君の前では
笑っていた
いつだって
いつだって
君に覚えていて
もらいたかった
笑った顔
微笑む顔
君が遠くに
いくのなら
笑顔だけを
刻んで欲しかった
君との距離が
遠くなって
抱きしめあえない
日が来るから
君が行くまで
笑っていた
いつだって
いつだって
ありがとうも
がんばっても
言わないから
笑っていた
ありがとうも
がんばれも
言われたくなくて
笑っていた
君が本当は
嗚咽を隠した
私を
覚えていたとしても
君が本当は
哀しみこらえた
私に
気付いていたとしても
君が行くまで
笑っている
いつだって
いつだって
君がいつか
思い描くとき
泣き顔の私なんかじゃ
ないように
輝く笑顔を
描けるように
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見えない敵がいるぞ
警鐘を打ち鳴らせ
見えない敵がいるぞ
水攻めで追い返せ
侵入してくるやつらは
大砲で吹き飛ばせ
突進してくるやつらは
防壁で跳ね返せ
見えない敵が来たぞ
山の向こうから来たぞ
見えない敵が来たぞ
追い風に乗って来たぞ
敏感なぼくらは
すぐに迎撃体制
鈍感な君らは
憐れむ目つきで見守る
見えない敵がいるぞ
目を真っ赤にして戦え
見えない敵がいるぞ
口と鼻をふさげ
雨の日の翌日には
大量に押し寄せる
今日は好い天気だ
哀しい合戦日和だ
無理しなくてもいいと
無茶しなくてもいいと
誰かが言ったとしても
髪の毛一本そよがない
無意味じゃないのと
無駄じゃないのと
誰かが言ったとしても
虫刺されほども痛まない
大事なものだと
第一に思えると
誰かが言ったとしたら
光の粒の温もりになる
大丈夫だよと
大好きだよと
誰かが言ったとしたら
一握りほどの小石にはなる
それでも
この足元は不安定で
この道筋は不透明で
誰にも委ねられない
この選択の不明瞭は
この煩悶の不安感は
誰にも拭い去れない
無理をしたとしても
無茶であったとしても
己自身が言わなければ
この足は止まらない
無意味だっていいじゃないと
無駄だっていいじゃないと
己自身で言わなければ
この腕は動かない
この足が傷付いても
この声が嗄れ果てても
歩んだ道に滲む血の軌跡が
過ぎ行く風を震わせる波紋が
僅かでも残るならば
この足を止めず
この腕を振って
この道を
この声で歌い
この指で綴り
この道を
捉えどころのない
掴みどころのない
仕草と表情
笑うでもない
怒るでもない
静かな容貌
予想もつかない
予測も出来ない
気付けぬ様相
今度はないと
こんなじゃないと
カオスの顔で
混沌ではない
混乱ではない
語りで騙る
先が見えない
次が読めない
カオスの顔で
だからこそ
なんにだって
どんなにだって
なれると騙る
ただ光が差し込んだだけなのに
ただ雫を通して光るだけなのに
どうしてこんなにも心惹かれるのだろう
朝の空に弧を描く七色の虹
太陽が濡れた大地を照らす
濡れた大地には黒く影が落ちる
水溜りに映った空は蒼く輝いて
降り注ぐ雨粒が揺らめかせては跳ねる
雲は重たそうな顔つきでゆっくり流れ
遠い空の切れ間に幾つもの梯子をかける
それでも誰もあの空の上に行くことは出来ないので
薄れていく虹の欠片だけを指に残す
どんなささいなことでも
知りたいの
あなたのこと教えてよ
好きか
嫌いか
どんなさまつなことでも
聞きたいの
あなたのこと教えてよ
好きか
嫌いか
どんな風に思っているのか
気になるの
わたしのこと聞かせてよ
嫌いか
好きか
恋愛に必要なのは
自己暗示
自己欺瞞
自己演出
違うというなら
それでいい
そのほうがいい
恋をしたら
アタシは何か変わるかしら
愛し合ったら
アタシは何を変えるかしら
濃い藍色の
マフラーで首を絞めて
濃い藍色の
闇の中でキスしてみた
寒さに震える仔猫みたいに
アタシとアナタ
恋の花火 愛の炎
燃やしてみたけど
濃藍の毛並みで
濃藍の闇夜で
なにも分かんない
故意に喧嘩しても
逢いに走り抜けても
なにも変わんない
恋をしたら
アタシは何か変わるかしら
愛し合ったら
アタシは何を変えるかしら
なにもわかんない
なにもかわんない
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
濃藍
(2006/01/27)
この星はとても青くて
この星はとても綺麗で
だから
誰もが欲しがってしまった
手に入ると思ってしまった
誰のものでもなかったのに
それに気付くときはもう
遅いのかもしれないけれど
この星はとても青くて
誰のものでもない
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
青
(2006/01/26)
月にウサギがいるように
花に親指姫がいるように
僕の中に君がいるんだ
いるよ
ほら
朝目覚めたら
君になってるんじゃないか
そう思うくらい
いるってば
ほら
癖も顔も形も
君になってるんじゃないか
伝えにきたんだよ
嘘じゃないよ
ほら
月にはウサギで
僕の中には君がいるんだ
恋しすぎたのさ
よく見てみてよ
ほら
僕はもうすっかり
君になっているじゃないか
じゃあ目の前の君は
そういうことか
へえ
僕の中に君がいるなら
君は一体誰だろう
君の中にも僕がいるかな
違うって
へえ
じゃあもういいや
僕の知ってる君なら
そんな顔しないしね
付きまとうなって
へえ
自惚れじゃないの
僕は君なんて知らないよ
君が君ならむしろ要らない
近づくなって
へえ
君が君なら要らないけど
君が君じゃないならいいよ
用なんてないよ
月にウサギはいなくても
花に親指姫はいなくても
僕の中には君がいるんだ
あれ
君の中に僕がいるのかな
あれれ
私はどっちかしらね
高い高い屋上の上から
見下ろした町並みに
虫ピンを刺してく
ビルも
道路も
人も
全部
虫ピンで刺してく
太陽を浴びて
ピンの頭が光る
そよ風を受けて
羽のように揺れる
身動きできなくなった町を
ガラスケースに収めたら
高い高い屋上の上から
虫ピンを抱いて
落ちていこう
ビルより
道路より
誰よりも
綺麗なままで
収まろう
甘い甘いバニラのにおい
ふんわりかおる香ばしさ
三時のおやつに召し上がれ
チョコチップ散らして
バナナはつぶして
ジャムを混ぜたり
スパイス入れたり
甘い甘いお菓子のにおい
ふんわりかおる懐かしさ
お茶のお供に召し上がれ
砕いたキャンディ散らして
お芋はつぶして
紅茶の葉混ぜたり
ジンジャー入れたり
甘い甘いひとときのにおい
ふんわりかおる楽しげな
話をしながら召し上がれ
ちょっと焦げててもご愛嬌
ナんでもないことを
ルいがないことのように
シゅうしょく華美に言い立てる
スごくくだらなそうに見えて
トきどき少し羨ましい
ペン軸が欠けただけでも
シを連れてくるように思えて
ミるもの全てが怖くなる
スてきな提案をしてあげよう
トり寄せればいいんだよ
マったく困ったもんだ
ゾウにでも踏まれてみるかい
ヒげきのヒロインのつもりなら
スこし周りを見回してみなよ
トリまで見てるのは自分だけさ
人にされていやなことは
してはいけません
己の尺度で考えても
おそらくは間違いではない
人にされて嬉しいことは
少し考えなさい
己の尺度で考えたら
時として間違えてしまう
物事の善悪を
誰かが教えても
それはきっと
世界共通ではないから
何事も
人にされたことならば
暫し考えなさい
己がすることに
照らし合わせなさい
己の尺度で測れることは
そう大きくも長くもない
手の届く範囲
目の届く範囲
だからこそ考えなさい
それが思いやり
分かり合える
分かり合えない
受け入れられる
受け入れられない
共感できる
反感を持つ
打てば響く
噛み合わない
足並みが揃う
歩幅が違う
馬が合う
そりが合わない
分かち合える
分かち合えない
好き
嫌い
それでいい
だからいい
なまめかしい仕草で
誘ってくる
薄闇に光る太腿
媚びるような目つきで
そそってくる
妖しく光るまなざし
濡れた唇に笑みを
尖るネイルに罪を
乗せて差し招く
ファムファタル
気があるのか
待っているのか
それならば
細腰を抱いて
街に向かおう
ぎこちない仕草で
誘ってくる
薄闇で揺れる指先
焦げるような目つきで
襲ってくる
怪しく揺れるまなざし
渇く唇に酒を
尖る本能に危機を
乗せて押し寄せる
そのオトコ
気があるのか
やってくるつもりか
それならば
一瞥をくれて
街に消えよう
薄暗いバーの中
颯爽と女は消えて
呆然の男は酒と二人
いちどだって
きみと触れなかった
ぼくの言葉では
きみの心は振れなかった
ぼくの好意では
きみの笑顔さえくれなかった
ぼくの想いでは
きみの気持ちは揺れなかった
ぼくの想い出は
きみのカタチに揺れ残った
ぼくの行為では
きみの涙も濡れなかった
ぼくのことまでは
きみの記憶もつれなかった
なんどだって
きみと触れたかった
彼女の鎖骨には
湖がある
なだらかな稜線のふもと
水をたたえて
彼女の鎖骨には
人魚がいる
つややかな鱗を揺らし
笑みをたたえて
ぼくは時折
鎖骨の彼女に
挨拶をする
ぼくは時折
鎖骨の彼女に
接吻をする
彼女の鎖骨には
湖がある
それを飲み干してから
夜を撫でてく
行ってきますも
ただいまも
いただきますも
ごちそうさまも
誰もいないとしても
口に出してみる
おはようも
おやすみも
暑いとか
寒いとか
誰も聞いてなくたって
声に出してみる
自分自身に
世界に
伝わることが大事
誰かに伝わればさらにいい
大好きも
愛してるも
誰も耳にしなくても
言葉にしてみる
きみの欠点だね
どんな話もいつか
きみの話にすりかわる
きみの難点だね
どんなシーンもいつか
きみの視点に置き換わる
人の発言先回り
誰も思ってないのに
きみが主体の話を作る
自己顕示欲
さりげなさそうで強いから
ときに僕はうんざりするよ
だけどきみは努力家で
面倒見のいい良い人で
だから余計に言えないよ
きみの短所だよね
どんなことでもいつか
きみは気にしてすりかえる
きみの難所だよね
きみがメインの話を
僕は無理して無視をする
自意識過剰
自然なふりして強いから
ときに僕は困惑するよ
だけど嫌いになれなくて
近くて遠くて近いから
だから容易に言えないよ
僕も似ているよね
どんな話もいつか
自分の話にしたりする
だから僕には言えないよ
大好きな歌を
口ずさんで
出かけよう
おひさまが顔を
覗かせてる
よく晴れた午後の
さんぽみち
空を見ることを
いつからか
忘れてた
泣いてばかりの日々に
さよならを告げて
さあ
歩いていこう
少し冷たい風が
頬を撫でてく
さあ
歩いていこう
太陽はいつも
空の上で
誰にも
微笑んでるよ
忘れてたものを
取り戻しに
出かけよう
青空が道を
輝かせてる
よく晴れた午後の
さんぽみち
立ち止まることを
いつからか
忘れてた
道端に咲く花に
微笑みを向けて
さあ
歩いていこう
高く羽ばたく鳥が
歌をさえずる
さあ
歩いていこう
太陽はいつも
空の上で
誰にも
笑いかけてるよ
嘆いてばかりの日々に
さよならを告げて
さあ
歩いていこう
少し冷たい風も
気持ち良いんだよ
さあ
歩いていこう
世界はいつでも
空の下で
誰にも
廻りつづけてる
青い空の下で
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
空色
(2006/01/26)
二つの国があって
片方は
雪に閉ざされている
そして
国境を越えれば
そこは常春の国
白い世界の住人は
甘い花に憧れた
緑の世界の住人は
穢れのなさに憧れた
ないものを欲しがって
国境は越えられた
お互いに欲しいものを
自らのものにすべく
雪は踏みにじられ
土と血に染まった
花も踏みにじられ
腐った匂いをまいた
人がいなくなって
国境が消えたころ
白と緑の世界は
再び
静かにそこにあった
ただ静かにそこにあった
もう誰も見なくても
■□■□■□■□■□■□■□■□■□
白緑
(2006/01/22)
さよならは言わない
たくさんの想い出が
隣に寄り添ってるから
例えきみが遠くても
いつだって覚えてる
心の中にいる
さよならは言わない
たくさんのこれからに
いつか出会える日が来るから
例え今は遠くても
いつだって信じてる
心は傍にある
さよならは言わない
またいつか
いつかね
ひとつ
人よりも早くきみに
ふたつ
再び会えるように願う
みっつ
見つけて欲しいよどうか
よっつ
夜風に凍える前に
いつつ
いつか言った言葉も
むっつ
睦みあった日々も
ななつ
七色に光って見えたのだから
やっつ
やっつけてしまわないで
ここのつ
個々の罪も忘れてしまえる頃に
とお
遠くまで行こう二人で
目が乾いて
喉が渇いて
涙も声もかれてしまった
赤い瞳で
鼻を啜って
今にもまるで泣きそうだけど
涙は枯れて
声も嗄れて
ただ苦しげに吐息を零す
しかめた顔も
ひそめた眉も
今にもまるで泣くようだけど
ハンカチ当てて
隠したものは
涙じゃなくて
くしゃみのカタチ
泳いでいた時期を経て
這いつくばっていた時を越え
歩き始めた
世界の重みを肩に乗せ
自分の力を抱え込み
未来の時間を背負い込む
永い長い時間を超えて
人類は
ぼくは
きみは
この背筋を伸ばして
歩き出す
過去が重くなっても
未来に近づくため
やがて
腰を曲げる日がきても
手放さないように
捨て去らないように
この背筋を伸ばして
歩いていく
気になる人から箱を貰った
家に帰ったら開けてくれと言う
待ちきれずに開けると
そこらじゅうが
蕩けたチョコレートの海に沈んだ
暖かい日だからね
空き箱の上から
彼女が涼しい顔で言った
気になる人から箱を貰った
家に帰ってから開けてくれと言う
家まで我慢してから開けると
彼女が入っていた
どうしていいか分からず
代わりに自分が箱に入った
来月開けてもらおう
誰かのためにチョコを買っている
懸命に選んでいたが
カードを添える頃になって
誰も思い浮かばないことに気付いた
仕方がないので自分に贈ったが
美味しかったので問題ない
恋人がチョコレートになってしまった
どうぞ食べてと笑う
抱きしめたいところだが
触れるそばから溶けていく
キスをしたらとても甘かったが
もはや恋人の面影はなかった
恋人がチョコレートになってしまった
どうぞ食べてと笑う
遠慮なくいただこうと
右手を折り取ったが
中が空洞だったのでやめた
実のない見せ掛けの恋だった
9つ入ったチョコがある
どれか一つが毒入りなの
交代で食べましょう
恋人が笑って言った
あなたからどうぞ
4つめを食べて気付いた
ああそういうことか
たくさんチョコを貰った
食べきれずにいると
夜中に音がする
月明かりで覗いてみると
みんな逃げていくところだった
どうやら月が見せてくれた
幻想だったようだ
手渡す勇気がなくて
机の中にチョコを入れて帰った
しかしどうも間違えた気がする
引き返して調べてみると
それは昔の恋人の机だった
机の中は空っぽだった
とりあえず逃げ帰った
ココアを飲みながら外を見ている
酷く風が強いので
誰もがくっついて歩いている
羨ましい気持ちで見下ろすと
浮かんだマシュマロがくっついて
ハートの形をしていた
お前もかと言い捨てて
一気に飲み干した
酷く甘かった
目の前には二つの箱
好きなほうをどうぞ
恋人が言う
片方は本命で
片方は義理よ
真面目な顔で言う
悩んだ末に一つを手にした
ではそういうことで
恋人はそう言って去っていった
怖くて箱を開けられない
こんなに風の強い日は
揺り起こすような風の日は
崩れた墓の石の下から
うずめた記憶が蘇る
百年も前の惨劇も
一昨年喪くした恋の火も
倒れた卒塔婆の隙間から
野草に紛れて蘇る
咲き誇る花を撒き散らし
囀る鳥の羽を毟り取り
こんなに風の強い日は
薄れた墓碑銘滲み出す
暴いてならない過去ならば
覗いてならない過去ならば
地中深くに閉じ込めて
風の止むまでやり過ごせ
こんなに風の強い日は
呼び戻すような風の日は
茂れる草葉の後ろから
殺した記憶が蘇る
風がめくったページ
気付けばもう
追っていた文字は見えず
掴みそこねた話は
まるで
今朝の夢のように
おぼろげなまま
沈丁花の香りに溶けた