私なら今でも
君を想う
まだ別れは遠いように見える
ただ
感傷はもうない
時に夢見るだけ
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割った詩ならいっそ粗末でも
月見を思う松だ
和歌それはそっと追い
要素に蜜添える蔦だ
漢詩予想はもうない
そっと月に夢満つるだけ
銀色のメモリー
振り切る勢いで
飛んでいけ
上昇の速度は
ロケットみたいに
追いつけないさ
脳天でスパークして
星屑撒き散らせ
身も震えるほどの
驚きの熱さで
銀色の目盛り
振り切る勢いで
飛んでいけ
貴方に会うときは
心の中で
礼装を身にまとう
少しでも
良く見えるといい
少しでも
輝いて見えるといい
貴方と会うときは
ちょっと
よそ行きになってみる
猫かぶりとか
言わないで
風に怯える
小鳥の心みたいに
舞踏会に臨む
少女みたいに
緊張と歓喜に震えてるだけ
つらいな
いたいな
だるいな
さむいな
あたまと
こしぼね
ひざとひじ
うでともも
かぜかな
なにかな
つかれかな
としかな
なにかな
きおんかな
くすりと
ふとんと
すいぶんと
このよるが
つらさと
いたさと
だるさと
さむさを
おいやって
おいはらって
くれるといいな
どうすんのかな
これから先さ
天気はいいし
気温もいいし
お出かけ日和で
気持ちもいいし
どうすんのかな
これから僕さ
昼寝もいいし
散歩もいいし
ぽかぽか陽気で
お茶でもいいし
どうすんのかな
これでも僕さ
やりたいこととか
やらなきゃだめとか
今日じゃなくても
いろいろあるし
どうすんのかな
これよりあとさ
外では春だし
家にも春だし
なんとかなるとか
なるといいかな
目覚めたら
違う人になってた
良くある話
鏡には
見たことない人がいた
動きだけが僕
はてこれは
いったい誰の顔だろう
僕は手を振る
はてこれは
そういう表情浮かべて
相手も手を振る
まあいいや
違う人になったなんて
良くある話
ただだれも
僕じゃない僕に
気付いてないだけ
ただだれも
この顔が僕のものだと
思い込んでるだけ
目覚めたら
違う人になってた
ホントの話
この彼は
生まれてこのかた
知らぬ顔
なに言うの
誰もが笑って
否定した
なに言うの
誰もが訝って
否定した
目覚めたら
違う人になってた
僕の顔
眠るまで
確かに僕だった
僕の顔
あの僕は
いったいぜんたい
どこ行った
良かったら
君も鏡を見てみて
教えてよ
鏡には
見たことない人がほら
いたりして
もしかして
それもしかすると
僕の顔
これはようこそ
いらっしゃい
いやはや
なんとも賑やかな
分かりますとも
望みのものを
ご用意いたして
ございます
これなる品は
鳳凰の
尾羽で作った
羽根のペン
こちらの品は
桃源の
蜜を集めた
玻璃の壺
またさらに
これなる品は
仙境の
匠が漉きし
和綴じ帖
それからこれは
皆様を
まとめてみせる
相い鏡
欠片の如く
湧き出でて
破片の如く
散らばった
皆様の如き
夢うつつ
皆様の如き
まぼろしを
まとめて
束ねて
縒り合って
語りと成せし
美技の品
騙りと為せし
児戯の品
想像の先の創造を
妄想の先の構想を
カタチと生せし
お品です
埋もれたままが嫌ならば
生まれたままが厭ならば
さあさどうぞ
お持ちあれ
彼らも
我らも
夢ならば
品さえ
此処さえ
嘘なれど
此処なる店は
斯様なる
夢間の
通りに
御座います
求むる品が
おありなら
貴方もどうぞ
お越しあれ
この手首を切って
あなたにあげましょう
迸るほどの想いごと
いっそあなたにあげましょう
夕映えに良く似た
禍々しいまでの深紅で
染め上げてあげましょう
言葉を綴った指先も
睦み交わした掌も
蒼ざめるほどの緋の色で
覆い尽くしてあげましょう
この喉元を掻き切って
あなたにあげましょう
噎せ返るほどの想いごと
すべてあなたにあげましょう
花びらに良く似た
凶々しいまでの芳香で
包み込んであげましょう
言葉を交わした唇も
絡み合わせた視線さえ
蒼ざめるほどの熱情で
覆い尽くしてあげましょう
炎の色さえ凌駕した
燃やし尽くせぬ想いごと
すべてあなたにあげましょう
すべてあなたにあげましょう
この坂を登って
通った校舎
見渡した町の
遠くには海が光る
風に揺れる木々の
零れ落ちた陽射し
散りばめた水晶
私たちは集めた
朝焼けの小路を
眩しそうに歩いた
他愛のない話
青空に花咲く
月浮かぶ小路も
昼下がりの小路も
雨に濡れた日にも
凍えそうな日にも
桜の咲く下を
落ち葉の舞う下を
いつだって通った
いつだって帰った
この坂を下って
通った部室
見通したグラウンド
遠くから声が響く
さんざめく笑いの
溢れかえる若さ
散りばめた思い出
私たちを包んだ
夕焼けの小路を
歩いていく人影
シルエットになっても
誰なのか分かった
黄昏の小路も
眠たげな小路も
晴れ渡った日にも
風の強い日にも
桜の咲く下を
落ち葉の舞う下を
いつだって通った
いつだって帰った
この坂を登って
この坂を下って
いつだって通った
あの頃の私たち
遠いよね
幾つも山を越えて
海を渡って
来るんだもんね
遠いよね
分かってるよ
急いでるって
分かってるよ
仕方ないって
でも
遠いよね
早く会いたいのに
告げられた日からずっと
待ってるのに
本当にずっと
待ってるのに
遠いよね
こんな時
近くにいたかったよ
遠いよね
こんな時
忘れちゃいたかったよ
お目にかかるまで
知らないフリ出来たら
もっと楽だったのにね
『銀色鼠 -ネズミたちは今日も- 』
銀色鼠は
物知りネズミ
カチカチ鳴いて
光の速さで
物を知る
そこの戸棚には
チーズがあるぜ
だけど
手前に罠がある
あそこの家には
子猫が二匹
だけど
今なら馴らせるぜ
銀色鼠は
訳知りネズミ
カチカチ鳴いて
世界の真偽を
調べてる
この世の中で
有名なのは
赤いズボンの
白黒ネズミ
この世の中で
重要なのは
ジェリーのような
人生かもな
銀色鼠は
長い尻尾で
世界の各地と
繋がってるが
銀色鼠は
そいつのせいで
戸棚の中には
忍び込めない
銀色鼠は
参謀ネズミ
カチカチ鳴いて
今日も何かを
謀ってるのさ
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
銀鼠
(2006/02/24) 『茶鼠 -ネズミたちは今日も- 』
茶色鼠は
フツウのネズミ
チュウチュウ鳴いて
屋根裏部屋を
駆けている
そこの戸棚には
チーズがあって
そして
手前には罠がある
ひっそりこっそり
そいつを盗って
そして
仲間と騒ぐのさ
茶色鼠は
自由なネズミ
チュウチュウ鳴いて
壁の穴から
覗いてる
だけどホントは
フツウってなんだ?
チーズ片手に
考える
それにホントは
自由も危険さ
いつでもスリルと
サスペンス
茶色鼠は
一声鳴いて
チーズを食べては
管を巻くけど
茶色鼠
実のところは
そんな生活が
嫌いじゃない
茶色鼠は
気ままなネズミ
チュウチュウ鳴いて
今日も何かを
狙ってるのさ
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
茶鼠
(2006/02/25) 『利休鼠 -ネズミたちは今日も- 』
利休鼠は
ご隠居ネズミ
のんびりアクビで
お茶を啜って
皆を見る
そこの戸棚には
チーズがあるとさ
だれか
それを取っておくれな
疲れたときには
わしが一服
お茶など
点てて進ぜよう
利休鼠は
長老ネズミ
ゆったりアクビで
世界の流れを
見つめてる
わしも昔は
いろんなことした
盗みも調査も
平凡も
わしも昔は
いろんな恋した
今では子孫が
無尽蔵
利休鼠は
長生きネズミで
今は泰然と
構えているが
利休鼠は
若かりし頃は
無鉄砲だったとは
内緒の話
利休鼠は
優しいネズミ
皆を見守り
今日もお茶を
啜ってるのさ
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
利休鼠
(2006/02/27) 『鼠 -ネズミたちは今日も- 』
その小鼠は
ぬすっとネズミ
鳴き声立てず
抜き足差し足
忍び込む
そこの戸棚では
チーズをくすね
そして
仲間に配るのさ
あちらの家では
仔猫の餌を
やっぱり
くすねて配るのさ
小僧鼠は
こそどろネズミ
鳴き声潜め
ひっそりこっそり
忍び寄る
この世の中で
大切なのは
盗みのテクと
義理と人情
この世の中で
必要なのは
大胆狡猾
それから愛さ
小僧鼠は
鮮やかな手つきで
いろんなものを
くすねているが
小僧鼠は
名前のとおり
そいつを仲間に
くれてやる
が
小僧鼠は
怪盗ネズミ
囁き鳴いて
今日はあの娘を
狙ってるのさ
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
鼠色
(2006/02/27)
君の声が欲しい
元気だよ
外は雨だよ
他愛ないことでいいから
君の声が欲しい
おやすみ
またね
たった一言でいいから
ラジオのように
声だけでいいから
届けて欲しい
君の声が欲しい
じゃあね
ばいばい
それきりでもいいから
近付かないで
あなたの帰りなんて
待ってないの
近寄らないで
あなたの愛撫なんて
欲しくないの
あなたを待つのは
あたしじゃない
あなたの相手は
あたしじゃない
入ってこないで
強引に横暴に
あたしの中に
引き出さないで
狂暴に強力に
あたしのことを
あなたが好きなのは
あたしじゃない
あなたを好きなのは
あたしじゃない
あたしは
あなたが過ぎるのを待つだけ
あたしは
あなたがスギなのを恨むだけ
近寄らないで
近付かないで
あたしの平穏は
あなたじゃない
(2006/02/24)
妖艶に誘う
花の乱舞
艶かしい笑み
闇を隠す
爪に似た月
疵を付けて
切り裂いた空
悲鳴をあげ
滴り落ちる蜜
紅の色味
手招きするは
過去の亡者
哄笑は夜に
溶けて広がる
緋色に染まる
白磁の肌
濡れそぼる瞳
硝子の様
眠れし骸
魂を囚われ
咲き誇る桜が
絡め取る心
濃厚に香る
紅き夜に
舞い散りし桜
闇を隠す
鏡に映った画のように
流れていく時間
それを確かめるには
背を向けなくてはならない
見えているものは
裏返しの世界
あるはずの景色は
後ろに広く連なる
逆さまの私の向こうに
広がっているのは
逆さまの時間なのに
振り返ったら
見えなくなるから
虚像の時間に
冷たく触れる
ここにいるのは誰
そこにあるのは何
逆転の私に遮られ
見つからない
分かる
分からない
なにもかも
からからと
空っぽの元気
きりきりと
切り刻まれた胃
くるくると
狂ってしまった時計
たらたらと
誑し込まれたタブー
ちりちりと
塵になってしまった記憶
つるつると
蔓の上を滑って絡む
はらはらと
腹立ち紛れの涙
ひりひりと
ひりついた心
ふるふると
震わせながら泣く
終わらないものなんて
ない
どこにも
始まってしまったなら
もう
いつでも
終焉に向かっている
生まれればいつかは死ぬ
つくったものは壊れる
千里の道もまた
いつか歩き終える
終わらないものなんて
ない
だけど
始まらなかったことよりも
良い
こともある
だから
怖がっているよりも
まず
始めればいい
半分ずつなんて
感じ取れは
しないけど
半分ずつ
仲良く
半分ずつに
分け合った
昼と夜
どこへ行こうかな
あたしはどこへ行こうかな
どこへだって行かれると思ってた
いつだって行かれると思ってた
捨てられるつもりで
何も持たないつもりで
いたのに
好きなだけ
身軽で
自由で
いたはずなのに
いつのまにか
捨てられない
いつのまにか
手放せない
大事なものも
好きなものも
恒常的な日々も
打算も妥協も
保身も保障も
いつのまに
失えない
行きたいのに
自由に生きたいのに
どこへ行こうかな
あしたはどこへ行こうかな
(2006/02/15)
歩いた
行けども
ウルグアイの夜いる
渡る賜杯ナイルの河
言い寄って黙る舌の根
剣(つるぎ)の或いは生じる危害要るから
担った想い軽くして
当たるらしい昼の光を啜る
もう
満ちるならここに
生きる太陽にある
下へ行こう
逢いたいけどもう
具合の良い私はいないの
可愛いよって騙したのね
次の愛は正直がいい
空になった想い隠して
新しい日の光を進もう
道ならここに
行きたいように明日へ行こう
切なくない
恋なんてない
幸せのない
恋なんてない
つまらない
夢なんてない
くだらない
夢なんてない
暗いだけの
明日なんてない
辛いだけの
明日なんてない
悪いだけの
人なんていない
嫌われるだけの
人なんていない
意のままになる
世界なんてない
ままならない
世界ばかりじゃない
見いつけた
すっくりやわらか
土から覗いた
緑の芽
見いつけた
田んぼのあぜ道
まっすぐ空見る
つくしの子
見いつけた
そよそよ春風
歌声乗せた
小鳥たち
見いつけた
待ちきれないよに
甘さに踊る
蝶や蜂
見いつけた
ぽかぽか陽気に
跳ねて駆けてく
子どもたち
見いつけた
ぬるんだ風と
ぬるんだ大地の
その息吹
たまに思うけど
腰が重いもの
時に悩むけど
動き出せない
増えてしまった
たくさんの宝もの
増えてしまった
たくさんの記念品
この部屋の扉の向こう
あの部屋の隠した扉
この部屋の扉の模様
あの部屋の失くした扉
替えたいけど
替えたくない
変えたいけど
変えられない
時間がない
センスがない
余裕がない
技術がない
言い訳しては
出来ないままの
模様替え
あなたはどうしてあたしだけのものじゃない
他の人を見てる
違う夢を見てる
いつか別の恋に出会う
そのうち
あたしはどうしてあなただけのものじゃない
他の人は見ない
違う夢も見ない
きっと別の恋もしない
それでも
一緒ならよかった
別々の人間でなくて
ひとつならよかった
恋することを無くしても
あたしだけのあなたを欲しかった
他の人を見ても
違う夢を見ても
別の恋をしても
大丈夫だと言えるくらい
世界はどうしてあたしだけのものじゃない
眠れない夜も
憂鬱な朝も
死にたくなる哀しさも
要らない
あたしはどうしてあたしだけのものじゃない
どれひとつあたしのものにならない
手に入らない
なのに
手放せない
(2006/02/09)
引っ張っていかれる
どこまでもどこまでも
抵抗も虚しく
連れ去られてしまう
引きずられてしまう
いつだっていつだって
危険だと告げても
聞く耳を持たない
お願いがあるの
優しく呼んでよ
力任せになぞ
押し倒したりしないで
待ちわびても来ない
いつまでもいつまでも
懇願も切り捨てる
気まぐれはお手の物ね
藤納戸
藤樹庵さんちの
フェルナンド君は
当年とって
十と二歳
人呼んで
フジナンド
日がな一日
藤棚の下で
昼寝をしてる
白に斑の
猫
十と二年
そこで寝ている
フジナンドの
元は灰色の斑は
いつの間にやら
藤納戸色に
染まっている
藤樹庵さんに来る
お客さんは
藤棚の下
縁台に座って
買ったばかりの
団子を食べる
時折
店主に隠れて
こっそりこっそり
フジナンドに
お裾分けしたりなんかして
花が咲くには
まだだいぶ早い
早春の藤棚の下
円くなって眠っている
やわらかな藤納戸
ひだまりに優しく
咲いてる
年寄りの猫
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤納戸
(2006/02/06)
藤花月宴
時季が来れば
それはみごとな
色が溢れる
藤の老樹
遠い昔に
創業をした
和菓子屋の隣
満月の夜に
通りかかると
目も覚めるような
麗人がいて
白髯の豊かな
老人とふたり
酒を酌み交わしたり
しているという
朝日の中では
藤棚の下に
眠る老猫
素知らぬ顔で
通りを見遣り
時折
小声で会話を交わす
花咲き零れる
月の夜なら
宴に招いてくれるらしいが
ともかく今は
涼しい顔の
藤の老樹と
斑の白猫
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤色
(2006/02/08) 藤紫の花の下
見事に広がる
藤の樹が
屋根を織り成す
藤棚の
その向こうに
和菓子屋があって
年中
甘い匂いを
漂わせてる
裏に廻れば
ご隠居が
日がな一日
庭を見てたり
散歩をしたり
時には猫と
昼寝をしたり
春まだ浅い
うららかな日は
咲いてもいない
花の香がして
匂いに聡い
ご隠居は
それはいそいそと
藤棚へ行く
木漏れ日の中
藤紫の幻花が
降り注ぎ
ご隠居は猫と
縁台に座り
待ち人が来るのを
心待ちにしてる
藤紫の花の下
そこでは遠い昔から
幾つの不思議が
もう亡い人や
人でないもの
優しい夢を
連れてくる
そんなわけで
見事に広がる
藤の樹の下
暖かな陽射しと
花の香の中
老夫婦が今
莞爾と笑う
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤紫
(2006/02/09)
さくらはまだ
さくらは咲いた
さくらは散った
きみたちは
寒空の下
春を待つ
まだ細い
幹の中に
力を貯めて
春を待つ
芽吹き
ほころび
花開いて
春に行く
さくらはまだ
さくらは咲いた
さくらは散った
そしていつか
桜吹雪の中
歩いていく
春に行く
砂粒ひとつ
集めていけば
砂漠になる
草の芽ひとつ
集めていけば
草原になる
若木をひとつ
集めていけば
樹海になる
山をひとつ
集めていけば
秘境になる
星をひとつ
集めていけば
宇宙になる
人をひとり
集めていけば
家族になる
好きをひとつ
集めていけば
愛情になる
人を
自分を
世界を
愛していけば
明日になる