だめだ
もう動けない
ここまでどうやって
歩いてきたんだっけ
次に出すのは
右足?
それとも左足?
白線の上で綱渡り
気付いたら脇は
断崖絶壁
そしたらもうだめ
動けないんだ
だめだ
もう動けない
今度こそもう
動けないんだ
それでも明日は
来るかな?
それとも来ない?
声を聞かせて
耳を澄ますから
声を聞かせて
初夏の風に乗せて
歌を聴かせて
心澄ますから
そしてわたしに
愛を聴かせて
名はない花は
それでもどこかで
鮮やかに咲く
名はない川は
それでもどこかで
静かに流れる
名はない鳥は
それでもどこかで
美しく啼く
名はない森は
それでもどこかで
育みを繋ぐ
名はない星は
それでもどこかで
煌めいて燃える
名はない石は
それでもどこかで
佇んで眠る
名などなくとも
それでも全ては
確実に在る
名はない僕は
それでもここで
この時を生きる
降りておいで仔猫ちゃん
いつまでそんなとこいるの?
降りておいでよ仔猫ちゃん
そこはそんなに気楽かい?
軒並み皆を見下ろして
優位に立ってるつもりかい?
鏡も人目もない場所で
鈍感な振りする気かい?
都合の悪いことなんて
わざと素知らぬ顔をして
棚に上がったオルタナは
涼しい顔で睥睨す
だけど所詮は棚の上
外の世界は見えないよ
そうさ所詮は棚の上
いつかは降りてこなくちゃね
降りておいで仔猫ちゃん
いつまでそんなとこいるの?
降りておいでよ仔猫ちゃん
自分の姿を見てごらん
乗り物に酔ったみたいに
お酒が廻ったみたいに
風邪でも引いたみたいに
気持ち悪い
きっとこれは
地球の回転速度が
変わったに違いない
きっとこれは
地球の地軸の向きが
変わったに違いない
だからこれは
風邪じゃない
病気じゃない
強い風に吹かれて
窓辺の日記が翻る
悪戯な溜め息が
あの日の二人を開いた
風が吹けば寄り添い
雨が降れば笑った
太陽の下で眠り
月夜に語らった
強い風に吹かれて
窓辺の時間は彷徨える
若葉の薫る影が
昔の幻を見せた
幾つもの出会いと
別れていく景色
変わらぬものがあれば
消えたものも残る
強い風に吹かれた
時が混ざる窓辺で
遠く過ぎたあの日に
今日の花が降り注ぐ
どんなものも全て
重なり合ったページ
記憶は胸の中で
ひだまりへと変わる
誰か教えてください
私のあの窓辺に
花は咲いていますか
誰か教えてください
私のあの垣根に
鳥は囀っていますか
誰か教えてください
私のあの露台に
星は降っていますか
誰か教えてください
私のあの人には
愛が足りていますか
誰か教えてください
私のこの胸には
何を抱けばいいのか
誰か言ってください
私はただそれを
信じていけばいいのだと
誰も思いもしなかった
誰も予想をしなかった
そんな明日が
明日来る
誰の思いも裏切った
誰の予測も擦り抜けた
そんな明日が
明日来る
そしてまた
地球は廻る
そしてまだ
地球は廻る
多分
どんなに同じ色の
どんなにたくさんの
人の中でも
君を見つけられるのは
僕と君との間を結ぶ
赤い糸が見えるからさ
そう言ったら
きっと君は
笑い飛ばすだろう
ほんとは
僕を見つけた君が
花開くように笑うから
太陽のように笑うから
そう言ったら
きっと君は
拗ねて怒るだろうから
僕らを結ぶ赤い糸が
明るくて眩しいからさ
やっぱり僕はそう言うんだ
好きだよ
大好き
だぁいすき
なによりも
誰よりも
君のこと
好きだよ
大好き
だぁいすき
笑わないで聞いてね
君が好きで
毎日が嬉しい
君が好きで
明日が楽しみ
好きだよ
大好き
だぁいすき
自分までも
好きになる
優しい気持ちに
なれるんだ
傷なんて見えないのに
何も変わりないのに
ひりひりと痛むんです
火傷したかのように
ひりひりと痛むんです
何も違わないのに
怪我なんてしてないのに
ひりひりと
ひりひりと
痛むんです
心が
君はどこに行きたいの
君は誰に会いたいの
君は何を欲しがるの
君は何をやりたいの
ここじゃない
僕じゃない
与えられない
動き出せない
文句ばかりじゃなくて
今を見て
僕を見て
歩こうよ
君は今不安かい
君は今不満かい
君はまだ不平かい
君はまだ戻りたい
不安なら
抱きしめて
嘆きなど
投げ飛ばせ
楽しんでみようじゃないか
明日を見て
君を見て
走り出せ
飛んでいく
すべてすべて
飛んでいく
悩みも鬱も
飛んでいく
あなたも彼女も
飛んでいく
ぜんぶぜんぶ
飛んでいく
涙も愚痴も
飛んでいく
誰かも自分も
飛んでいく
みんなみんな
飛んでいけ
淡く咲いた花びらは
この雨風に散るだろう
夜に煙った花びらは
濡れた地面で光るだろう
それでも凛とあるだろう
薄紅の花びらは
春の嵐に舞うだろう
仄かに香る花びらは
かすかに揺れて誘うだろう
ことさら艶に匂うだろう
乙女の爪の先のように
薄く微笑む唇のように
波に浚われる貝のように
全てを包む雲のように
闇に浮かびし花びらは
かそけき光を放つだろう
夢に霞みし花びらは
朝の淡いに開くだろう
春を奏でて咲くだろう
僕がどうして
君を食べないか
分かるかい
毒があるからさ
僕がどうして
君のそばにいるか
分かるかい
餌が来るからさ
君に惹かれて
ふらりふらり
君に魅せられ
ひらりひらり
だから僕は
ここにいるのさ
ホントはどうして
君から離れないか
教えない
綺麗だからさ
なんでもないような街に
ほわりと霞をかけて
ほころんでいく桜
きみの笑顔を誘う
空に良く映えて
薄紅の花弁
くるりと舞い落ちて
きみのうなじをくすぐる
なんでもないような街の
どの道を歩いても
ほら魔法のように
きみの頭上に桜
私は何か間違っているかい
私は何か図に乗ってるかい
そんなことはないはずさ
当たり前のことを言ってるだけさ
初対面なら丁寧語
敬語が無理でも正しい言葉で
頼みごとなら腰は低めに
挨拶抜きで用件だけなど論外さ
私は何か間違ってるかい
私はどうも古臭いかい
そんなことはないはずさ
あるべきマナーを言ってるだけさ
親しき仲でも礼儀を持って
適度と節度は忘れずに
世迷言なら寝てから言いな
目が覚めてから言い直せ
私は何か間違ってるかい
確かに正しいばかりじゃないが
私は何か間違ってるかい
糾弾されるよな謂れがあるかい
君たちはまだ小さくて
この大海を知るには幼すぎる
それでも鰭を動かして
泳ぎ始めるんだ
時には嵐に見舞われて
渦に巻かれることもあるだろう
海底深くに逃げてもいい
力をあわせてみるのもいい
不安ストレス疲労に無駄骨
色んな敵に出会うことだってあるだろう
同じように道も色々
それを知ることも生きる術
君たちはまだか弱くて
この大海を知るには若すぎる
それでも鱗を光らせて
渡っていくんだ
世間の荒波に揉まれても
ぬるま湯の誘惑に負けそうでも
時には鱗を傷つけて
泳ぐことを知るんだ
誰もまだ大海の全貌は知らない
明日をそれを知るのは君かもしれない
だから大きく夢を見て
泳ぎ初めてごらん