君の傷
不意にキス
何も着ず
宵に死す
明日の椅子
君は居ず
日々廃す
罅は似ず
ついに秘す
対の地図
悔いは見ず
有為のミス
注いだ水
奇異に帰す
君にキス
意味に比す
逢いに期す
愛に生きず
何に生く
君を好く
信じちゃ駄目さ
人間なんて
どいつもこいつも
悪人ばかり
頼っちゃ駄目さ
人間なんて
そいつもあいつも
腹黒ばかり
ちょいと馴れ合って
秘密打ち明けりゃ
次の朝には
ダレカも知ってる
ちょいとじゃれ合って
乳繰り合えば
次の朝には
財布ごとドロン
ちょいとほだされて
ハンコを押せば
裸一丁で
通りにコロン
ちょいと前行く
冴えない親父は
爆弾仕込んで
周りごとドカン
嘆いちゃ無駄さ
人間なんて
アンタもオマエも
上っ面ばかり
怨んじゃ無駄さ
人間なんて
老若男女は
関係ないさ
しょうがないのさ
人間なんて
所詮はオイラも
人間なのさ
五分先の世界が見えたら
あたしはどこへ行くだろう
十分先の世界が見えたら
あたしはなにをするだろう
一日先の世界が見えたら
あたしはなにを思うだろう
一月先の世界が見えたら
あたしはなにを探すだろう
一年先の世界が見えたら
あたしはどれを選ぶだろう
世界の終わりの世界が見えたら
あたしは誰に会うだろう
つたえられない
たくさんの想い
えいえんに似てる
たくさんの想い
いまにも溢れる
つたわらない
たいせつな想い
えることの出来た
たいせつな想い
いつでも満ちてる
つたわってほしい
たからものの想い
えがおになりたい
よろこびあいたい
うんめいよりも速く
目を覚ましたら
いい天気
君を誘って
出かけよう
朝の光が
君の顔を
輝かせて
笑わせるよ
ほら
出かけよう
青い空の下
二人で
どこまでも
走り回る風をうけ
髪なびかせ
君はくるくる
踊りだす
朝の光が
君の指先を
跳ねるように
濡らしてく
そう
出かけよう
白い雲の下
二人で
どこまでも
使い古されていても
言い尽くされていても
手垢にまみれていたとしても
大事なことは
その中にある
贅を尽くした言葉より
趣向を極めた言葉より
難解至極な言の葉よりも
大切なことは
その中にある
ありふれているからって
ありきたりだからって
ありったけの想いを込めれば
大概のことは
それで伝わる
自分が誰だか
覚えているかい
そこに行くための呪文
忘れてないかい
間違えずに唱えたら
君はもう
異世界の住人
君であって
君じゃない
君だけれど
君じゃない
魔法も剣も
性別も名前も
君と違う
君の世界
あれも君
これも君
それも君
どれも君
だけれども
君こそが君
自分が誰だか
覚えているかい
戻るための方法
忘れてないかい
間違えずに覚えとこう
君が君
責任を負う者
なにもかも
得意なんて
無理
なにもかも
好きだなんて
無理
でも
なにもかも
出来ないなんて
無い
なにもかも
嫌いだなんて
無い
取り得が無いなんて無い
好きこそものの上手なれ
そんなこと無くても
下手の横好きでもいい
なにもかも
得意じゃなくたって
いい
なにもかも
好きじゃなくたって
いい
そう
ひとつくらい
得意なことは
ある
ひとつくらい
好きなものも
ある
不得意でもやってみてもいい
目に見えない星みたいに
人は分からなくても
輝けるものがある
遠い昔に
想っていた
あなたのこと
今ではもう
夢の彼方
顔も形も
霧の向こう
思い出せない
風に乗せて
声だけが
遠い街の
夜汽車より
もっと微かな
欠片だけが
耳に届く
幼い胸に
染み込んだ
あなたの声は
街の喧騒に
消えてく
身も心も
離れたのに
不意に訪れる
二人の記憶
声だけが
ただ
声だけが
どうしても
どうしても
どうしても
行かないと
いけないの
どこまでも
どこまでも
どこまでも
飛ばないと
いけないの
いつだって
いつだって
いつだって
生きながら
行きたいの
だからもう
だからもう
だからもう
行かないと
言わないの
不幸なのは
そのココロ
キモチの持ち方
叶わないような
夢でも
敵わないような
恋でも
逢えないような
誰かも
合わないような
誰かも
人から見れば
悲劇でも
誰もが嘲る
喜劇でも
不幸なのは
そのココロ
キモチの在りよう
それしだい
その日一日
二十四時間
目を醒まし
夢を見るまで
想い巡らそうか
ただ空が青いとか
庭の花が咲いたとか
いつもよりも寒いとか
虹の欠片が見えたとか
森で鳥が鳴いたとか
星の光が綺麗とか
吐く息が白いとか
可愛い子を見たとか
美味い茶を飲んだとか
誰かと挨拶交わしたり
お裾分けを貰ったり
面白話に笑ったり
なんでもないけど
なんだかいいような
あたりまえだけれど
しあわせなような
想い返してみて
優しくなれる
今日の一日
二十四時間
ようこそ
いらっしゃい
おや
あちらは雨でしたか
此処は黄昏
茫洋とした時刻
目を覚ます如き
雨など降りは致しません
さて
如何なる品をご所望ですか
なるほど
思い煩い事がおありですね
愛も恋も
夢も希望も
思い過ぎれば辛くなる
想いは重いに通じましょう
やがて
身動きできなくなって
押しつぶされるも
また一興
ええ
もちろん
うってつけの品が
ございますとも
これなるは
懸封と呼ばれし巻紙
雲よりも軽い綿毛を
漉いて紙となしたもの
心を占めた物事を
書き連ねたなら封をして
あとはどこへと
仕舞えば良い
心にかかった
靄も霧もすっきりと
心悩ませた物事が
雲散霧消と消えまする
ただしおひとつ
ご注意を
封をしたらばもう二度と
毛ほども掠りは致しません
封を切ったらもう二度と
心を覆って晴れません
それでも良ければ
お持ちあれ
これであなたも
ほらすっきりと
笑顔で帰っていけましょう
笑顔を保っていけましょう
あちらの世界は雨とやら
紙に綴りし墨は溶け
滲んで解けて崩れ落ち
二度と戻りはせぬだろう
己の心を占めていた
狂おしいほどの感情も
滲んで解けて崩れ落ち
二度と還りはせぬだろう
時折心がざわつけど
束の間心が騒げども
もはや
掴めはせぬだろう
おやおや
どうやら次の客
はてさて
なにをご所望か
もはや誰もいない
言葉は風に消えた
砂に埋もれた道は
灼熱の太陽へ届く
陽炎の中の夢幻は
追いかけても逃げ
伸ばしても叶わず
凍てつく夜に消え
同じ明日に現れる
もはや誰もいない
声は吸い込まれて
涙は枯れ果てても
望む手はもう無い
残像のように声を
ただその声だけを
悲しみに乾涸びる
心の上に落とせよ
現状に甘んじてる
恋愛もしていない
結婚なんて遠い話
お洒落はそこそこ
グルメもそこそこ
運動は不足気味で
睡眠も足りてない
美容と健康気にしつつ
お金がかかると躊躇する
仕事は二の次でも
ならなにが一番か
公言できるものもない
やりたいことはあっても
いったいなにがしたいか
年齢と人生と
経験と照れが混ざったり
プライドと負けん気と
図太さと小心が加わったり
結局なにがしたいか
口に出来ないまま
昨日と今日と明日
変化が無いことは承知
過去と現在と未来
展望は手の届く距離
人と較べたりしたら
負けてると言われても
振り返ってみたりしたら
怠けてると言われても
そんなに悪くない人生だと
時折日常からずれて
線路の上揺られたりしながら
空の上駆け巡ったりしながら
そんなふうに言ってみる
茜色の空
虹が架かる
吹きすぎる風の中に
夢の残滓を溶かして
一日が始まっていく
けれど
君はまだ夢の中
教えてなんかやらない
朝の始まりの秘密
そのかわり
いつか
起こしてあげる
藤樹庵の藤
藤姫は
山向こうにいる
老木の
白藤様と
恋の仲
だけども二人は
遠すぎて
春風任せに
恋文を
互いに交わして
君想う
紫薫れる
藤姫は
香気の美酒に
想い乗せ
使いの鳥に
運ばせる
山の向こうの
白藤は
小壜に入った
紫の
その香に恋を
募らせる
山の彼方の
空遠く
互いに恋を
高まらせ
たなびく雲に
飛び乗った
藤樹庵の藤
藤姫は
山の向こうの
白藤と
一夜の逢瀬を
慈しむ
隔てる距離も
厭わなく
遠いからなお
いとおしい
なればなおこそ
愛しけれ
白藤様と
藤姫は
またの逢瀬の
約束と
互いの小指を
絡めけり
高貴な姫の
紫の
大樹の裾に
ひっそりと
澄み切る白の
藤が咲く
なにをしたって
なにを言ったって
悔やまない
悔やんだって
仕方ない
怒られたって
泣かれたって
悔やまない
悔やむくらいなら
やってない
戻りたくっても
無しにしたくても
悔やまない
悔やんでみたって
戻れない
時には
不安になるけど
時には
不幸に見えるけど
悔やまない
悔やんだりしたくない
自分で決めたことならば