ジャコランタン持って
ヒミツの路地を抜けよう
ふわりと翻る
シーツのオバケを追って
赤い月の夜道は
ヒミツの影が揺らめく
ふらりと蘇る
眠れる死者も抜け出す
呪文が響いた夜更けの
ヒミツの扉開けよう
ふるりと震わせる
闇裂く悲鳴残して
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あなたのうしろ
感じたことはない?
息を潜めて佇む
その気配
あなたのうしろ
気付いたことはない?
声を殺して哂う
その気配
あなたのうしろ
変わったことはない?
空気が重たく粘る
その気配
ほら
いま
あなたのうしろ
哀しくて哀しくて
胸が押し潰されそうだったあの日の
切なさを覚えている
悔しくて悔しくて
震えが止められなかったあの日の
憤りを覚えている
だけどもう昔の話で
胸の痛みも
煮えくるはらわたも
夢の幕越しの彼方
嬉しくて嬉しくて
月世界にいるようなあの日の
浮遊感を覚えている
可笑しくて可笑しくて
羽毛に包まれたようなあの日の
くすぐったさを覚えている
それはもう昔の話で
赤らめた頬も
声上げる笑いも
今はただ記憶の隣
だけど覚えている
あの日見た空の色のように
あまりたくさんを
求めたわけじゃない
小指の先ほどの愛情
あまりたくさんを
望んだわけじゃない
スプーン一杯ほどの安らぎ
あまりたくさんを
欲しがるわけじゃない
舞い散る花弁ほどの優しさ
あまりたくさんを
乞うたわけじゃない
一息置くほどの余裕
あまりたくさんを
願ったわけじゃない
一秒相手を考える礼儀
たくさんじゃなくてもいい
ほんの少しあれば
世界はそんな小さなもので
出来ているのだから
嫌いなものは
自分で気付こう
切りたいものは
自分で終えよう
着るべきものは
自分で決めよう
綺麗なものは
自分で探そう
岐路に立つ日は
自分で選ぼう
これはわたしの身体
蹂躙されても
これはわたしの精神
侵掠されても
これはわたしの記憶
強奪されても
これはわたしの言葉
偸盗されても
これはわたしの想い
冒瀆されても
これはわたしの未来
放擲されても
これはわたしの世界
暴虐されても
これはすべてわたし
(2006/09/29)
ふわふわのウサギ
もふもふのクマ
ふこふこのヒヨコ
ほこほこのお日様
ほかほかのお布団
ふくふくの手触り
ほわほわのピエロ
もこもこの天使
くたくたの仔猫
ぴかぴかのお日様
ふかふかのお布団
とろとろの眠り
小さいころのあたしの
大事な友達
お日様があたためた
お布団の世界に似た
包み込む友達
大きくなった今でも
大事な存在
私たちはいつのまにか
何かを失って生きている
いつのまにか消えていた時間
いつのまにか捨てていた思い出
いつのまにか解けていた絆
いつのまにか無くしていた恋
いつのまにか通り過ぎた若さ
いつのまにか溶けていた足元
目にする光景だって
いつのまにか変わっていて
新しいビルの立つ場所に
以前あったものを思い出せない
毎日通った道沿いの
老木がいつ消えたか思い出せない
私たちはいつのまにか
変化に気付かないまま生きている
哀しいことばかりではなくても
切ないことばかりではなくても
いつのまにか
変わっていくものの境目を知らない
いつのまにか重ねられた時間
いつのまにか増えていた思い出
いつのまにか深まっていた絆
いつのまにか始まっていた恋
いつのまにか手にしていた老成
いつのまにか進んでいた足元
目にする光景だって
いつのまにか変わっていて
新しい風の吹く場所の
涼しさを肌で感じたりする
毎日通る道沿いの
花々の移り変わりを感じたりする
私たちはいつのまにか
何かを受け取りながら生きているのだ
(2006/09/27)
遠い昔の恋人よ
あなたの夢を見たよ
色とりどりの花の咲く
広い野原で笑っていたよ
遠い昔の恋人よ
あなたの夢を見たよ
とうに顔さえ忘れ果て
名を呼ぶ声だけ鮮やかな
遠い昔の恋人よ
今も時折夢に見る
忘れた頃に夢に見る
遠い昔の恋人よ
いつでも夢は柔らかく
色とりどりの優しさの
沁みる余韻を残しているよ
愛を歌おう
世界中の子どものために
生まれてきてよかったと
信じてもらえるほどの
愛を歌おう
世界中の大人のために
生きていてよかったと
感じてもらえるほどの
愛を歌おう
世界中のあなたのために
生きててくれてよかったと
伝えるための歌を
ついばむようなキスをした
あの時の女の子
かすめるようなキスをした
あの時の男の子
思い出しながら私は今
毒を含んだ唇で
あなたと蕩けるキスをする
指先に触れた
幻の羽
優しいぬくもりで
風を作る
空を見上げても
飛ぶ鳥はなく
雲の切れ間から
光が注ぐ
遠い四月の
舟で見かけた
白い鳥の群れを
思い出してる
頬をかすめてく
幻の羽
優しい夢を見せ
歌を作る
空を見上げると
飛ぶ鳥は鳴く
雲の切れ間から
見下ろしてくる
窓辺の陽射しの
中で見つけた
白い月の陰で
天使が笑う
彗星のような尾を引いて
高いお空を飛んでいく
夕暮れ時の茜空
遠いお空を飛んでいく
あれはどこへと渡る船
燃え盛るような尾を引いて
雲の切れ間を飛んでいく
夕暮れ時の西の空
幻燈のように飛んでいく
あれはどなたを乗せた船
夕暮れ時の空の上
音も立てずに船が行く
夕暮れ時の日を浴びて
煌めきながら船は行く
害虫みたいなもんだ
消しても消しても
湧いて出る
煙みたいなもんだ
掴もうとしたところで
手には取れない
見るのも嫌なら
触るのも厭だ
意味なんて分からないし
意義なんて感じない
害虫の方がマシだ
好きで害を為すわけじゃない
煙の方がマシだ
活用の手立てがないわけじゃない
それなりに
役立つこともあるんだろうか
だとしても相手を間違えている
青白き
夢ばかりなり
十三夜
銀の香の
素と見紛う
雫かな
満つ月の
白く零れる
夕間暮れ
蜜月の
甘く香れる
胸に似る
月浴びて
風のまにまに
星の降る
毬(いが)を脱ぐ
まろき姿に
月映る
滴れる
甘露を受けて
杯を呑む
吾が指を
貫けてゆくなり
十三夜
好きな人がいるだけよ
好きな服を着るだけよ
好きな歌を歌うだけよ
好きな本を読むだけよ
好きな時に眠るだけ
好きな風に歩くだけ
好きなものを愛すだけ
それのどこが悪いというの
好きなものがあるだけよ
好きな気持ちがあるだけよ
足して足して
足して足して
ただ足してくだけなのに
なぜかな
躓いてしまう
足して足して
足して足して
ひたすら足してるだけなのに
どうして
間違えてしまう
使わないから
躓くのかな
遠ざかるから
間違えるかな
足して足して
足して足して
目指す数字になる日まで
とにかく
増やしていくのだ
どこへ行けばいいのかな
コンパスはぐるぐる
地図はびりびり
来た足跡も残ってない
どこを目指せばいいのかな
木々が覆って
雲が覆って
太陽も星も見えない
どこに行ったらいいのかな
どこでもいいさ
選べばいいさ
だからかえって分からない
どこに行くのがいいのかな
あたしがあたしであるということ
紡ぐ言葉があたし自身のものだということ
贈る想いがあたしの本心であるということ
笑う目元が強要されたものでないということ
流す涙をこらえるのも意思であること
好みの服を自分で選ぶということ
好きな人を心に思い描けるということ
はやる心のまま電車に乗るということ
はずむ気持ちのまま何かを始めるということ
あたしがあたしであること
ただあたしとして有ることが出来るということ
39:只有
(2006/09/26)
電線にぶら下がって
さかさまに世界を見下ろした
丸い地平線には
丸い夕日が昇る
電線に引っかかった
半分のお月様が言う
良かったらそこの君
私を揺らしてくれないか
電信柱を蹴飛ばして
身体ごとゆらゆら揺らす
ムーンサルトを決めてから
月ごと空に浮いてみる
お月様に乗っかって
寝転んで世界を見下ろした
丸い地球は
まあるく光っていた
好きじゃないと思うの
見ればイライラするし
一緒にいればウンザリ
むしろ嫌いだと思うの
なのに
君の好きな歌
耳にしたり
君の乗ってた車
目にしたり
するたび
君を思い浮かべる
君の好きそうな本
読んだ時
君の観そうな映画
見つけた時
君に教えたくなる
これっぽっちも好きじゃないよ
君のことなんて
むしろとっても大嫌いだよ
なのに
どうして笑ってるの
毒を吐いてる酷薄な台詞に
独り言みたいな打ち明けの言葉に
(2006/09/23)
今でもまだ
時々夢に見る
今でもまだ
時折影を見る
今でもまだ
時には涙する
今でもまだ
時たま思い出す
今ではもう
遠すぎて忘れた日々
空じゅうに咲いた
うろこ雲が
夕日を浴びて
満開の桜になる
たった一つ
路地を曲がる
その瞬間に
色褪せていく花
たったわずか
鮮やかな色の
その瞬間に
夢を見せる空
夕焼けに向かって帰る
車の中で
残照を見上げ
満開の笑顔になる
この秋一番の寒さが
連れてきた風の便り
嬉しくて微笑む頬に
降り注ぐ秋の陽射し
胸いっぱいの空気に
すがしい香り乗せて
世界を金色に
変える秋の小花
ネコジャラシ野原を
駆けて行った尻尾
風に揺れて揺られて
エノコログサになった
ネコジャラシ野原を
駆けて行ったあの子
秋に吹かれ吹かれて
エノコログサになった
ネコジャラシ野原で
あの子を探すならば
気ままに揺れて手招く
エノコログサをお探し
蕾が枯れる
泉が涸れる
調子も嗄れる
かれはてていく
蕾に水を
泉に水を
喉にも水を
潤いをおくれ
実りも刈れず
息吹も狩れず
他力も借れず
かれはてていく
実りの力を
息吹の力を
自力の力を
満たしておくれ
どこにでもある
ありふれたもの
誰にでもある
当たり前の日々
何気なさ過ぎて
気付かないような
何よりもなお
大事なものたち
あれから幾つも
恋をしたけど
一人の夜に
気が付いたんだ
やっぱり君を
愛してる
あれから幾つも
恋をしている
誰かの隣で
思い出すのよ
あなたとの恋の
激しさを
嫌いで別れた
恋じゃなかった
同じ過ちは
したくない
今でも君は
一人かい
嫌いで別れた
恋じゃなかった
同じ過ちは
したくない
隣で眠る
この人と
こんな静かな
一人の夜には
君の姿が
目に浮かぶ
こんな静かな
添い寝の夜には
過去の自分が
目に浮かぶ
あれから幾つも
恋をしたけど
愛する人は
君だった
あれから幾つも
恋をしている
愛の相手は
いつも今
風に感じた
季節の流れ
頬に感じた
季節の別れ
瞳に映った
季節の吐息
瞼を濡らした
季節の雫
唇を掠める
季節の調べ
首筋を撫でる
季節の揺らぎ
五感の全てが
季節を感じ
語感の全てで
季節を観じる