紫水晶咲き誇る
真珠の珠をちりばめて
蛋白石は匂い立つ
金剛石を抱きながら
紅玉石を啄ばんで
緑柱石が歌唄う
淡く紫陽花咲き誇る
霧雨の珠をちりばめて
真白い百合は匂い立つ
天の涙を抱きながら
甘く赤い実を啄ばんで
小鳥はほがらに歌唄う
生とは何か
生きていくとは何か
子を為すことか
繁栄の為か
連綿と続く系図を
おのれが途切れさせぬためか
子を為して
死する生物
それが自然の理か
生とはなんだ
生きていくとはなんだ
絶えんとする種の
生とはなんだ
そうではない種の
生とはなんだ
分からないから
生きているのか
分からなくとも
生きていくのか
そもそもその疑に
意味はあるのか
そもそも答えは
存在するのか
生とは何か
生きていくとは何か
それでも世界は
生きていくのか
ごろごろと
どろどろと
唸りを上げる
空が鳴く
ぴかぴかと
ぎらぎらと
光が走る
空を裂く
毛布をかぶって
震えてた
ちいさいあたしは
家の中
ざあざあと
ごうごうと
世界が揺れる
空を割る
酒を片手に
空を見る
オトナのあたしは
ほほえんで
ちいさなあたしに
声かける
怖くはないよ
出ておいで
あたしがついてて
あげるから
かみなりさまが
遠くまで
去っていくまで
いてあげる
或いはアンタが
眠るまで
夢の中へと
帰るまで
雨や雪や氷は
ただの水となって
ただの流れとなって
その地を駆けた
時に乾きつつ
時に溢れつつ
低きを求めて
その地を駆けた
鳥が集い
獣が寄って
命が巡る
草が茂り
木々が生えて
緑が満ちる
やがてそれは川と呼ばれ
やがてそこは岸と呼ばれた
そう名付けたものが
岸辺に集い
住み着いた
草木を育て作物と呼び
獣を馴らして家畜と呼んだ
たくさんの血を流し
たくさんの争いを生んで
それらの多くを川に流した
たくさんの血を交わし
たくさんの子を産んで
それらの多くを岸で育てた
雨や雪は氷は
ただの水であり
ただの流れとして
その地を駆けた
時に乾きつつ
時に溢れつつ
多く潤しながら
その地を駆けた
自由に奔放に
あるがままに
その地を駆けた
やがてそれは固められて
やがてそこは固定となった
そう仕向けたものを
ただの水の流れは
ただ静かに受け入れた
その水底で爪を研ぎ
その漣で咆哮を消し
いつか竜となる日まで
やがて再び吠えるまで
岸辺の歴史はそうして
今日も流れに刻まれていく
夕焼け空を横切って
飛行機雲が伸びていく
あれはひとつの
ひとつの川です
夢のほとりで
待ってます
星月の夜に瞬いて
光る機体が流れてく
あれもひとつの
ひとつの星です
小さな願いを
待ってます
高くて蒼い空の上
音も立てずに飛んでいく
あれはひとつの
ひとつの船です
明日への路を
知ってます
全てが一瞬の夢だった
あとには何も残らない
ただ
星だけが廻っている
もう誰もいない
星だけが
真夏の果実
滴り落ちる
甘い蜜に
唇濡らす
たわわに揺れる
魅惑の果実
光を弾いて
接吻を待つ
色鮮やかな
あなたの果実
僕を誘って
侵略を待つ
真夏の果実
しどけに潤む
白い歯を立て
あなたを喰らう
修行が足りない
ささいなことで
いらつくなんて
全然足りない
もういい大人なのに
居ると思うから間違いだ
在ると思うからなおいけない
初めから無いものと
そう思っていれば
そう諦められるなら
修行が足りない
こんなことなんかで
ひりつくなんて
全然足りない
いい加減大人なのに
罅割れた時計が
血塗られた過去で
止まる夜には
気をつけて
眠りに就いていた
亡者達が起き上がり
枯れた薔薇を
持ってくる
蒼褪めた花びらに
偽りの接吻を落とそう
立ち消えの悲鳴に
朽ちた鐘が響く
涸れ井戸の中に
落ちた骨が濡れる
星無き闇を見上げ
零れ落ちる溜め息が錆びる
新しい夜明けを乞うて
瑞々しい螺子を捜す
亡者達が近付く
三日月の鎌を持って
逆廻りの時計が
屠られた過去で
止まる夜には
気をつけて
怖いんだ
あの喉を切り裂きそうな感じが
怖いんだ
あの穢れを拒む白さが
ボタンを一つ留めるたびに
首を絞められていくカウントダウンが聞こえる
袖に腕を通すたびに
忙しい一日の始まる悪寒がする
怖いんだ
あの糊の効いた襟元が
怖いんだ
皺一つない隙のなさが
本当だよ
怖いんだ
でも本当に怖いのは
クリーニングのタダ券なんだ
夕暮れが遠くなって
空が輝きを残す
白い綿毛野原を
柔らかな風が駆けた
ほらあそこにいるよ
隣の僕が囁く
僕は目を凝らして
僕の指先を追った
綿毛舞う風の中
駄目だ見えないんだ
隣の僕に囁く
大人になったんだね
小さな僕が呟く
僕と空を見上げて
でも君は見える
夕暮れの空や
軽やかな綿毛を
そう僕は見える
太陽に架かる虹や
道端の小花を
ほらあそこにいるよ
小さな僕が笑った
僕はまばたきを一つ
僕が見たものを見つけた
白い綿毛野原で
地球は本当に廻っているのか
世界は本当に丸いのか
夜空の星は本当に遠いのか
海の果ては本当に陸地なのか
時間の速さは一定なのか
永遠はどこかに存在するのか
自然は本当に毀れるものか
生きているとはどういうことか
心は一体どこにあるのか
生き終えたならどこへ行くのか
果たして本当に明日はあるのか
果たして本当に昨日はあったか
私というのは一体誰か
うん
ずっともう
知っているんだ
そこに隠れてるんだろ
うん
ずっともう
待っているんだ
そこから出てくるのを
小さな庭の片隅で
赤く滴る実をつけた
茱萸の葉陰のその一つ
そら
ずっともう
探してるんだ
君が眠った赤い実を
見たことのない草原を知ってる
ただ広い陸と空を知ってる
透明な空気の甘さや
瞼の裏に溶ける薄紫を
君の笑顔と同じくらい知ってる
君から届く手紙には
他愛のない毎日
変わらない笑顔
それから一輪の
ラワンデルの花
枕元の花束が
夢の中へと誘う
君が手紙に書かない
躓いた出来事
隠された涙
それから一言の
君の本心
だから
見たことのない草原へ行こう
ただ広い陸と空を見よう
透明な空気の甘さや
瞼の裏に溶ける薄紫を
君の笑顔とともに抱きしめに行こう
二人を包み咲く花の
夢よりも甘い場所へ
雨が降って
静かに夜を包む
この雨音はまるで
心音に似ている
いい天気だよ
出かけようよ
こんなところに
篭ってないでと
君が言う
悩んでたって
笑ってたって
同じ一日よ
もったいないと
君が言う
柔らかい五月の風や
目にも優しい若葉の色や
抜ける青さに溶ける雲雀や
甘く香ったお茶を飲んだり
他愛ないよな話をしたり
芝生の上で昼寝をしたり
いい天気だよ
外へ行こうよ
一人っきりで
篭ってないでと
君が言う
嘆いてたって
楽しんだって
同じ一日よ
楽しもうよと
君が言う
眠れぬ夜の
夢に飽いたら
ここにおいで
古老の藤が
昔を語る
この四阿に
眠れぬ夜の
時に飽いたら
ここにおいで
真暗い月が
酒を勧める
この四阿に
まやかしの四阿
夜を持て余す
人には見える
まやかしの四阿
孤が手に負えぬ
人だけ来れる
眠れぬ夜の
孤独に飽いたら
ここにおいで
見えない者も
姿を見せる
この四阿に
まやかしの四阿
優しく包む
朝が来るまで
終わってしまうのは
あっという間
手を伸ばしても
もう届かない
ああすればよかった
こうしたらよかった
そう悔やんでも
もう戻らない
幸せな恋の
終わりみたいに
夜明けの夢の
目覚めみたいに
いってしまうのは
あっという間
手を伸ばしても
もう届かない
何事も程々が肝心
腹八分目
食べ過ぎたら気持ち悪い
何事も程々が肝要
画竜点睛
天に昇ったら白紙に戻る
完璧だなんて苦しいばかり
完全だなんて押しつぶされる
本当は
まったきことがいいこともある
本当は
完了すべきことだってある
でも
何事も程々が一番
頂点制覇
あとはただただ下るだけ
さあ行こう
最高の日々が待ってる
待ってるさ
最高を作るのは
自分自身だもの
さあ行こう
最高の明日が待ってる
知ってるさ
最高に思えるのは
自分次第だもの