のように
息苦しくないのに

いつの日か
要るようになるかもと
今もまだ
言い聞かせてる


言えないことを
言ってしまえるとしたら
言いたいことを
いつでも口に出来たなら
今ほどには
苛立たないのに

いつの日か
言わずに良かったと
今はまだ
言いくるめてる


忙しい振りして
いつもよりも
急ぎ足で過ぎる
偽りの日々

要らないものも
言えないものも
いちいち確認したくないまま

いつの間にだか
色褪せてしまう


いつの日か

要るんだと
言えるんだと

今はまだ
癒えない傷を隠して


(2007-06-06)

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その日まで 

あの時

違う選択をした私が

今どうしているのか

確かめる術がないから

生きていられる


あの時

ああすれば良かったのかもと

思ったんだとしても

答えは分かったりしないから

生きていられる


選んだ道の正しさを

選んだ道の過ちを

決め付けられたりしないから

今もまだ

生きていられる


その時

生きて生き続けた私が

これは間違いじゃなかったと

言える日が来るまで

生きていく


(2007-06-05)

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ドールハウスプリヴェ

小さなものが好き

小さなお部屋に
小さな家具を並べ
小さなスイーツを

小さなタンスには
小さな洋服を

小さな出窓には
小さな鉢植えを


小さなものが好き

小さなお庭に
小さな木々を植えて
小さな鳥を添えて

小さな花壇には
小さな蔓薔薇を

小さな門扉には
小さな昼寝猫


小さなものが好き
掌に乗るほどの

小さなものが好き
指先に乗るほどの


小さな我が家には
小さなあなたと
小さなあたしを

小さな青空に
小さな綿雲を

小さな夜空には
小さな星屑を


ああ

でもどうしよう

愛だけが大きくて
この家に入らない

行け

もう駄目なんじゃないか

もう無理なんじゃないか

そう思ったところがスタート

限界は

自分で決めちゃ駄目なんだ

微酔

絡め取られてしまう
恐ろしいほどの酩酊感
掴み取られてしまう
抗えないほどの高揚感

世界がゆっくりになってしまう
一秒を待てなくて
早鐘を打ってしまう

連れ去られてしまう
面白いほどの浮遊感
攫われていってしまう
戻れないほどの虚脱感

世界が分離してしまう
一秒を指すごとに
全てがほどけてしまう


毀れていってしまう
立てなくなるほどに
崩れていってしまう
動けなくなるほどに

だからほどほどに

約束

僕たちの時間は
薄いクリスタルの宮殿の中
手を触れたら毀れてしまう
儚い華やかな迷宮の中

だから
遠くから眺めていて

僕たちの物語は
僕たちで進めていく

遠い夏の思い出

色褪せた紫陽花が
真夏の太陽に照らされて
乾いた地面に
透き通る影を落とす

すべてを包んだものは
重たげに揺れる空気
呼吸も止まるような
午後の街を彷徨う

太陽に良く似た
まばゆい向日葵に
見え隠れしながら消えた
遠い日の少女

草いきれの野原
駆け抜けていった
幼い背中の二人
森へと呑み込まれてく

緑の光が零れる
静寂と喧騒の木立
清涼な風が抜けて
少女の髪をなぶる

あのころの二人に
夏は降り注いだ
暑いばかりではない
夏を降り注いだ

路地の片隅で

打ち捨てられた冷蔵庫の中

凍り付いてた記憶が溶ける

開けて取り出す者などなくて

緩んで蕩けて腐って落ちる

扉に貼られたメモも剥がれて

開け閉てしていた手垢も薄れ

かつて匂った夕餉の記憶も

在ったことさえ定かにあらず

打ち捨てられた冷蔵庫の中

凍り付いてた記憶が溶ける

不意の拍子に扉が開けど

もはや誰にも糧にはならぬ


(2007-06-04)

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雨の夜

もしも私が動かなくなったら
捨ててください
この雨の中に
屠ってください
この夜の中に

冷たい雨に打たれて
私は凍えていくでしょう
私は錆びていくでしょう

見えない夜に抱かれて
私は崩れていくでしょう
私は壊れていくでしょう

もしも私が動かなくなったら
行ってください
この雨の中を
去ってください
この夜の中を

冷たい雨の音に
私の声を聞いても
私の吐息を聴いても

見えない夜の中に
私の姿を見ても
私の涙を知っても

もしも私が動かなくなっても
それは幻だよと
伝えてあげます

だから

もしも私が動かなくなったら
何も言わずに
この雨の中で
別れて下さい
この夜のように


(2007-06-01)

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RUN

走れ

もっともっと

明日が見える

その先まで


見えそうにないのなら

もっと走れ

浮くほどの痩躯

彼はとても細いので
彼はとても軽いので
とうとう空に浮きました

腕がとても長いので
足もとても長いので
空気を掻いて進みます

地上の彼女に手を振って
行って来ますと言いました

地上の彼女は空見上げ
どこまで行くのと訊きました

風の吹くまま
流れるままに
どこへ行くのか分からない

そこで彼女は手を振って
待っているわと言いました

風に吹かれて西東
荒らしに揉まれ北南

彼はとても軽いけど
空でさらに軽くなる
ぐるりと星を廻る頃
身体はいつしか星の外
これでは戻るに戻れない

彼はとても細いので
彼はとても軽いので
とうとう星になりました



瞳を開けたら恋人が
両手の皿を差し出した
どこにも飛んでいかぬよう
さあさあどうぞ召し上がれ

保護と破壊と思惑と

大切にするとか

守ってみせるとか

どんなに誓ってみても


壊しているとか

思い上がっているとか

どんなに勇んでみても


きっとそんなものは

痛くも痒くもない


きっとそんなものは

すべて己のためなのだ

己が生きていくためなのだ


この星は

守らなくても

この星のまま


この星は

汚れたとしても

この星のまま


生きていくのだ

この星のまま

海辺の微睡み

太陽が空を渡る
光の筋が見える
落ちてくる粒子は
砕け散って輝く

南風が海を渡る
吹き寄せる微熱に
遠い国の花の
甘い香りが漂う

潮騒が夢を渡る
寄せて返す歌声
零れ落ちる白砂に
時の囁きが積もる

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