甘いお菓子
可笑しい話
放した小鳥
とりわけ美味な
見慣れぬ紅茶
膠着の行方
食えない相手
開いてない窓
微睡む薔薇
ばらけた意識
指揮者の不在
罪悪も彼方に
他人は甘い
スポンサーサイト
すっかり顔馴染みになった
南風が言う
そろそろ行かなくちゃ
真っ赤に酔いどれた
温度計が頷く
頭がのぼせすぎたよ
うなぎのぼりの
電力量が嘆く
脳天突き抜けちゃうよ
ご満悦の
生ビールが笑う
悪くない夏だったよ
残念顔した
カキ氷は吐息
水臭いじゃないか
ボクはアロハのシャツを脱ぎつつ
ああそうだねと
全てに答える
昨年末に参加した「年越詩祭」の流れを汲んだ、新たなる詩の祭典がありました。
色んな作品が、まるで夜店に並ぶ品々の如く、私達を惹きつけ、光っておりました。
短い期間ながら楽しませていただきました。
今はもう夢の後。
名残のように詩人たちの名前がサイト名とともに残っております。
ふらりと立ち寄って、心の赴くままに飛んでみてはいかがでしょうか。
「詩SIDE FESTA」
消しゴムが転がっていった
君の足元
気付かないだろ
消しゴムをなくした僕は
ノートを見つめ
途方に暮れる
黒板には書かれてない
テストに出ない
大事な言葉
君の足元転がっている
消しゴムなんかじゃ
消せないけど
書きっぱなしでなくて
隠してたい
人にはナイショ
君の背中に心のなか
声をかける
こっちを見てよ
転がっていった消しゴム
君の足元
見つけとくれよ
チャイムが鳴ったらさ
僕の消しゴム
届けに来て
消しそこなった
大事な言葉
見せたげるよ
かちこちと
時計の音が響く
じいじいと
ファンの音が響く
かたかたと
キーボードが叩かれ
こきこきと
首の骨が鳴る
時折窓が
みしりと鳴り
グラスの氷が
からりと溶ける
誰の声もしない
誰の声も聞こえない
静かなる音の共演
まるで空気の抜けた
自転車みたいじゃないか
無理して走って
気付けば
パンクしている
まるで螺子の外れた
オルゴールみたいじゃないか
捻ってみたって
まともには
歌えていない
まるで気の抜けた
炭酸飲料じゃないか
甘ったるいだけで
なにかしら
物足りない
まるで途方に暮れた
迷子みたいじゃないか
冒険のコンパスは
今やもう
家を指してる
まるで巧妙な
言い訳みたいじゃないか
無理なのは承知でも
決めたなら
やってみろ
飛んでごらんなさい
声がする
恐いよぅ
声が泣く
お空を御覧なさい
声が言う
銀の鳥はあんなに高く
雲を引いて飛んでいる
お前だって飛べるはず
声が促す
恐いよぅ
無理だよぅ
声が泣く
あのお空に飛ぶよりも
下に広がる大地の方が
だってこんなに近いもの
羽ばたくよりも
飛翔よりも
きっと落下が早いもの
声が泣く
飛んでごらんなさい
声が鳴く
いつまでも
そうしていては
いられない
声が鳴く
恐いよぅ
声が泣く
それから不意に
声が止む
あとには
電信柱が一つ
空を目指して立っている
瞼が重い
こういう日には
きっと
硝子が
眠っている
腫れぼったい
瞼の裏に
温まる
硝子が
埋まっている
滑らかに
眼球の上を
滑っていく
ごろごろと
違和感を残して
きっと
硝子が
眠っている
瞼を閉じて
見る夢は
硝子越しの
風景だ
つややかで
なめらかな
手の届かぬ
夢の世界
瞼が重い
こういう日には
きっと
硝子が
眠っている
瞼の裏で
眠っている
甘くて
熱い
あなたの
愛を
いつでも
痛い
イケナイ
今を
嘘さえ
倦んだ
飢えてる
内を
永遠も
笑んだ
壊死した
液を
オトナの
愚かな
汚濁に
堕とす
あらあら
いやだ
うそでしょう
ええいくやしい
おでこにぽつり
蚊のせいじゃなくて
気のせいじゃなくて
くっきりはっきり
軽度のにきび
これはちょぴり哀しいぞ
さっぱり洗って
しっとり湿して
すっきり乾かす
せめてもの抗い
それでもすぐには治らない
たったひとつでも
ちょっと大きな
つまるところ
的確に言えば
とっても目立つ
なんてことだろう
にきびのくせに
塗り薬塗っても
根強く痕が
残ってるじゃない
はりきってたの
久々のデートが
二日後に迫る
平素より綺麗と
褒められたいのに
まだ間に合うわ
三日とないから
難しいけど
目立たなくなるまで
もう少しだわ
やれやれ
ゆっくりのんびりだけど
ようやく少し消えたかも
ラインの綺麗な
リネンのワンピース
ルビーのリングと
レースのバッグ
ローズグレーのサンダルで
私の姿に見惚れて
wonderfulと褒めてくれたね
ん、万事オッケーと、心で快哉
(2006-07-29)
甘い言葉に
騙されてはいけません
そんなのは
100m先の自販機で
コーラの隣に並んでる
やすくて簡単に手に入って
しかも
骨まで溶けてしまうから
辛い言葉に
騙されてはいけません
そんなのは
山葵の効きすぎた寿司の
ネタの下に隠れてる
姿は簡単に見えなくて
しかも
鼻まで突き抜けてしまうから
なにごとも
ほどほどに
上手に摂って
美味しい人生を
(2006-07-25)
遠くの花火みたいに
夏が終わっていく
余韻だけ残して
小さいけれど
鮮やかな閃光
遅れて届く音
祭りの狂騒は
ここまでは届かない
遠くの花火みたいに
夏が薄れていく
余韻だけ残して
色とりどりに
夜空を飾る閃光
夢より遠い音
祭りの喧騒は
ここまでは聴こえない
遠くの花火みたいに
夏が遠ざかっていく
余韻だけ残して
手元で爆ぜていく
線香花火の火花
微かに響く音
祭りの終焉は
秋風が落としてく
いつでもしたいことを
口にするだけで
あなたはなにひとつ
始めたりしないね
時期が悪いだとか
やる気はあるとか
言い訳するばかりが
うまくなるね
いいかげん
自分を見つめなおしな
何がしたいんだろうって
人に聞いたところで
分からない
何が出来るんだろうって
口にしたところで
進まない
理屈や理論捏ね回して
口にするだけで
あなたはなにひとつ
身につけてないよ
人は人だとか
恥ずかしくないよとか
見栄張ってるばかりで
動かないね
いいかげん
自分を批判しな
何が分かるのだなんて
人に言ったところで
意味がない
何が偉いのだなんて
開き直ったって
進まない
いいかげん
美化した自分は捨てなよ
(2006-07-22)
壜いっぱいに
海を詰め込んだ
夏の名残の煌きと
秋の初めの切なさの
漂う波ごと
詰め込んだ
蒼く小さな壜の中
海はひたすら満ちて引く
遠く跳ねてる魚達
打ち寄せる波の白い貝
掌の上で
揺れていた
壜いっぱいに
海を詰め込んだ
夏が残したざわめきと
秋が寄越した静けさを
抱いた波ごと
詰め込んだ
キミはもう
遠い人なので
時折考えてみる
朝起きて何をするか
街中をどう進むか
どんな人といるのか
キミはもう
届かないので
時折考えてみる
泣いたりしていないか
誰かと安らいでいるか
昔を思い出したりするか
ボクももう
遠くに来たので
時折考えてみる
あの時の気持ちや
キミと過ごした時間
今キミのいる場所を
スキやキライとは
遠い場所で
時折考えてみる
手を伸ばせばそこに
あったはずのもの
ためらっている間に
波間に消えた
声をかければきっと
立ち止まった背中
言葉を捜すうちに
雑踏に消えた
追いかければたぶん
間に合ったはずの何か
戸惑っているうちに
夜の中に消えた
口にすればそこに
生まれたはずのもの
手間取っているうちに
夢とともに消えた
ぷるぷるプリン
ゆらゆら揺れて
口に入れたら
とろとろ蕩ける
くるくるクリーム
ひやひや冷やして
舌に乗せたら
とろとろ蕩けた
たらたら垂らした
フルーツソース
ぱらぱらばらした
チョコレート
お好きにどうぞ
召し上がれ
私たちは似ていて
それでどこか
反発する
磁石ほどじゃないにしても
私たちは似ていて
それでなぜか
嫌悪する
犬と猿ではないにしても
私たちは似ていて
それで時に
距離を保つ
水と油より混ざり合えども
私たちは似ていて
だから互いの
気持ちが分かる
私たちは似ていて
だから互いの
好みが分かる
私たちは似ていて
だからたまには
分かり合えてる
私たちは似ていて
けれどやはり
違う人間
だから仲良くやっていける
一振りの剣と
一冊の書物
それから僅かの路銀のみ
父はそれを俺に与え
出て行けと
扉を示した
一通りの剣技と
ひとかどの知識
それから僅かの望み
父はそれを俺に与え
さあ行けと
背中を叩いた
そして二度と
戻ってくるなと
扉を閉めた
一振りの剣には
異国の銘文
一冊の書物には
世界の不思議
それと一通の手紙
手紙の中には三つの包み
困ったときに開けよとの文
しばらく俺は考えて
三つの包みを書物に戻した
剣を振り振り
旅に出て
世界の不思議を追い求め
ある夜
俺は孤独に耐えかね
一つ目の包みを開けてみた
もう開けたのか情けない
そこには叱咤の手紙が一枚
それから僅かの路銀があった
しばらく俺は憤り
残りの包みを書物に戻した
剣で斬り裂き
旅をして
世界の全てを見んとした
ある日
俺は希望に敗れて
二つ目の包みを開けてみた
そろそろいつでも帰って来い
そこには憐憫の手紙が一枚
それから僅かの路銀があった
しばらく俺は泣き通し
最後の包みを書物に戻した
剣で拓いて
旅をして
世界の在り処を手に入れた
ある時
俺は故郷を想って
最後の包みを開けてみた
死んでもお前を愛しているよ
そこには慈愛の手紙が一枚
それから乾いた種粒があった
しばらく俺は抱きしめて
それから種を世界に植えた
ご覧これがその樹なのだ
親父はオレにそう告げて
一振りの剣と
一冊の書物
それから僅かの路銀をくれた
それと一掴みの種粒
親父はそれをオレに与え
お前の世界に植えて来い
そうして家の扉が閉まった
あたしの中で
言葉が暴れてる
外に出たいと
叫んでる
先のことなど
分からぬくせに
それでも行くと
駄々をこね
あたしの中で
言葉が疼いてる
出口を探して
渦巻いて
まるで嵐の情熱で
飛んで離れて近寄って
沸き立つ雲の
城のよに
あたしの中で
言葉が築いてく
隠れた語彙さえ
気付かされ
ほんの僅かのきっかけで
全く思わぬものになる
だけどそれでも
どれだって
あたしの中で
あたしが生まれてく
久しぶりだねと
机が言った
眠そうじゃないかと
椅子が笑った
思ったほどじゃないさと
マグカップが慰め
休みボケしてるねと
パソコンが呟く
アタシは勤勉だと
壁の時計が言い放ち
オレに水をくれと
窓際の鉢植えが嘆く
お一つどうだいと
電話が怒鳴って
素知らぬ顔で
一日が過ぎる
夕立が濡らした町
黒く光る道に
立ち上る水蒸気が
赤みを増した夕日の中
眠気のように揺れる
いつまでも夏じゃない
そう言って微笑んだ町
しっとりと沈む町を
渡っていく風が
昼間の熱気を奪う
心地よい涼しさの中で
戯れた蝉の鳴き声
けどすぐに秋にはならない
そう言って微笑んだ町
今はただゆっくり眠れと
子守唄吹き抜ける町
たとえば夏なら
たとえば
濃く張り巡らされた熱気の中の
細い糸のような涼気を感じ取れる
たとえば
乾いたアスファルトの匂いの中の
ささやかな甘さの花を感じ取れる
たとえば
眩い陽射しと陽炎の揺らぎの中の
一粒の雨粒の煌きを感じ取れる
たとえば
喧騒と怠惰の雑踏の中の
僅かな葉擦れの音を感じ取れる
それを全身で感じ取って
持てる全てで受け止める
それは全心に行き渡って
持てる全てが澄み渡る
たとえば夏なら
そうやって
(2006-07-20)
いつまでも痒い
虫刺されみたいに
あなたの中に
残っていたいわ
痒みは痛みの
小さな欠片
あなたの中で
残って痛いの
無視は出来ない
痒みに似せて
無意識でさえ
掻き毟るように
いつかは治まる
虫刺されみたいに
あなたの中に
残っていたいわ
我慢できずに
掻くといいのよ
痒みが消えても
痕を残すわ
夜を裂いて
千切れた鳴き声
雨の中を
濡れていく姿は
見えなくても
どこへ行く
生き急ぐ
打たれてもなお
行く場所がある
時を超えて
呼び交う鳴き声
闇の中で
目指す場所は
見えなくても
どこへ行く
生き急ぐ
もがいてもなお
行く場所がある
短いと
刹那だと
人は言うだろう
一概に
切ないと
人は言うだろう
どこへ行く
生き急ぐ
急いでなどいないのか
それでも
夜を裂いて
蝉が鳴く
(2006-07-20)
言いたいこと言ったら
逃げてしまえ
卑怯者かな
臆病者かな
言いたいこと言ったら
逃げてしまえ
嫌いじゃないよ
苦手じゃないよ
これ以上は
こじれたくないよ
言いたいこと言ったら
逃げてしまえ
時にはそれが
最善の方法
ここからあなたに
吐息を送りましょう
ほんの少し優しげに
ほんの少し切なげに
甘い吐息を送りましょう
夜の森を抜けて
眠る泉を越えて
月の雫に濡れて
星の光を抱いて
甘い吐息は
ほんの少し冷たくて
ほんの少し匂やかで
甘い夜風になるでしょう
ここからあなたに
吐息を送りましょう
夢の中へと誘うように
あなたのもとに届けましょう
タイムリミット近すぎて
階段駆け下りて
硝子の靴
脱げる暇もない
追いかけてくるなら
階段飛び降りて
いっそ全てを
捕まえてしまってよ
この鐘が鳴り終えれば
明日になってしまうから
あなたを待つ暇はないの
明日また会いましょう
古ぼけた地図に示された
光の道を辿って
その場所を目指すのは
俄仕立ての冒険者
ぼろぼろの地図に遺された
文字は薄く消えて
唯一つ分かるのは
始まりの場所の地名
どこを指しているか
なにが待っているか
分かりもしないものを
目指して進むのか
地図を頼りに歩き出した
冒険者が探すものは
隠された鍵の在処
散らばる暗号の謎
知り合った長老が
忘れられた歌を歌う
歌詞に秘めた手助け
飛ぶ鳥を追うように
どこが終点なのか
なにがあるというのか
分からないままなのに
目指して進んでいく
どこを目指しているか
なにを望んでいるか
分からなくてもいいんだ
この道程こそが楽しみ
知らないことは罪
知っているだけも罪
知って悪用することも罪
知って活用すること
己に良くあれと
他人にも良くあれと
そして
この生きていく世界に
このかけがえのない星に
良くあれと
学んでいくのが大事
小さい子が歩くように
幼い子が話すように
邪心ない学びを
乞い願う