誰もが楽しい
誰もが嬉しい
そんなものを
創りだすのは
簡単じゃない
だけど
話を生み出し
映画を
ドラマを
小説や
漫画を
誰もが涙し
誰もが感じる
そんなものを
創りだすのは
簡単じゃない
だけど
心を織り交ぜ
絵画を
ゲームを
楽曲や
詩歌を
誰もではないけど
誰かでもない
たくさんの
あなたのために
伝えたくて
それは
簡単じゃないけど
困難じゃない
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飛び上がるほどに
熱いコーヒーと
とろけるほどに
甘いチョコレート
身体の隅々まで
行き渡って
目が覚める
午前十時の
コーヒーブレイク
週の始まる月曜日には
ちょっぴりだるい月曜日には
火傷しそうなコーヒーと
つめたく冷やしたチョコレート
午前十時の
コーヒーブレイク
それがわたしの
おまじない
欲しいと思うものは
すぐ傍にはない
いつだって
それでいいやと
諦めてしまえば
このまま眠っていられるけれど
欲しいと思うことは
すぐにはやめられない
いつだって
それでいいのと
言い聞かせながら
そのまま足を踏み出そう
暑い夏の日差しの中を
寒い冬の木枯らしの中を
欲しいと思うものは
取りに行くしかない
いつだって
雲が余りに遠すぎて
土も芝も花壇も
からからだったので
神様のかわりに
雨を降らせた
じょわじょわと
音立てて吸い込んでく
立ち上る吐息が
涼しい風を連れてきた
空っぽになった浴槽を
鼻歌まじりに洗う
僕が起こした庭の奇跡は
環境にも
お財布にもやさしい
リサイクルの奇跡なんだ
あらあら
いやだ
うそでしょう
ええいくやしい
おでこにぽつり
蚊のせいじゃなくて
気のせいじゃなくて
くっきりはっきり
軽度のにきび
これはちょぴり哀しいぞ
さっぱり洗って
しっとり湿して
すっきり乾かす
せめてもの抗い
それでもすぐには治らない
たったひとつでも
ちょっと大きな
つまるところ
的確に言えば
とっても目立つ
なんてことだろう
にきびのくせに
塗り薬塗っても
根強く痕が
残ってるじゃない
はりきってたの
久々のデートが
二日後に迫る
平素より綺麗と
褒められたいのに
まだ間に合うわ
三日とないから
難しいけど
目立たなくなるまで
もう少しだわ
やれやれ
ゆっくりのんびりだけど
ようやく少し消えたかも
ラインの綺麗な
リネンのワンピース
ルビーのリングと
レースのバッグ
ローズグレーのサンダルで
私の姿に見惚れて
wonderfulと褒めてくれたね
ん、万事オッケーと、心で快哉
黄金が揺れる
夏の日の下で
緩やかに揺れる
波が打ち寄せる
重たげにそよぐ
光る稲の海原
熱い陽射しの中
一家総出で笑う
波を掬い取って
海を袋詰めて
黄金よりもなお
光る汗を滴らせ
真夏の世界の中
稲穂が光る
刈り取った田にも
優しい金が光る
じきにあの黄金は
どこかの食卓で
艶やかに光る
美しい白になる
ぼくたちは
たかだか
ひとにぎりの
僅かな糧のために
生きている
あっというまに
なくなるほどの
ささやかな糧を
大事に大事に
身にして
血にして
肉にして
そしてまた
そのなかの
ひとつまみの
僅かな種子を
蒔いている
あっというま
なんてことないほど
つつましい成長で
芽を出し
葉が茂り
実がなって
ぼくたちは
たかだか
ひとにぎりの
ささやかな才能を
大事に大事に
身にして
実にしていく
予想最高気温は35℃
体感温度はそれ以上
遮る影すら残らない
わずかな影さえ温もった
大空は痛いほどに青く
湧き上がる雲は空の端
我が物顔の太陽が
素肌を焦がす音がする
熱されたアスファルト
暖められた空気
濃密な夏が
町を支配する
今日は朝から真夏日で
きっと夜には熱帯夜
体温すらも煩わしい
冷たい水面で眠りたい
梅雨はとうに明けきって
夕立の気配は遠すぎて
人も草木もなにもかも
蒸発していく夢を見る
殺人的な良い天気
腐っていく
指先から
足元から
内臓から
狂っていく
指先が
骨格が
脳味噌が
凶暴なまでの
狂気の中で
濁っていく
眼球が
吐く息が
考察が
曇っていく
眼球が
血液が
行く先が
強硬なまでの
脅威の中で
乾涸びてしまう前に
今日という一日を終えよう
初めてのデートのふたりは
慣れない浴衣を着るような
微妙な距離で見上げる花火
楽しいねと見合って笑った
いつしか繋いだ指先熱い
輝く笑顔が近付けたのか
一緒に見つめたふたりの未来
ひざしの中にいたっけ
まばゆい笑顔のあなた
わすれないでと問えば
りふじんだと言わんばかり
ばいばいなんてしたりしないわ
ただふたりあなたといま
けがれないほどの夏のひ
硝子の鳩は
冷凍庫の中
つめたく冷やされ
摂氏を侘びる
切子のグラスは
月涙を満たし
冷えた小鳩が
余情を謡う
夏の夜情に
とても似合った
澄んだ硬音が
グラスに響く
微々たる羽毛は
氷の結晶
噛み砕かれて
涼気を満たす
猟奇にも似た
真夏夜の宴
月星花火は
透明の彼方
灯明の影で
絵になる鳩は
夢に羽ばたき
凍って眠る
甘い言葉に
騙されてはいけません
そんなのは
100m先の自販機で
コーラの隣に並んでる
やすくて簡単に手に入って
しかも
骨まで溶けてしまうから
辛い言葉に
騙されてはいけません
そんなのは
山葵の効きすぎた寿司の
ネタの下に隠れてる
姿は簡単に見えなくて
しかも
鼻まで突き抜けてしまうから
なにごとも
ほどほどに
上手に摂って
美味しい人生を
黄昏通りは
いつでも黄昏てる
朝も昼もない
夜もこない
いつだって
道はいつでも
曖昧なままで
遠くに立つ人も
行き違う人も
誰なのか分からない
眠そうな八百屋の
野菜や果物は
薄暗い時間の中
色も輪郭も
失っている
古ぼけた本屋の
小説や雑誌は
仄昏い時間の中
時も詳細も
喪っている
一昨年の隣には
来年が
明日の傍らに
昨日が佇む
歪む硝子窓に
昔の通りが映るが
目を凝らした途端
夢のように消える
黄昏通りは
いつでも黄昏ている
暗い骨董屋には
時間を時空を
世界を超えて
訪れる客の
望む品が並ぶ
全てが曖昧な
黄昏た通りへ
辿り着けるのは
彷徨う者だけ
一緒に泣いてはくれないけど
一緒にいてくれる
違う意見を持ってるけれど
同意をしてくれる
真剣に怒るけれど
けして突き放さない
何ヶ月も音沙汰なくても
気兼ねなく誘える
けして近くはないけど
十年後もきっと同じ距離
それが
あなたとわたしの
関係
子どもたちは夏休み
カラダ中に満ち満ちた
エネルギーをもてあます
子どもたちは夏休み
ココロ中に満ち満ちた
好奇心をもてあます
子どもたちは夏休み
朝の日課の宿題は
時間があるけどもてあます
子どもたちは夏休み
天気なんて構わない
雨でも晴れでも駆けていく
梅雨はまだ
明けきらない
夏はまだ
始まらない
それでも
子どもたちは夏休み
閉め切った窓の向こうでは
子どもたちは夏休み
暑さを物せず駆けていく
大人たちは仕事しながら
遠い歓声に気を馳せる
いやなことがあった日も
解せない気分になった日も
大きく深呼吸して
考えてみるんだ
これもまあ
一つの人生経験
腹立つことがあった日も
泣きたい気分になった日も
暫く目を閉じて
考えてみるんだ
これもまた
一つの人生経験
深呼吸が
大きな溜め息に聞こえても
目を閉じたら
目尻に涙が光っても
これもまた
一つの人生経験
そう思ってみることにする
くしゃりと紙切れを握りつぶした
投げ捨てたそれをゴミ箱がはじいて
外した人生のはじまりを告げる
クーラーの効いた部屋を飛び出し
立ち止まったら熱風が包んで
自由と束縛の天秤が揺れる
機械のような自分と
図面のような毎日を
抜け出して
全てのしがらみを捨ててみた
髪をなぶる風と太陽に身を投げて
明日吹く風のことは考えず
目に付いた電車に飛び乗った
窒息してしまうほどの積乱雲が
目を射る海原を殺しては
解放と後悔は紙一重と笑った
既製品の自分と
マニュアルの毎日を
投げ捨てて
好きなことをして立ち尽くす
夏の暑さにやられたのさと
陽気な青空が冷やかした
(2005/06/29)
いつでもしたいことを
口にするだけで
あなたはなにひとつ
始めたりしないね
時期が悪いだとか
やる気はあるとか
言い訳するばかりが
うまくなるね
いいかげん
自分を見つめなおしな
何がしたいんだろうって
人に聞いたところで
分からない
何が出来るんだろうって
口にしたところで
進まない
理屈や理論捏ね回して
口にするだけで
あなたはなにひとつ
身につけてないよ
人は人だとか
恥ずかしくないよとか
見栄張ってるばかりで
動かないね
いいかげん
自分を批判しな
何が分かるのだなんて
人に言ったところで
意味がない
何が偉いのだなんて
開き直ったって
進まない
いいかげん
美化した自分は捨てなよ
行くと決めたはずなのに
まだ迷ってしまう
ここを去ることで失う
掴んでいた幸せ
このままでいても
幸せは少しずつ風化して
やがて砂のように落ちるから
手放そうと決めたのに
さよならを言うのは
やっぱり少し怖い
言おうと誓ったはずなのに
まだ躊躇ってしまう
それを告げることで無くす
傍にいたぬくもり
このままでいても
温度差を埋め合おうと
互いを蝕んでしまうから
離れようと決めたのに
このドアを出てくのは
やっぱり少し怖い
このままでいても
得るものはもう
何もないのに
喪うことを恐れて
臆病になる
だけどもう
残らないことを決めたから
まだ迷っているけれど
一人になることで見つかる
何かのために
真っ暗な夜は
やっぱり少し怖くても
(2005/06/27)
雨が打ちつける
ワイパーはもどかしい
夜空は薄暗く
時折
紫色に光る
音が掻き消してく
道路の境界線
アクセルは踏み切れず
時折
世界すら消えてく
見慣れた景色が
違う場所へ繋がる
光の洪水が
夜ごと押し流していく
雨が吹き付ける
フロントは粉々に
夜空が切り裂かれ
時折
エンジンが鳴り響く
道は切り替わる
虚ろな境界線
駆け抜ける速さで
時折
雷鳴が震わせる
見慣れた場所が
知らぬ世界へ繋がる
真夜中の嵐が
すべてを押し倒していく
帰り道が
分からぬままに
恐る恐る駆け抜けていけ
海に行って
プールに行って
映画観て
お買い物して
スイカ食べて
氷食べて
君と遊ぼう
暑い日の中
君と騒ごう
蝉時雨の中
山に行って
キャンプに行って
花火見て
踊ったりして
アイス食べて
麦茶飲んで
君と遊ぼう
強い日の中
君と騒ごう
祭囃子の中
ラジオ体操したり
テレビゲームしたり
友達冷やかしたり
昼寝しまくったり
君と過ごそう
夏の日の中
君とたくさん
遊び倒そう
ほら
夏休みが始まるよ
だけど
宿題はまた明日
夜を裂いて
千切れた鳴き声
雨の中を
濡れていく姿は
見えなくても
どこへ行く
生き急ぐ
打たれてもなお
行く場所がある
時を超えて
呼び交う鳴き声
闇の中で
目指す場所は
見えなくても
どこへ行く
生き急ぐ
もがいてもなお
行く場所がある
短いと
刹那だと
人は言うだろう
一概に
切ないと
人は言うだろう
どこへ行く
生き急ぐ
急いでなどいないのか
それでも
夜を裂いて
蝉が鳴く
たとえば夏なら
たとえば
濃く張り巡らされた熱気の中の
細い糸のような涼気を感じ取れる
たとえば
乾いたアスファルトの匂いの中の
ささやかな甘さの花を感じ取れる
たとえば
眩い陽射しと陽炎の揺らぎの中の
一粒の雨粒の煌きを感じ取れる
たとえば
喧騒と怠惰の雑踏の中の
僅かな葉擦れの音を感じ取れる
それを全身で感じ取って
持てる全てで受け止める
それは全心に行き渡って
持てる全てが澄み渡る
たとえば夏なら
そうやって
ずっと長いことやってきたから
塵も積もれば山になる
ずっと長いこと続けてたから
千里の道も縮まった
継続は力
続くだけでも力になる
時は金
続くだけでも宝になる
そして
人は心
出会うだけでも支えになる
ずっと長いこと続けてきた
細々とでも
遅々としてても
ずっと長いこと続けてきた
そしてきっとこれからも
ある日
森の中で
出会った
熊さんは
まさかりを
担いだ少年と
ふたり仲良く
踊ってた
こちらに気づいて
手招きする
お嬢さん
おいでなさい
あら熊さん
ありがとう
だけど
私は海へ行くの
少年が熊と
目配せをした
踊りを止めて
ふたりで手招き
それなら
なおさら
さあさあ
おいでなさい
少年が
朗々と歌いだす
熊さんは
滔々と語りだす
青い海
白い波
蒼い空
白い雲
光る海
眩い波
光る空
眩い雲
そしてきみ
手招かれた私に
手を差し出して
熊さんは笑った
さあ手を出して
気づいたら海
目の前は空
森は彼方に
遠く見えない
そして
手の平には
白い貝殻の小さなイヤリングが
光ってた
タチの悪い冗談みたいだ
こんなことがあるなんて
夢じゃないことは
百も承知さ
だけど
こんなことになるなんて
どこでどう間違えたのかな
思い出しても
思い出せない
タチの悪い病気みたいだ
こんなことになるなんて
嘘じゃないことは
二百も合点さ
だけど
こんなことがあるなんて
どこでどう迷ったのかな
思い出しても
思い出せない
どこかでだれかが
笑うんだろう
ご愁傷様
ご苦労様って
だけど
どこでどう曲がったのかな
思い出しても
思い出せない
タチの悪い悪夢みたいだ
醒めても覚めても
抜け出せないんだ
サウナのような
熱気の中を
泳いでいく
あたしは赤い金魚
苦しげに身悶える
砂漠のような
温度の中で
呼吸する
あたしは赤い金魚
乾き切る息を吐く
水分が奪われていく
唇も
瞳も
肺も
すべてすべて
乾涸びていく
熱い吐息で
問い掛ける
誰かあたしに
冷たい水を頂戴
溶けた道路に貼り付く
赤い染みになる前に
鎖骨に溜まる
陽射しの中で
溺れてく
あたしは赤い金魚
誰かあたしを
その手で掬い上げて
誰かあたしを
ここから救い上げて
遠くから
ここからは見えないほど
遠くから
潮騒の音が聞こえる
あなたが
行ってしまった
あの浜辺に
泣くように
囁くように
打ち寄せる
潮騒の音が聞こえる
蒼い月が照らす波間に
屍骸が漂う
崩壊の予感を孕み
境界の危うさを潜めて
銀色の魚の接吻が
終局の合図
天使は居らぬ
骸を喰らう白き波間に
緋い月の涙が滴るを
一瞥もくれずに啜り尽くして
瞑い微笑も泡沫に消える
果て無き広い海の上には
欠けた孤月が
全てを知り過ぎ
砕けて散り逝くのみ
(2005/06/24)