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私なら今でも

君を想う

まだ別れは遠いように見える

ただ

感傷はもうない

時に夢見るだけ
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2007.03.30 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
割った詩ならいっそ粗末でも

月見を思う松だ

和歌それはそっと追い

要素に蜜添える蔦だ

漢詩予想はもうない

そっと月に夢満つるだけ
2007.03.30 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
銀色のメモリー
振り切る勢いで
飛んでいけ
上昇の速度は
ロケットみたいに
追いつけないさ
脳天でスパークして
星屑撒き散らせ
身も震えるほどの
驚きの熱さで

銀色の目盛り
振り切る勢いで
飛んでいけ
2007.03.29 Thu l 日々の罅 l コメント (3) トラックバック (0) l top
貴方に会うときは

心の中で

礼装を身にまとう

少しでも

良く見えるといい

少しでも

輝いて見えるといい

貴方と会うときは

ちょっと

よそ行きになってみる

猫かぶりとか

言わないで

風に怯える

小鳥の心みたいに

舞踏会に臨む

少女みたいに

緊張と歓喜に震えてるだけ
2007.03.29 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
つらいな
いたいな
だるいな
さむいな

あたまと
こしぼね
ひざとひじ
うでともも

かぜかな
なにかな
つかれかな

としかな
なにかな
きおんかな

くすりと
ふとんと
すいぶんと

このよるが

つらさと
いたさと
だるさと
さむさを

おいやって
おいはらって
くれるといいな
2007.03.28 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
どうすんのかな
これから先さ
天気はいいし
気温もいいし
お出かけ日和で
気持ちもいいし

どうすんのかな
これから僕さ
昼寝もいいし
散歩もいいし
ぽかぽか陽気で
お茶でもいいし

どうすんのかな
これでも僕さ
やりたいこととか
やらなきゃだめとか
今日じゃなくても
いろいろあるし

どうすんのかな
これよりあとさ
外では春だし
家にも春だし
なんとかなるとか
なるといいかな
2007.03.28 Wed l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
目覚めたら
違う人になってた
良くある話

鏡には
見たことない人がいた
動きだけが僕

はてこれは
いったい誰の顔だろう
僕は手を振る

はてこれは
そういう表情浮かべて
相手も手を振る

まあいいや
違う人になったなんて
良くある話

ただだれも
僕じゃない僕に
気付いてないだけ

ただだれも
この顔が僕のものだと
思い込んでるだけ

目覚めたら
違う人になってた
ホントの話

この彼は
生まれてこのかた
知らぬ顔

なに言うの
誰もが笑って
否定した

なに言うの
誰もが訝って
否定した

目覚めたら
違う人になってた
僕の顔

眠るまで
確かに僕だった
僕の顔

あの僕は
いったいぜんたい
どこ行った

良かったら
君も鏡を見てみて
教えてよ

鏡には
見たことない人がほら
いたりして

もしかして
それもしかすると
僕の顔
2007.03.27 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
これはようこそ
いらっしゃい
いやはや
なんとも賑やかな

分かりますとも
望みのものを
ご用意いたして
ございます

これなる品は
鳳凰の
尾羽で作った
羽根のペン

こちらの品は
桃源の
蜜を集めた
玻璃の壺

またさらに

これなる品は
仙境の
匠が漉きし
和綴じ帖

それからこれは
皆様を
まとめてみせる
相い鏡

欠片の如く
湧き出でて
破片の如く
散らばった

皆様の如き
夢うつつ

皆様の如き
まぼろしを

まとめて
束ねて
縒り合って

語りと成せし
美技の品

騙りと為せし
児戯の品

想像の先の創造を

妄想の先の構想を

カタチと生せし
お品です

埋もれたままが嫌ならば
生まれたままが厭ならば

さあさどうぞ
お持ちあれ



彼らも
我らも
夢ならば

品さえ
此処さえ
嘘なれど

此処なる店は
斯様なる
夢間の
通りに
御座います

求むる品が
おありなら
貴方もどうぞ
お越しあれ
2007.03.27 Tue l 黄昏通り l コメント (2) トラックバック (0) l top
この手首を切って

あなたにあげましょう

迸るほどの想いごと

いっそあなたにあげましょう

夕映えに良く似た

禍々しいまでの深紅で

染め上げてあげましょう

言葉を綴った指先も

睦み交わした掌も

蒼ざめるほどの緋の色で

覆い尽くしてあげましょう

この喉元を掻き切って

あなたにあげましょう

噎せ返るほどの想いごと

すべてあなたにあげましょう

花びらに良く似た

凶々しいまでの芳香で

包み込んであげましょう

言葉を交わした唇も

絡み合わせた視線さえ

蒼ざめるほどの熱情で

覆い尽くしてあげましょう

炎の色さえ凌駕した

燃やし尽くせぬ想いごと

すべてあなたにあげましょう

すべてあなたにあげましょう





2007.03.26 Mon l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
この坂を登って
通った校舎
見渡した町の
遠くには海が光る
風に揺れる木々の
零れ落ちた陽射し
散りばめた水晶
私たちは集めた

朝焼けの小路を
眩しそうに歩いた
他愛のない話
青空に花咲く

月浮かぶ小路も
昼下がりの小路も
雨に濡れた日にも
凍えそうな日にも
桜の咲く下を
落ち葉の舞う下を
いつだって通った
いつだって帰った


この坂を下って
通った部室
見通したグラウンド
遠くから声が響く
さんざめく笑いの
溢れかえる若さ
散りばめた思い出
私たちを包んだ

夕焼けの小路を
歩いていく人影
シルエットになっても
誰なのか分かった

黄昏の小路も
眠たげな小路も
晴れ渡った日にも
風の強い日にも
桜の咲く下を
落ち葉の舞う下を
いつだって通った
いつだって帰った


この坂を登って
この坂を下って

いつだって通った

あの頃の私たち
2007.03.26 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
遠いよね

幾つも山を越えて

海を渡って

来るんだもんね

遠いよね

分かってるよ

急いでるって

分かってるよ

仕方ないって

でも

遠いよね

早く会いたいのに

告げられた日からずっと

待ってるのに

本当にずっと

待ってるのに

遠いよね

こんな時

近くにいたかったよ

遠いよね

こんな時

忘れちゃいたかったよ

お目にかかるまで

知らないフリ出来たら

もっと楽だったのにね
2007.03.25 Sun l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
『銀色鼠 -ネズミたちは今日も- 』


銀色鼠は
物知りネズミ

カチカチ鳴いて
光の速さで
物を知る

そこの戸棚には
チーズがあるぜ
だけど
手前に罠がある

あそこの家には
子猫が二匹
だけど
今なら馴らせるぜ


銀色鼠は
訳知りネズミ

カチカチ鳴いて
世界の真偽を
調べてる

この世の中で
有名なのは
赤いズボンの
白黒ネズミ

この世の中で
重要なのは
ジェリーのような
人生かもな


銀色鼠は
長い尻尾で
世界の各地と
繋がってるが

銀色鼠は
そいつのせいで
戸棚の中には
忍び込めない


銀色鼠は
参謀ネズミ

カチカチ鳴いて
今日も何かを
謀ってるのさ


■□■□■□■□■□■□■□■□■□
銀鼠

(2006/02/24)




『茶鼠 -ネズミたちは今日も- 』


茶色鼠は
フツウのネズミ

チュウチュウ鳴いて
屋根裏部屋を
駆けている

そこの戸棚には
チーズがあって
そして
手前には罠がある

ひっそりこっそり
そいつを盗って
そして
仲間と騒ぐのさ


茶色鼠は
自由なネズミ

チュウチュウ鳴いて
壁の穴から
覗いてる

だけどホントは
フツウってなんだ?
チーズ片手に
考える

それにホントは
自由も危険さ
いつでもスリルと
サスペンス


茶色鼠は
一声鳴いて
チーズを食べては
管を巻くけど

茶色鼠
実のところは
そんな生活が
嫌いじゃない


茶色鼠は
気ままなネズミ

チュウチュウ鳴いて
今日も何かを
狙ってるのさ


■□■□■□■□■□■□■□■□■□
茶鼠

(2006/02/25)



『利休鼠 -ネズミたちは今日も- 』


利休鼠は
ご隠居ネズミ

のんびりアクビで
お茶を啜って
皆を見る

そこの戸棚には
チーズがあるとさ
だれか
それを取っておくれな

疲れたときには
わしが一服
お茶など
点てて進ぜよう


利休鼠は
長老ネズミ

ゆったりアクビで
世界の流れを
見つめてる

わしも昔は
いろんなことした
盗みも調査も
平凡も

わしも昔は
いろんな恋した
今では子孫が
無尽蔵


利休鼠は
長生きネズミで
今は泰然と
構えているが

利休鼠は
若かりし頃は
無鉄砲だったとは
内緒の話


利休鼠は
優しいネズミ

皆を見守り
今日もお茶を
啜ってるのさ

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
利休鼠

(2006/02/27)



『鼠 -ネズミたちは今日も- 』

その小鼠は
ぬすっとネズミ

鳴き声立てず
抜き足差し足
忍び込む

そこの戸棚では
チーズをくすね
そして
仲間に配るのさ

あちらの家では
仔猫の餌を
やっぱり
くすねて配るのさ


小僧鼠は
こそどろネズミ

鳴き声潜め
ひっそりこっそり
忍び寄る

この世の中で
大切なのは
盗みのテクと
義理と人情

この世の中で
必要なのは
大胆狡猾
それから愛さ


小僧鼠は
鮮やかな手つきで
いろんなものを
くすねているが

小僧鼠は
名前のとおり
そいつを仲間に
くれてやる




小僧鼠は
怪盗ネズミ

囁き鳴いて
今日はあの娘を
狙ってるのさ

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
鼠色

(2006/02/27)
2007.03.25 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
君の声が欲しい

元気だよ

外は雨だよ

他愛ないことでいいから

君の声が欲しい

おやすみ

またね

たった一言でいいから

ラジオのように

声だけでいいから

届けて欲しい

君の声が欲しい

じゃあね

ばいばい

それきりでもいいから
2007.03.24 Sat l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
近付かないで
あなたの帰りなんて
待ってないの

近寄らないで
あなたの愛撫なんて
欲しくないの

あなたを待つのは
あたしじゃない

あなたの相手は
あたしじゃない


入ってこないで
強引に横暴に
あたしの中に

引き出さないで
狂暴に強力に
あたしのことを

あなたが好きなのは
あたしじゃない

あなたを好きなのは
あたしじゃない


あたしは
あなたが過ぎるのを待つだけ

あたしは
あなたがスギなのを恨むだけ


近寄らないで
近付かないで

あたしの平穏は
あなたじゃない


(2006/02/24)
2007.03.24 Sat l 月々 l コメント (2) トラックバック (0) l top
妖艶に誘う

花の乱舞

艶かしい笑み

闇を隠す

爪に似た月

疵を付けて

切り裂いた空

悲鳴をあげ

滴り落ちる蜜

紅の色味

手招きするは

過去の亡者

哄笑は夜に

溶けて広がる

緋色に染まる

白磁の肌

濡れそぼる瞳

硝子の様

眠れし骸

魂を囚われ

咲き誇る桜が

絡め取る心

濃厚に香る

紅き夜に

舞い散りし桜

闇を隠す
2007.03.23 Fri l 一枚の茶葉 l コメント (0) トラックバック (0) l top
鏡に映った画のように
流れていく時間
それを確かめるには
背を向けなくてはならない
見えているものは
裏返しの世界
あるはずの景色は
後ろに広く連なる
逆さまの私の向こうに
広がっているのは
逆さまの時間なのに
振り返ったら
見えなくなるから
虚像の時間に
冷たく触れる
ここにいるのは誰
そこにあるのは何
逆転の私に遮られ
見つからない
分かる
分からない
なにもかも
2007.03.23 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
からからと
空っぽの元気
きりきりと
切り刻まれた胃
くるくると
狂ってしまった時計


たらたらと
誑し込まれたタブー
ちりちりと
塵になってしまった記憶
つるつると
蔓の上を滑って絡む


はらはらと
腹立ち紛れの涙
ひりひりと
ひりついた心
ふるふると
震わせながら泣く
2007.03.22 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
終わらないものなんて

ない

どこにも

始まってしまったなら

もう

いつでも

終焉に向かっている


生まれればいつかは死ぬ

つくったものは壊れる

千里の道もまた

いつか歩き終える


終わらないものなんて

ない

だけど

始まらなかったことよりも

良い

こともある

だから

怖がっているよりも

まず

始めればいい
2007.03.22 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
半分ずつなんて

感じ取れは

しないけど

半分ずつ

仲良く

半分ずつに

分け合った

昼と夜
2007.03.21 Wed l 花膳 l コメント (4) トラックバック (0) l top
どこへ行こうかな
あたしはどこへ行こうかな

どこへだって行かれると思ってた

いつだって行かれると思ってた

捨てられるつもりで
何も持たないつもりで
いたのに

好きなだけ
身軽で
自由で
いたはずなのに

いつのまにか
捨てられない
いつのまにか
手放せない

大事なものも
好きなものも
恒常的な日々も
打算も妥協も
保身も保障も
いつのまに
失えない

行きたいのに

自由に生きたいのに

どこへ行こうかな
あしたはどこへ行こうかな


(2006/02/15)
2007.03.21 Wed l 月々 l コメント (7) トラックバック (0) l top
歩いた

行けども

ウルグアイの夜いる

渡る賜杯ナイルの河

言い寄って黙る舌の根

剣(つるぎ)の或いは生じる危害要るから

担った想い軽くして

当たるらしい昼の光を啜る

もう

満ちるならここに

生きる太陽にある

下へ行こう





2007.03.20 Tue l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
逢いたいけどもう

具合の良い私はいないの

可愛いよって騙したのね

次の愛は正直がいい

空になった想い隠して

新しい日の光を進もう

道ならここに

行きたいように明日へ行こう
2007.03.20 Tue l 花膳 l コメント (9) トラックバック (0) l top
切なくない
恋なんてない

幸せのない
恋なんてない

つまらない
夢なんてない

くだらない
夢なんてない

暗いだけの
明日なんてない

辛いだけの
明日なんてない

悪いだけの
人なんていない

嫌われるだけの
人なんていない

意のままになる
世界なんてない

ままならない
世界ばかりじゃない
2007.03.19 Mon l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
見いつけた

すっくりやわらか

土から覗いた

緑の芽


見いつけた

田んぼのあぜ道

まっすぐ空見る

つくしの子


見いつけた

そよそよ春風

歌声乗せた

小鳥たち


見いつけた

待ちきれないよに

甘さに踊る

蝶や蜂


見いつけた

ぽかぽか陽気に

跳ねて駆けてく

子どもたち


見いつけた

ぬるんだ風と

ぬるんだ大地の

その息吹
2007.03.19 Mon l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
たまに思うけど
腰が重いもの
時に悩むけど
動き出せない

増えてしまった
たくさんの宝もの
増えてしまった
たくさんの記念品

この部屋の扉の向こう
あの部屋の隠した扉

この部屋の扉の模様
あの部屋の失くした扉

替えたいけど
替えたくない

変えたいけど
変えられない

時間がない
センスがない
余裕がない
技術がない

言い訳しては

出来ないままの

模様替え
2007.03.18 Sun l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
あなたはどうしてあたしだけのものじゃない
他の人を見てる
違う夢を見てる
いつか別の恋に出会う
そのうち

あたしはどうしてあなただけのものじゃない
他の人は見ない
違う夢も見ない
きっと別の恋もしない
それでも

一緒ならよかった
別々の人間でなくて

ひとつならよかった
恋することを無くしても

あたしだけのあなたを欲しかった
他の人を見ても
違う夢を見ても
別の恋をしても
大丈夫だと言えるくらい

世界はどうしてあたしだけのものじゃない
眠れない夜も
憂鬱な朝も
死にたくなる哀しさも
要らない

あたしはどうしてあたしだけのものじゃない

どれひとつあたしのものにならない
手に入らない
なのに
手放せない


(2006/02/09)
2007.03.18 Sun l 月々 l コメント (6) トラックバック (0) l top
引っ張っていかれる

どこまでもどこまでも

抵抗も虚しく

連れ去られてしまう


引きずられてしまう

いつだっていつだって

危険だと告げても

聞く耳を持たない


お願いがあるの

優しく呼んでよ

力任せになぞ

押し倒したりしないで


待ちわびても来ない

いつまでもいつまでも

懇願も切り捨てる

気まぐれはお手の物ね
2007.03.17 Sat l 日々の罅 l コメント (2) トラックバック (0) l top
藤納戸


藤樹庵さんちの
フェルナンド君は
当年とって
十と二歳
人呼んで
フジナンド

日がな一日
藤棚の下で
昼寝をしてる
白に斑の


十と二年
そこで寝ている
フジナンドの
元は灰色の斑は
いつの間にやら
藤納戸色に
染まっている

藤樹庵さんに来る
お客さんは
藤棚の下
縁台に座って
買ったばかりの
団子を食べる

時折
店主に隠れて
こっそりこっそり
フジナンドに
お裾分けしたりなんかして

花が咲くには
まだだいぶ早い
早春の藤棚の下
円くなって眠っている
やわらかな藤納戸

ひだまりに優しく
咲いてる
年寄りの猫


■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤納戸

(2006/02/06)




藤花月宴


時季が来れば
それはみごとな
色が溢れる
藤の老樹

遠い昔に
創業をした
和菓子屋の隣

満月の夜に
通りかかると
目も覚めるような
麗人がいて

白髯の豊かな
老人とふたり
酒を酌み交わしたり
しているという

朝日の中では
藤棚の下に
眠る老猫

素知らぬ顔で
通りを見遣り
時折
小声で会話を交わす

花咲き零れる
月の夜なら
宴に招いてくれるらしいが

ともかく今は
涼しい顔の
藤の老樹と
斑の白猫

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤色

(2006/02/08) 



藤紫の花の下


見事に広がる
藤の樹が
屋根を織り成す
藤棚の
その向こうに
和菓子屋があって
年中
甘い匂いを
漂わせてる

裏に廻れば
ご隠居が
日がな一日
庭を見てたり
散歩をしたり
時には猫と
昼寝をしたり

春まだ浅い
うららかな日は
咲いてもいない
花の香がして
匂いに聡い
ご隠居は
それはいそいそと
藤棚へ行く

木漏れ日の中
藤紫の幻花が
降り注ぎ
ご隠居は猫と
縁台に座り
待ち人が来るのを
心待ちにしてる

藤紫の花の下
そこでは遠い昔から
幾つの不思議が
もう亡い人や
人でないもの
優しい夢を
連れてくる

そんなわけで
見事に広がる
藤の樹の下
暖かな陽射しと
花の香の中
老夫婦が今
莞爾と笑う

■□■□■□■□■□■□■□■□■□
藤紫

(2006/02/09)
2007.03.17 Sat l 月々 l コメント (2) トラックバック (0) l top
さくらはまだ

さくらは咲いた

さくらは散った

きみたちは

寒空の下

春を待つ

まだ細い

幹の中に

力を貯めて

春を待つ

芽吹き

ほころび

花開いて

春に行く

さくらはまだ

さくらは咲いた

さくらは散った

そしていつか

桜吹雪の中

歩いていく

春に行く
2007.03.16 Fri l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
砂粒ひとつ
集めていけば
砂漠になる

草の芽ひとつ
集めていけば
草原になる

若木をひとつ
集めていけば
樹海になる

山をひとつ
集めていけば
秘境になる

星をひとつ
集めていけば
宇宙になる

人をひとり
集めていけば
家族になる

好きをひとつ
集めていけば
愛情になる

人を
自分を
世界を

愛していけば

明日になる
2007.03.16 Fri l 花膳 l コメント (5) トラックバック (0) l top