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吐き気がした

血の気が引いた

顔は火照った

いやな汗が出た

足が震えて

緊張した

上手く息が出来なかった


こんなにも

嘘を吐くことは

苦行だった


取り繕おうとした

体裁を整えようとした

平気な振りをした

逃げ出したかった

指が食い込むほどに祈った

露見を免れたかった

白状したかった


こんなにも

嘘を固めるのは

難業だった


素直に非を認めても

死にはしなかったのに


塗り固めたものが

崩れないことを祈る

この長く続く拷問よりも

もっと早く終わるのに


嘘吐きでも平気であるか

正直者を目指すか

どちらかにするべきだった
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2006.06.02 Fri l 日々の罅 l コメント (4) トラックバック (0) l top
こんな夢を見た

噎せかえる香りの中
女が花に包まれていた
それで女が死んだのだと分かった
梔子はただ咲きつづけている



いろいろな空の下で
紫陽花が色づいていく
朝焼け夕暮れ青い空
全ての色を吸い取られ
色を失くした空から
雨が降ってきた
梅雨の始まる理由が分かった



王様が娘姫のために
アメジストとサファイアの宝玉で
庭を飾ったが
一晩経つと
朝露に輝いたそれは
庭石菖になった
国はおかげで貧窮して
やがて滅んでしまった
王女は崩れた城の庭で
庭石菖に囲まれている



目が覚めると
姫小判草の一房だった
人になった夢を見たと
澄んだ音を立てて笑った
そうして
もう一度眠ることにした



断崖絶壁の上で女が言った
私が先に降ります
オシロイバナの落下傘を巧みに操り
女がくるくると降りていった
見惚れているうちに
残りの花は萎れてしまった
男は取り残された



百合の花を抱いた女が
夜の中にいる
白い花弁がぼんやりと
女を照らしている
百年前に死んだ女は
そのまま闇に消えた
百合の強い香りだけが漂っている



搭の外に螺旋階段が続いている
ぐるぐると上って行くと
やがて世界が見えてきた
幾つものネジバナの搭に
同じように上る男が見えたが
囚われた王女を
誰も見つけられなかった



庭で何かが爆ぜる音がするので
出てみると
星の形の花が咲いていた
何とかマンネングサというやつだなと
つぶやくのを花は馬鹿にしたように笑って
天に上って星空になった
男はそれから毎晩
植物図鑑を手に
星が落ちてくるのを待っている



泰山木が匂っている
女の片腕を抱いた男が
夜靄をその花弁に汲んだ
灯りを消した部屋の中
靄が転じた美酒を飲んで
女の腕はなお白く光る
そしてそのまま
男の首を絞めた



庭に女の顔が咲いている
眠った美しい顔だ
細かな霧雨が
産毛を濡らして珠になっている
見惚れていると
不意に眼を開けて哄笑した
笑い声は三日三晩続いたが
晴れた日に枯れてしまった
涙の種子が庭を埋め尽くしていた




2006.06.02 Fri l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top