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僕のラジオは壊れてしまって

君の声が拾えない

潮騒の合間に

微かに届く

昔の歌だけが聴こえてる

真珠のように

繋ぎ合わせて

言葉の意味を掴むけど

僕のラジオは壊れてしまって

君の心が届かない


君のラジオはどこにあるかな

僕の声は聞こえますか

繋げた言葉で

歌を歌って

君に届くよう祈ってる

木擦れの合間に

僅かに届く

それだけでいいと願ってる

君のラジオは動いてるかな

僕の心は届くかな


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2006.09.30 Sat l 花膳 l コメント (5) トラックバック (0) l top
これはわたしの身体
蹂躙されても

これはわたしの精神
侵掠されても

これはわたしの記憶
強奪されても

これはわたしの言葉
偸盗されても

これはわたしの想い
冒瀆されても

これはわたしの未来
放擲されても

これはわたしの世界
暴虐されても

これはすべてわたし
2006.09.29 Fri l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
いらっしゃいませ
お求めの品は何でしょう
ないものはございませんよ

なるほど
それならば
これがよろしいでしょう

夜を写す写真機です
無骨でありながら繊細な
まさに夜に相応しい一品

赤ら引く朝のひと時も
茜さす昼の微睡みも
玉かぎる夕方の感傷も
すべて烏羽玉の夜に変えてしまう

懐かしく思える旧友も
狂おしく焦がれる恋人も
何気なく行き交う他人さえ
すべて射干玉の夢に変えてしまう

針で穿ったような小さな星の光が
針を落としたような遠い列車の音が
ただ夜の闇でのみ見つかるように

写された光景もまた
夜に変じてこそ分かるものが
あるのやも知れません

ただし一つご注意あれ
これは
光ある世界を夜に遷すもの

被写体がいるべき光を
夜に捕らえて写すならば
その光はさて
どこへ消えますものか

写真機を通して
それはあなたへと

あなたを通して
それは夢の中へと

けれど
これを求むるあなたの心は
光を拒み夜を求める

夢が忍び寄り
闇が侵蝕し尽くせば
かそけき光は呑み込まれましょう

最後の光が消えたならば

夜にすら映らぬ
あなたの影が残るだけ

それでも良ければ
さあ
どうぞお持ちなさい


42:夜写
2006.09.29 Fri l 黄昏通り l コメント (4) トラックバック (0) l top
ユニコーンの鬣のような

白い雲が浮かぶ

混じりけのない蒼の中


腕を伸ばした私の前を

擦り抜けてしまうだろう

ほどけて消えていく姿は

遠ざかって行く聖獣に似ていた


確かに一度は

私の傍らにいたことのある

不思議な感覚に良く似ていた


けれどそれは今も

ときおり

大気の中に溶けて

私の前に現れては消える
2006.09.28 Thu l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
金色の野原を風が吹く

黄金の稲穂が風にそよぐ

金木犀の花が風に匂う

金の公孫樹を風が舞わせて

金色のセイタカアワダチソウが風に揺れる

金糸雀が風に合わせて鳴く

金烏は柔らかく風をあたため

金星が風の向こうで揺らめく

金平糖のような星々を風がくすぐり

白金の満月に風が調和する


秋色の気配を

風が金色に染めていく


41:金風
2006.09.28 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
私たちはいつのまにか
何かを失って生きている

いつのまにか消えていた時間
いつのまにか捨てていた思い出
いつのまにか解けていた絆
いつのまにか無くしていた恋
いつのまにか通り過ぎた若さ
いつのまにか溶けていた足元

目にする光景だって
いつのまにか変わっていて
新しいビルの立つ場所に
以前あったものを思い出せない
毎日通った道沿いの
老木がいつ消えたか思い出せない

私たちはいつのまにか
変化に気付かないまま生きている

哀しいことばかりではなくても
切ないことばかりではなくても

いつのまにか
変わっていくものの境目を知らない

いつのまにか重ねられた時間
いつのまにか増えていた思い出
いつのまにか深まっていた絆
いつのまにか始まっていた恋
いつのまにか手にしていた老成
いつのまにか進んでいた足元

目にする光景だって
いつのまにか変わっていて
新しい風の吹く場所の
涼しさを肌で感じたりする
毎日通る道沿いの
花々の移り変わりを感じたりする

私たちはいつのまにか
何かを受け取りながら生きているのだ
2006.09.27 Wed l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
秋の夜に集く虫が

もの哀しげに鳴くのを

明りを消した縁側で聴いてた


虫の音の数々

細い月が照らした庭先

零れ落ちる萩の花

眠りにつくあなたに

降り注いでる


今でも覚えてる

あなた教えてくれた

草の葉で作った虫

起きないあなたの上に置いた

切なげに鳴く虫の代わりに


揺れる草の中

誰も音を立てない

だからゆっくり眠ろう


土の中のあなたのように


40:草虫
2006.09.27 Wed l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
新発売に心躍っちゃう季節

陳列されたパッケージが誘う季節

食べて食べて

あたしを食べて

遊んで遊んで

ぼくらと遊んで

飲みつくしてよ

読みふけってよ

誘惑あまたの季節

だけども待って

もう少し待って

健診結果の紙が来るまで
2006.09.26 Tue l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
あたしがあたしであるということ

紡ぐ言葉があたし自身のものだということ

贈る想いがあたしの本心であるということ

笑う目元が強要されたものでないということ

流す涙をこらえるのも意思であること

好みの服を自分で選ぶということ

好きな人を心に思い描けるということ

はやる心のまま電車に乗るということ

はずむ気持ちのまま何かを始めるということ

あたしがあたしであること

ただあたしとして有ることが出来るということ


39:只有
2006.09.26 Tue l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
子どもだって色々あるし
悩みの深さは大人と同じ
子どもだって色々いるし
括れないのは大人と同じ

どんなとこにも世界はあるし
大小なんて関係ないし
どんなとこでも世界はあるし
代償なんてどこにもあるし

人生たかだか数年だって
生まれてせいぜい十数年でも

心の重さは大人と同じ

経験値なんて足りてないし
そんなのだけど大人も同じ
色んな決まりに阻まれてるし
それもやっぱり大人と同じ

近頃の子どもとラベルを貼って
ぼくらをまとめて瓶詰めしないで

心の痛みは大人と同じ

ぼくらはまだまだ子どもだけれど
大人も昔はぼくらと同じ
2006.09.25 Mon l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
雲海を眼下に仙境の趣

朋輩と杯酌み交わせし美酒

酔うて吟ずれば誘われし払暁の光輝

打ち寄する波間に零れ落つる寿ぎや

38:酔吟
2006.09.25 Mon l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
あなたの言葉が分からない
違う国の人みたい
あなたに言葉が届かない
隔てられた画面越し

カタコトでもいいかな
一言でもいいかな

あなたに
ありがとうと
それだけ伝えておくよ

あなたの言葉は分からない
辞書片手でも難しい
わたしの言葉はもどかしい
指先止まる画面越し

雰囲気でいいかな
違っててもいいかな

あなたに
また来てねと
それが伝わればいいね
2006.09.24 Sun l 日々の罅 l コメント (0) トラックバック (0) l top
目の届く限りの
世界の中で
君を守っていよう

口を極めて
君のこと
褒め倒しつくそう

だから

安心して
大きくなっていいんだよ

いつか

僕らの目の届かぬ場所へ
僕らの声の届かぬ場所へ
羽ばたいていっても

今この時の思い出を
君の細胞で覚えていて
そして
思い出してくれるように

愛されていると
ちゃんと感じられるように



君の世界を守っているよ


37:極目
2006.09.24 Sun l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
好きじゃないと思うの
見ればイライラするし
一緒にいればウンザリ
むしろ嫌いだと思うの

なのに

君の好きな歌
耳にしたり
君の乗ってた車
目にしたり
するたび
君を思い浮かべる

君の好きそうな本
読んだ時
君の観そうな映画
見つけた時
君に教えたくなる

これっぽっちも好きじゃないよ
君のことなんて
むしろとっても大嫌いだよ

なのに

どうして笑ってるの

毒を吐いてる酷薄な台詞に
独り言みたいな打ち明けの言葉に
2006.09.23 Sat l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
まだ大丈夫
まだ大丈夫って
思ってるでしょう

まだ間に合うって
まだまだ余裕って
思ってるんでしょう

気付けばがけっぷち
時間はなくて
飛び込むか
諦めて引き返すか

心の準備もしていないのに

それで満足なんて
得られるつもり?
それで納得なんて
出来るつもりなの?

やれることはやったから
出せる力を出したから
どんな結果も悔いはないって
そう言ってご覧なさいよ

時間があれば出来たって
ちょっと調子が悪くってって
あとで結果にけちをつけても
そんなのただの言い訳よ

まだ大丈夫
まだまだ行けるって
自分に言うならいいけれど

まだ余裕だって
まだ楽勝って
過ぎ去る時間は耳を貸さないわ

だから
ほら
さっさと始めて


(2005/08/31)
2006.09.23 Sat l 月々 l コメント (8) トラックバック (0) l top
目が覚めたら異世界にいた
目の前には白髯の預言者
目にも眩い装備を一式
目に見えて鋭い剣一振り

口を開いた預言者が
口当たり良く言ってのける
口から出たのは淀みない言葉
口車に乗せられて勇者になった

鼻につくような村人の対応を
鼻であしらう同行者の魔術師と
鼻持ちならない学者の男
鼻を明かそうとどんどん進む

耳障りな自慢話の学者と
耳を塞いだ魔術師の声が
耳鳴りのように呪文に変じ
耳元で聞いた手がかりがかすむ

眉唾物の噂話と
眉を顰めたいような話の数々
眉を開いた二人の連れは胡散臭そうに
眉に火がついたと足を速める

頬を染めてる異国の姫が
頬杖をついた魔術師に迫る
頬返しのつかぬ彼を横目に
頬笑みながら置いてけぼりした

顔を合わせた最大の敵は
顔見知りの筈の誰かに似ている
顔から火が出た魔術師も揃い
顔つきを変えて戦いの火蓋

歯を食いしばった苦闘の後で
歯が浮くような学者の言葉
歯に衣着せず斬りつけかけて
歯の根も合わぬ寒さに気づく

舌先三寸の預言者の再来
舌を振るって雄弁に語る
舌先に丸め込まれぬうちに
舌を出して退散と行こう


目が覚めたら布団の中だった

2006.09.22 Fri l 花膳 l コメント (5) トラックバック (0) l top
この池が凍れば
貴方に会いに行きます
伸ばした黒髪くしけずり
雪と紛う白絹の着物着て
鮮やかな紅さして
貴方に会いに

この池が凍れば
渡って会いに行けます
北風に黒髪なびかせて
吐く息白くけぶる霧となり
喜ぶ頬に赤み差し
貴方に会いに

中途まで歩けば
貴方が会いに来るまで
夜が黒く塗りつぶしても
雪より白い姿のまま
紅い唇に笑み乗せて
貴方を待って

やがて薄き氷が割れて
そこへ導くでしょう
頭上には巨きな冷たい鏡
自身の姿映して微笑むでしょう
底で微笑むでしょう
貴方が見蕩れるよう

この池が凍れば
貴方に会いに行きます


36:氷鏡
2006.09.22 Fri l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
全ての記憶を失くしたら
私は私といえるでしょうか
あなたのことを忘れ去り
自分が誰かも知らぬまま
それでも私といえるでしょうか

足を一歩踏み出せば
右も左も見覚えがなく
どこに向かうか分からずに
何があるかも知らぬまま
それでも歩いていけるでしょうか

鏡に映る顔さえも
自分で自分と分からぬまま
手足は確かに動くのに
それが己と知らぬまま
それでも不安は癒えるでしょうか

全ての記憶を失くしても
私は私でいられるでしょうか
昨日のことを忘れ去り
明日の行方も知らぬまま
それでも私は生きるでしょうか
2006.09.21 Thu l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
曇りの日も晴れの日も

あたしは空を愛してる

星降る空も雨降る空も

夕暮れ時も暁時も

宇宙まで届く青も

血に濡れたような赤も

塗り潰した灰色も

染み渡るような濃紺も

照り付ける太陽も

冴え渡る満月も

儚い虹のかけらも

縁だけが光る雲も

尾を引いて消える星

地平線で広がる太陽

穿たれた雲からの光の帯

まっすぐな飛行機雲

朝夕の七色に溶ける空の端

一点に消えていく雲の流れ

音もなく降る霧雨

音を吸い込む粉雪

突き立てるような紫雷

追い立てるような雷鳴

まだ見たことのない極光

まだ見飽きない空の色

あたしは空を愛してる

あたしはこの星を愛してる


35:陰晴
2006.09.21 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
どんなものを書いても

どんなことを書いても

文体を変えていても

法則を変えていても

取るに足らない文でも

酷くシリアスな文でも

一人称の話でも

三人称の話でも

日記でも

詩でも

物語でも

それを読んで

ああ

あの人の文だなと

分かるような

そんな持ち味があるといい

いいえ

ああ

私の文なのだなと

分かるような

そんな味わいがあればいい


34:書味
2006.09.20 Wed l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
ネタに困っていたら、掲示板でこんなのはいかが、と、提供いただきました。
提案者はアクアさん。
テーマは「詩語」

少しずつお題をいただいているので、この記事は使いまわしですが、余り昔になりすぎて、お題がなんだったか検索するのが手間なので、この辺に持ってきました(笑)


01:幽花
02:風揺(風ハ揺グ)
03:洗夢(夢ヲ洗フ)
04:長夏
05:雨昏(雨ハ昏ラシ)
06:夏木
07:波声
08:星点(星ハ点ズ)
09:茶香(茶香シ)
10:暮蝉
11:疎星
12:残炎
13:暗通(暗ニ通ズ)
14:九夏
15:閑夢
16:如秋(秋ノ如ク)
17:詩魔(これは夏の部から)
18:懐君(君ヲ懐ッテ)
19:青灯
20:不帰
21:他時
22:数尽(数ヘ尽クス)
23:残蝶
24:凝紫(紫ヲ凝ラス)
25:客夢
26:歩月(月ニ歩ム)
27:無奈(奈ントモスル無シ)
28:佳期
29:回看(回リ看ル)
30:桂香
31:天心
32:暗渡(暗ニ渡ル)
33:引雨(雨ヲ引ク)
34:書味
35:陰晴
36:氷鏡
37:極目
38:酔吟
39:只有
40:草虫
41:金風
42:夜写
43:夢裏
44:秋人
45:孤枕
46:入骨(骨ニ入ル)
47:碧落
48:空望
49:半夜
50:地白(地ハ白シ)



以上が、例として挙げていただいた題材なのですが、どうも、ざっと調べたところ、「詩語」を閲覧させてくださるサイトが見当たらないようなので(皆さん、同じ本を参考図書として推奨なさってるので、買え、ということなのだろう(笑))、ひとまず、こちらのお題に挑戦しようと思います。

別サイトでも、お題提供してもらったばっかり。他人頼りだなぁ(笑)


こちらでは、出来れば「タイトル縛り」のアイディアを募集してます。
今まで「五十音」「アルファベット」「漢数字、漢数詞」「和名色」などで挑戦してます。
適度な量で、なおかつ、色々捻れそうな、そんなもの、何かありませんか?(笑)
2006.09.20 Wed l カテゴリの説明 l コメント (4) トラックバック (0) l top
沸き立つのは雲
湧き立つのは泉
そして私の心

溢れ出るのは花蜜
溢れ出るのは夜星
そして私の想い

踊り出すのは小鳥
躍り出すのは仔猫
そして私の夢想

匂い立つのは緑
匂い立つのは夜明け
そして私の言葉

世界に包まれて
喜びが満ちる

そして
私はここで

新たなる話を紡ぐ
2006.09.20 Wed l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
明日で世界が終わると言う
差し当たって
やりたいことも
会いたい人も思いつかず
眠ることにした
終焉が近づく頃に目覚めてふと思った
自分のところにも誰も来なかったんだな



長いこと塔に閉じ込められている
ぼんやりと地上を眺めていると
白馬の王女がやってきたので
ここから出してくれないかと言うと
呆れたように肩を竦めて
塔を蹴り倒してくれた
この場合やはり彼女に恋するべきかと
暫く悩んで顔を上げると
王女は既にどこかへ行った後だった



風が強いので身の軽い彼女は
僕に会いに来られない
僕もまた外に出られない身だ
そんな難儀な恋はやめてしまえと
友人が言ったが
難易度で恋をするものではないと
僕は誇らしげに答えた
その途端
ここ数年彼女と会ってない事を思い出した
すでに彼女の顔も名前も忘れていた



この海岸には死体が流れ着くのですと
隣に立っている男が言った
見ていると遠くから何かが流れてくる
打ち上げられたものは
どう見ても私の恋心だった



ホテルのラウンジで
酒を飲みすぎたらしい
部屋へ戻るエレベーターは
なぜか月に到着していた
目の覚めるほど青い星が
頭上でウィンクしていた
その引力に惹かれて
気づいたときにはホテルのベッドにいた
暫くこの星の魅力から離れられそうにはない



指に目をやると
赤い糸が結んである
これはいわゆる運命というヤツだな
そう思いながら手繰っていたが
一向にその先に辿り着けない
いいかげんくたびれたので
通りすがりの老婆に
糸切り鋏を借りてちょん切った



庭先で小鳥が煩い
見ると電線の上で
一生懸命囀っている
何をそんなに必死なのかと問うと
離れ離れの恋人に
落ち合う場所を電話しているのだと鳴く
電線の意外な利用者を知った



チョコレートが食べてくれと言う
かわいらしい少女の形のそれを
頭から食べるか足から食べるか悩んでいると
じれったそうに頭から飛び込んできた
あっという間に蕩けて全身に甘さが廻る
まるで毒のような恋だと思った



骨董店でティーカップを手にしている
一目見て気に入った
それは喪った片割れを探しているカップだと
顔の見えない店主が言った
それなら私が探してやろうと告げると
ご心配には及ばぬと言われる
気づけば私自身がカップになっていた
仄暗い陳列棚に並んで
甘いお茶を待つ羽目になった



私を抱いているのは
紛れもなく昔の恋人なのだが
どうしても見覚えがない
誰かと問うことも出来ずに
ぬくもりに身を任せていると
一つだけ分かった
あちらも私が誰なのか
分からないらしかった
2006.09.19 Tue l 花膳 l コメント (6) トラックバック (0) l top
ここに空がある

ここに土がある


昇る太陽が笑んで

昨夜の雨を照らす

濡れた土がひとつ

溜め息を吐いた

揺れる空気は上へ

空を目指して進む

天と地とを繋ぐ

水の線を引いて


落ちたものは上り

上るものは落ちる

そして雲となって

やがて雨に変わる


ここに空がある

ここに土がある

循環の線の中で

生命もまた巡る


33:引雨(雨ヲ引ク)
2006.09.19 Tue l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
暗闇に乗じて
黒猫の尻尾を渡って
蔵の中へ
海月のような手触りの闇
くらくらするよな手探りの闇
較べられない眠った品々
眩む筈の目の
暗んでしまう
位の良い物勘で選んだ盗人を
蔵ごと
喰らった
黒猫と夜



32:暗渡(暗ニ渡ル)
2006.09.18 Mon l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
ゆうるり流れる時間はいつも
あなたと眠った夢に似ている
月にも星にも行かれるくらい
何をも超える心地に似てる
静かに湛えて潤すくらい
遥かな泉の水に似ている

ゆうるり流れる時間はとても
私を浸して癒してくれる
2006.09.18 Mon l 花膳 l コメント (4) トラックバック (0) l top
あまりに風が強いので

あまりに風がわめくので

夜の道路に立ち尽くす

足を開いて

両手を広げて

風に吹かれて立ち尽くす


要らないもの全て

連れて行け

垂れ込める雲の中

浄化して

どこかの町で降り注げ


あまりに風が強いので

飛ばされそうな身体ごと

全てを任せてみた夜
2006.09.17 Sun l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
踊り場のない 階段を
転がり落ちて いくように

あなたと わたしは
いつだって

乱暴なまでの 恋をした


真夏の昼の 太陽の
噛み付きそうな 熱のよに

出会った 二人は
急速に

凶暴なまでの恋をした


闇夜に光る 目のように
鋭く尖る 牙のよに

互いが 互いを
喰らいあう

獰猛なまでの 恋をした


どんなに怪我を 負ったって
いくつも傷が 付いたって

わたしは だれかと
いつだって

致命的なほど恋をする


(2005/08/25)
2006.09.17 Sun l 月々 l コメント (4) トラックバック (0) l top
天に心があれば

この雨は

誰のための涙か

天に心があれば

この星は

誰のための光か

天に心があれば

この雷は

誰を裁く剣か

天に心があれば

この虹は

誰を渡す桟か

けれど

天に心があれば

痛みすぎて

悼みすぎて

きっと晴れ間は来ぬだろう


天に心があると

思う人こそ

愛すべき人だ



31:天心
2006.09.16 Sat l 花膳 l コメント (0) トラックバック (0) l top
だれのものでもないきみだから


きみにはしあわせになってほしいよ
でも
それをきめるのはぼくじゃない

きみじしん


きみにはわらっていてほしいよ
でも
それができるのはぼくじゃない

きみじしん


きみにはいきていってほしいよ
でも
それをえらぶのはぼくじゃない

きみじしん

だけど
きみがしあわせにわらっていきてれば
ぼくはうれしい

おぼえていて
それだけでも




だれのものでもなくてあたしはあたし


あたしがきれいになるのは
だれのため

あたしのため

あたしがかしこくなるのは
だれのため

あたしのため

あたしがすてきになるのは
だれのため

あたしのため

あたしのじんせいのしゅやくは
だれのもの

あたしのもの

だけど
あなたがそばに
いてくれてもいい



                     (2005/08/21)


2006.09.16 Sat l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top