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月のない夜に
冴え冴えと光る
白い骨

しっとりと浴びた夜露は
乾いた骨を軋ませる

あれは昔の美姫の嘆きさ
通りすがりの鴉が啼いた

二度と戻らぬ恋人を
待って待ち侘び泣いているのさ


星のない夜に
白々と光る
冷たい骨

要らぬ熱を捨てた白さが
夜の帳に突き刺さる

あれは昔の騎士の名残さ
夜さり歩きの黒猫が云う

二度と逢われぬ恋人を
乞うて焦がれて泣いているのさ


鴉が啄ばむその骨の
黒猫が齧るその骨の

行方は誰も知らぬまま

月も星もない夜のこと
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2008.07.31 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
いたずら好きの
小さな風は
つむじ風にもなれない
小さな竜クースツヌ

巻き上がるには
弱すぎて
吹き飛ばすには
小さくて

赤子の巻き毛を
揺らしてみたり
光る埃を
散らすだけ

小さな竜のクースツヌ
ある日どうにも
我慢がならず
大海原へ出て行った

照らす陽射しに
揺らいでみたり
寄せる波間に
沈んでみたり
つぬじかぜには
世界は手ごわい

ある夜とうとう
海の中

おやおやこれはお珍しいと
珊瑚の仙女が笑って言えば

これは遠いところの縁者であると
海馬の賢者が微笑んだ

歓迎を受けたクースツヌ
海の底にて日々過ごす

やはりつむじ風は起こせず
つぬじのままの竜だけど

月夜の卵を
漂わせたり
光る鱗を
撫でたり出来る

小さな竜のクースツヌ
時々海の向こうを思うけど
いつか大きくなる日まで
世界を廻れるその日まで

海の仲間の世界にそよぐ
2008.07.30 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
夢を見ない

目覚めたら

すり抜けてしまう

熱帯夜の

涼風のように

夢を見たい

目覚めても

余韻の残る

飛び立った

羽音のように

そして十夜

集めて

集めて

夜露のように
2008.07.29 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
時々怖くなる
この幸せは夢なのだ
この毎日は嘘なのだ
目を覚ます日が
きっと来るのだと

大好きな歌を聴いても
美味しい料理を食べても
探していた本があっても
恋人が隣にいても

手が離れたら消えてしまう

きっと
きっと

わかっていながら
眠りにしがみつくのは
愚かしいことだろうか

いつか目を覚ますまで
泡沫の弾ける音も
夢うつつの朝日の色も
冷えていく温もりも

気づかぬ振りで目を閉じて
すがりつくのは
愚かしいことだろうか

わかっていてもなお
今はまだ
幸せな夢の波間を
たゆたっている
2008.07.28 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
終わらなかったお話は

一体どこにいるの

綴られなかった囁きは

一体どこに行くの

誰か知ってる?


終わってしまったお話は

一体なにになるの

刻んでしまった呟きは

一体なにをするの

誰か分かる?



そこにある

終わっていないお話の

そこにある

終わってしまったお話の

誰か知ってる?

続きを知ってる?


(2007-06-25)
2008.07.27 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
秘密の鍵を開けて
入っておいで
手入れを忘れた
茂みの中で
待っているから

錆びた鳥篭と
澱んだ池の傍
蔓薔薇の棘の中に
僕を探して


静かな庭を抜けて
逢いにおいで
歌を忘れた
小鳥達と
待っているから

崩れた四阿と
涸れた井戸の底
昼間の月光の中に
僕を探して


記憶の隙を縫って
ここにおいで
咲くに任せた
花の香りと
待っているから

もがれた羽と
動かぬ微笑み
裏庭に眠る
僕を探して


(2007-06-19)
2008.07.26 Sat l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君を思い出しては
呼びかける

君は元気ですか

どんなものも
どんなひとも
君を忘れるには
足りなかった

君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君を思い出すなんて
嘘だけれど

君は元気ですか

どんなものも
どんなひとも
君を不意に思い出させる
ことがあるんだ

君は元気ですか

どこにいても
どんなときも
君の答えはきっと
返ってこないけど

元気ならいいんだ
2008.07.25 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
おひさまふとん

ふかふかで

ほかほかだ

おひさまふとん

ふわふわで

きもちいい

おひさまふとん

きもちいいけど

ねぐるしい
2008.07.24 Thu l 日々の罅 l コメント (0) トラックバック (0) l top
遠い日に見た夢が
癒えないままに
僕は大人になった

夏の日の潮騒が
胸の傷に沁みて
泣きそうな僕の砂浜は遠い

駆け出した僕の
擦り切れたサンダルの底に
刺さっていた淡い薄桃色

いつの間にかできた青痣
子供じみた感傷の色も
やがて色褪せてなくなる

砕けた貝の欠片
滲んだ葉書の言葉
夏風に揺れる風鈴のささやき

どこへ行ってしまった
灼熱の太陽と情熱に負けない
あの少年の日々よ

遠い日に見た夢が
癒えないままに
僕は夏を見てた
2008.07.23 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
つないだこの手を離したら
もう泣いてもいいですか

温もり冷ました掌で
顔を覆っていいですか

だからお願いその隙に
どうかここから立ち去って

あなたがくれた花言葉
そっとささやいた星の唄

この両腕で抱きしめて
胸に仕舞ってしまうから

だからお願いその暇に
どうかここから出て行って

流した涙が乾いたら
扉を開けていきましょう

自由に羽ばたくこの腕で
青いお空を目指しましょう

だからお願いその腕で
どうか私を追わないで
2008.07.22 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
僕ときみの夏は
あのラムネ壜の中
音を立ててはじけてた

急ぎ足のままで
駆けて行った夏空
青緑の壜の向こう

追いかけた僕らは
ビー玉に弾かれて
ゆっくり楽しむことを覚えたね


僕ときみの海は
あのラムネ壜の底
揺れるように沈んでた

きみの肌を照らす
青い海の陽射し
見上げてた波の向こう

漂った僕らは
泡沫に運ばれて
くすぐったげに笑ったね


僕ときみの恋は
あのラムネ壜の中
もどかしげにじれていた

届きそうで取れない
秘められていた想い
唇かすめて逃げる

困り果てた僕らは
割りたい衝動を堪え
密やかに飲み干した


僕ときみの夏は
あのラムネ壜の中
胸の奥底深く

ときおり音を立てる


(2007-06-15)
2008.07.21 Mon l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
ご希望はなんだい

それは難題

お安いもんだい

いやいや問題

早起き何文

そいつは難問

何でもかんでも

出来るさ勘でも

ご用はなんかい

そいつは難解

いやいや簡単

言わせる感嘆

解決問題

どんなもんだい


(2007-06-07)
2008.07.20 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
パスワードを探そう
この扉を開けるための
隠された言葉を
探しにいこう

見えない地図を頼りに
呪文を唱えよう
どれか一つくらい
当たるかもしれない

暗号めいている
秘密の言葉はどこに
君の街の数か
それとも夢の色か


パスワードを探そう
この世界を開くための
秘められた言葉を
探しにいこう

昔の歌を頼りに
呪文を囁こう
どれか一つくらい
当たるかもしれない

謎解きめいている
内緒の言葉はどこに
空の星の数か
それとも風の色か


パスワードを探そう
この私を招くための
逃げ去った言葉を
つかまえにいこう


(2007-06-06)
2008.07.19 Sat l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
誰も見なくても

誰も知らなくても

多分私はここにいる

きっと私はここにある

この心の動くまま
2008.07.18 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
雨の匂い

埃っぽい日向でぬるんだ水の匂い

日に晒された道路の蒸発した熱の匂い

勢い良く飲み込む緑が吐く吐息の匂い

闇をわたって届く涼しい夜の匂い

驟雨が齎した小さな粒子の雫の匂い


雨の匂い

私に満ちる
2008.07.17 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
薄暗い灯りの中で
ギムレットを飲み干した
あなたがとても好きだった
強いお酒を飲み干した

口を開かぬバーテンと
時を閉ざしたジャズの中
隣に座った面影が
ジンの薫りを漂わす

せめて今宵はあなたと二人
ギムレットに酔いましょう
影も朧な灯りの下で
夢とお酒に酔いましょう

そして最後にあなたを一人
置き去りにして店を出る
今はもうないあなたの影を
店のスツールに置いていく
2008.07.16 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
そこにあるものを
あると言うことが出来ない

手の届かなかった


そこにあるものを
あると信じることが出来ない

毀れ果ててしまった


そこにあるものを
あると認めることが出来ない

がんじがらめになった
プライド

目に見えないものを
手に取れないものを

感じることが出来たのに

形なすことが出来なかった

そこにあるものを
あると知ることが出来たら

それを
この胸に抱けるだろうか

2008.07.15 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
私の精神安定剤はどこですか

いらいらします

震えます

火照ります

動悸がします


私の睡眠導入剤はどこですか

むかむかします

目が冴えます

乱れます

涙ぐみます


クスリを失くしてしまったら

宙ぶらりんの不安なまま


いいえ

いいえ

クスリなんてはなから失かった


ならば

ならば

己の力で取り戻そう

明日を待ちつつ眠れるよう


それでも

泣きたくなる夜ならば


誰か腕を貸してください

私を優しく撫でてください
2008.07.14 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
要らないものを
要らないと言い切れたら
要らないものを
否応なしに捨てられたら
今のように
息苦しくないのに

いつの日か
要るようになるかもと
今もまだ
言い聞かせてる


言えないことを
言ってしまえるとしたら
言いたいことを
いつでも口に出来たなら
今ほどには
苛立たないのに

いつの日か
言わずに良かったと
今はまだ
言いくるめてる


忙しい振りして
いつもよりも
急ぎ足で過ぎる
偽りの日々

要らないものも
言えないものも
いちいち確認したくないまま

いつの間にだか
色褪せてしまう


いつの日か

要るんだと
言えるんだと

今はまだ
癒えない傷を隠して


(2007-06-06)
2008.07.13 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
あの時

違う選択をした私が

今どうしているのか

確かめる術がないから

生きていられる


あの時

ああすれば良かったのかもと

思ったんだとしても

答えは分かったりしないから

生きていられる


選んだ道の正しさを

選んだ道の過ちを

決め付けられたりしないから

今もまだ

生きていられる


その時

生きて生き続けた私が

これは間違いじゃなかったと

言える日が来るまで

生きていく


(2007-06-05)
2008.07.12 Sat l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
小さなものが好き

小さなお部屋に
小さな家具を並べ
小さなスイーツを

小さなタンスには
小さな洋服を

小さな出窓には
小さな鉢植えを


小さなものが好き

小さなお庭に
小さな木々を植えて
小さな鳥を添えて

小さな花壇には
小さな蔓薔薇を

小さな門扉には
小さな昼寝猫


小さなものが好き
掌に乗るほどの

小さなものが好き
指先に乗るほどの


小さな我が家には
小さなあなたと
小さなあたしを

小さな青空に
小さな綿雲を

小さな夜空には
小さな星屑を


ああ

でもどうしよう

愛だけが大きくて
この家に入らない
2008.07.11 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
もう駄目なんじゃないか

もう無理なんじゃないか

そう思ったところがスタート

限界は

自分で決めちゃ駄目なんだ
2008.07.10 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
絡め取られてしまう
恐ろしいほどの酩酊感
掴み取られてしまう
抗えないほどの高揚感

世界がゆっくりになってしまう
一秒を待てなくて
早鐘を打ってしまう

連れ去られてしまう
面白いほどの浮遊感
攫われていってしまう
戻れないほどの虚脱感

世界が分離してしまう
一秒を指すごとに
全てがほどけてしまう


毀れていってしまう
立てなくなるほどに
崩れていってしまう
動けなくなるほどに

だからほどほどに
2008.07.09 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
僕たちの時間は
薄いクリスタルの宮殿の中
手を触れたら毀れてしまう
儚い華やかな迷宮の中

だから
遠くから眺めていて

僕たちの物語は
僕たちで進めていく
2008.07.08 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
色褪せた紫陽花が
真夏の太陽に照らされて
乾いた地面に
透き通る影を落とす

すべてを包んだものは
重たげに揺れる空気
呼吸も止まるような
午後の街を彷徨う

太陽に良く似た
まばゆい向日葵に
見え隠れしながら消えた
遠い日の少女

草いきれの野原
駆け抜けていった
幼い背中の二人
森へと呑み込まれてく

緑の光が零れる
静寂と喧騒の木立
清涼な風が抜けて
少女の髪をなぶる

あのころの二人に
夏は降り注いだ
暑いばかりではない
夏を降り注いだ

2008.07.07 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
打ち捨てられた冷蔵庫の中

凍り付いてた記憶が溶ける

開けて取り出す者などなくて

緩んで蕩けて腐って落ちる

扉に貼られたメモも剥がれて

開け閉てしていた手垢も薄れ

かつて匂った夕餉の記憶も

在ったことさえ定かにあらず

打ち捨てられた冷蔵庫の中

凍り付いてた記憶が溶ける

不意の拍子に扉が開けど

もはや誰にも糧にはならぬ


(2007-06-04)
2008.07.06 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
もしも私が動かなくなったら
捨ててください
この雨の中に
屠ってください
この夜の中に

冷たい雨に打たれて
私は凍えていくでしょう
私は錆びていくでしょう

見えない夜に抱かれて
私は崩れていくでしょう
私は壊れていくでしょう

もしも私が動かなくなったら
行ってください
この雨の中を
去ってください
この夜の中を

冷たい雨の音に
私の声を聞いても
私の吐息を聴いても

見えない夜の中に
私の姿を見ても
私の涙を知っても

もしも私が動かなくなっても
それは幻だよと
伝えてあげます

だから

もしも私が動かなくなったら
何も言わずに
この雨の中で
別れて下さい
この夜のように


(2007-06-01)
2008.07.05 Sat l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
走れ

もっともっと

明日が見える

その先まで


見えそうにないのなら

もっと走れ
2008.07.04 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
彼はとても細いので
彼はとても軽いので
とうとう空に浮きました

腕がとても長いので
足もとても長いので
空気を掻いて進みます

地上の彼女に手を振って
行って来ますと言いました

地上の彼女は空見上げ
どこまで行くのと訊きました

風の吹くまま
流れるままに
どこへ行くのか分からない

そこで彼女は手を振って
待っているわと言いました

風に吹かれて西東
荒らしに揉まれ北南

彼はとても軽いけど
空でさらに軽くなる
ぐるりと星を廻る頃
身体はいつしか星の外
これでは戻るに戻れない

彼はとても細いので
彼はとても軽いので
とうとう星になりました



瞳を開けたら恋人が
両手の皿を差し出した
どこにも飛んでいかぬよう
さあさあどうぞ召し上がれ
2008.07.03 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
大切にするとか

守ってみせるとか

どんなに誓ってみても


壊しているとか

思い上がっているとか

どんなに勇んでみても


きっとそんなものは

痛くも痒くもない


きっとそんなものは

すべて己のためなのだ

己が生きていくためなのだ


この星は

守らなくても

この星のまま


この星は

汚れたとしても

この星のまま


生きていくのだ

この星のまま
2008.07.02 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top