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9歳の夏
あたしはウィルビーと一緒だった
白くて清潔な仔熊

お日様に会いに行くときも
月夜の夢路に行くときも
一緒だった

抱き上げてしまえるほど軽くて
抱きしめてしまえるほど小さい
なのに
抱きとめるかのように頼れるウィルビー

よく晴れた青空に目を細めると
睫毛に溜まった光の粒が見えることや
いきなりの夕立が訪れると
溶けた道路の上に白い雲が出来ることを

よく冷えた麦茶の入ったグラス
浮かび上がる水滴にいくつもの話があること
いきおいよく回る扇風機の羽根に
話し掛ける秘密の呪文があることを

あたしの膝の上で
あたしの腕の中で
教えてくれた

ふわふわの毛並みの
青い瞳のウィルビー

10歳の夏には
ウィルビーはいなかったけど
あたしは冷凍庫の白熊を食べながら
あの仔熊を思い出して探した

今でも覚えている

9歳の夏
あたしはウィルビーと一緒だった



14:九夏
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2006.08.24 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
夏が終わっちゃう
海に行かないうちに
肌も焼かないうちに

恋さえもしないまま

このままじゃ
まるで冷蔵庫の中
忘れられたアイスみたいに
スプーン投げ出しちゃうほど
かたくなになってっちゃう

賞味期限はないけれど

美味しく食べるなら
攻撃的な太陽の下で

ああ
夏が終わっちゃう

恋さえもしないまま

このままじゃ
まるでクロゼットの中
隠れたままのワンピースみたい
目を瞠るほど可愛くても
肌寒くなってっちゃう

大事に仕舞っているけれど

可愛く着こなすなら
魅力的な太陽の下で


真夏日が続くうちに
誰かあたしを蕩かして

誰かあたしを連れ去って
2006.08.24 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top