治りかけたかさぶた
力任せに剥ぐみたいに
滲み出した血の色で
指先を濡らすみたいに
無謀な恋をした
後に残るのは
消えない痕
探しているの
あなたを
ずっと
ずっと
生まれる前から
蒼い時間の
始まる前から
光る宇宙の
生まれる前から
求めているの
あなたを
ずっと
ずっと
逝ってもまだなお
乾いた世界が
弾けたとしても
怒る歴史の
終わりが朽ちても
どんな姿でも
どんな時代でも
あなたをずっと
待っているの
どんな距離でも
どんな違いでも
あなたをきっと
探しにいくの
星が消えても
息が絶えても
ずっと
ずっと
生まれ変わるの
ただ
あなたに出会うためだけに
愛してると
言葉にしたら
きっとすべてが
嘘になる
愛してると
答えにしたら
きっとどこにも
行かれない
それだけの
話
耳鳴りのように
潮騒のように
木擦れのように
静寂のように
喧騒のように
衣擦れのように
雨音のように
風声のように
囁星のように
どこからともなく
どこへともなく
降り注ぎ
染み渡る音
遠い遠い故郷を離れ
今朝私はお嫁に行きます
白いお肌のあの方か
赤い御髪のあの方か
それとも違う殿方か
熱い熱いお湯で磨かれ
今朝私はお嫁に行きます
あなたに良く似た息子やら
私に似てない子を育て
恋敵に良く似た娘さえ
育むはずの家を離され
今朝私はここから去ります
この身があなたと離れても
心はあなたのそばにいる
最後まできっと離れない
甘い甘い朝に呼ばれて
今朝私は味噌汁を作る
いりこと昆布で出汁を取ったら
油揚げタマネギそれからワカメ
赤味噌白味噌合わせ味噌
そしたらあなたを起こしに行こう
目覚めの朝餉を召し上がれ
掌の砂を零した
風に乗って消えた
もう元には戻せない
砂時計の中の
時間たち
どこまで行っても暑い夜は
砂漠の上に寝転がる
降り注ぐほどの星空に
ぽつんと声をかけてみる
広い夜空と白い砂漠に
声は吸われて消えていく
おおい
おおい
聞こえるかい
どこからともなく返るエコーは
砂と風と砕ける星の
囁き声に紛れて届く
おおい
おおい
生きてるかい
どこまで行っても暑い夜には
砂と風と煌めく星の
夜の帳に包まり眠る
朝が来るまで
独りで眠る
水を出しっぱなしにしない
流れていく水の中に
朝の光が消えていく
電気を点けっぱなしにしない
照らされた吐息の中に
要らぬ熱が生まれてく
極端に温度を変えない
変わりゆく自然の中に
変化を感じ取るために
要らぬものは貰わない
捨てていくだけのものの中に
使われていた命が嘆く
すべてのことに感謝を
己のみで生きるにあらず
人間のみで生きるにあらず
生きていることは奇跡です
どんなに悲しいことがあっても
一生悔やむことが起きても
生きているだけで奇跡です
取り返しのつかないことがあっても
失ってしまったものがあっても
あなたがそこに生きているだけで
奇跡なのです
今という時にあなたがいるということ
未来という時間に希望を持てるということ
今日が最悪であったとしても
いつかいい日が来ると信じてみることが出来るということ
だから
生きてください
私のために
誰かのために
あなたのために
秘密の夜気が明けて
秘密の鍵を開けたら
秘密の愛をあげるよ
秘密の窓を開いて
秘密の角を見ないで
秘密の鳩を未来へ
秘密の公園に満ちた
秘密の声を聞いたら
秘密の方へおいでよ
秘密の恋をしたなら
秘密の故意を従え
秘密のを想いしたためて
たった一滴
それだけで
世界が変わる
そんな雫はきっと
どこにだってあるけど
僕の世界を変えた
ほんの一滴
それは
あの日の君の
ほころぶ笑顔なんだ
すべてが厭になって
誰も味方がいないとき
日々に疲れ果てて
孤独に慄いてしまったとき
思い出して
君だけは君を
見捨ててはいけないのだと
君だけでも君を
信じていなくてはいけないのだと
君だけが君の
進む道を選べるのだと
だけど
戻っておいで
そっちじゃない
君はまだ
君の未来を信じていい
だから
戻っておいで
そっちじゃない
ありがとう
大好き
嬉しいよ
大丈夫
愛してる
可愛いね
美味しいよ
楽しいね
素敵だよ
たった一言
たった一秒
それで世界は
変わるから
誰も信じてない
誰も愛してない
そんなあなたが微笑む
全てを凍らせて
全てを眠らせて
滴り落ちる月に
ただ一人口ずさむ
遠い記憶の隅の
人だった頃の痛み
もはや指先にさえ
残っていないけれど
誰のぬくもりも
掴み損ねて
ただ笑う
緋い瞳は
涸れ果てた泉の色
あたしの中には
いつも誰かがいて
歌を歌ったり
夢を紡いだりしてる
見たこともないような花や
聞いたこともないような国や
聴こえるはずのない声や
想像もつかない未来が
生まれていくのが分かる
あたしの中には
いつも誰かがいて
いくつもの世界を
時折教えてくれる
道で見かけた花や
見飽きるほどの日常や
聴き慣れている言葉や
刻んできた歴史が
彩りを添えるのが分かる
あたしの中には
いつも誰かがいて
あたしの知る世界で
時折花を咲かす
血に餓えたものたちに
今日は哀しい雨が降る
寒さに凍えたものたちが
暖を求めて傷つける
熱い血潮の雨が降る
知に飢えたものたちに
今日は正しい雨が降る
頭脳の渇いたものたちが
潤い求めて気付いてく
遍く知悉の雨が降る
地に植えたものたちに
今日は優しい雨が降る
ただ生きんとするものたちが
明日を求めて築いてく
今日の地質に雨が降る
キリンになって
この街を見下ろそう
なんだこんなもんかと
思ったよりちっぽけだなと
首を振って
草原を目指すんだ
ゾウになって
この街を震わそう
なんだこんなもんかと
道行く人の憂鬱を
踏み潰して
夕焼けを目指すんだ
フクロウになって
この街を飛び回ろう
なんだこんなもんかと
星の方がずっといいやと
灯り啄ばんで
深い森を目指すんだ
クジラになって
この街を水浸し
なんだこんなもんかと
狭苦しい道を叩き
潮吹いて
大海を目指すんだ
シロクマになって
この街を押し潰そう
なんだこんなもんかと
電柱をへし折って
混じりけない
氷原を目指すんだ
ニンゲンになって
この街を突き進む
そうさこんなもんさと
ポケットに手を入れて
知らん顔で
どこまでも目指すんだ
ぐるり
ぐるり
巡り巡って月が昇る
どろり
どろり
巡り巡って月が浮かぶ
赤い
紅い
夜に滴る孤独の月よ
昏い
喰らい
夢にまみれる蠱惑の月夜
ぐるり
ぐるり
廻り廻って月が満ちる
どろり
どろり
廻り廻って月が濡れる
かちこちと秒針が泣く
ぱたぱたと雨粒が呼ぶ
うぉんうぉんとファンが踊る
みしみしと壁が呟く
かたかたとキーボードが唄う
きいきいと椅子が嘆く
ちらちらと蛍光灯が惑わして
しらじらと夜が明ける
しち面倒くさい恋をして
七転八倒繰り返してた
始終悔やんだ日々だった
質草にもならぬ想い出は
質屋だってもう見向きもしない
四重苦以上の日々だった
名無しの二人の道程ならば
斜めに走って消えていく
始終眩んだ日々だった
七晩寝ずに考える
死地に立つなら同じこと
四十九日を待たずして
あなたを連れて行きましょう