この国は
ぐうたらな亭主のようだ
汗水垂らして女房の稼いだ金を
取れるだけ搾り取って
呑む打つ買うで使い切る
そのくせ言うのだ
誰のおかげで暮らせてると思うんだ
力に差があるので女房は逆らいきれず
子どももいるので逃げ出すことも出来ず
しかし思っている
その横っ面ひっぱたきたい
そんなことを思った
昼のニュースの時間
スポンサーサイト
接することでしか
誰かの愛情を
確認できないなんて
なんて幼稚な考えなの
しばらく離れていたからって
嫌われたのかもしれないなんて
なんて不安な感情なの
自分に自信がないのね
自分自身を持てないのね
分かるけど
考えすぎては駄目
疑心暗鬼になるほど
毎日は息苦しくなるわ
信じることでしか
誰かの愛情は
確認できないのよ
なんて簡単なことなの
信じればいいの
誰かを
自分を
愛情を
青空で見つけた白い月
あまりにも頼りなくて哀しくなる
あなたと見たあの日の月と同じ筈なのに
まるで捨てられた仔猫のようね
誰かの手を求めてる
ねえ 何が変わってしまったの
ねえ あなたがいないだけで
ほら
こんなにも消えてしまいそうな
昼下がりの月
帰り道見つけた銀の月
さよならと口にして泣きたくなる
あなたの瞳はあの月よりも冷たかったね
まるでありふれたドラマのようね
そのうちきっと忘れるの
ねえ 何が変わってしまったの
ねえ 私は変わらないのに
ほら
星空で輝き続けてる
あの月だって
覚えているかしら
あの日の言葉
あの月に誓うと言ったのに
波が月に導かれるように
月は太陽に照らされるように
いつまでも
変わらないと思いたかった
ねえ 何も変わっていないの
ねえ あなたはいないけれど
ねえ 何も言えなかったあの日は
ねえ 戻っては来ないけれど
ほら
やっと今
前を見て歩き出せるの
ほら
夕闇が舞い降りて
静かに輝き始めるあの月のように
あの月のように
ほんの少し遠回りして
逢いに行く
春の日の桜
五月の梔子
普段暮らしの中にある
お気に入りの場所
細い路地を通って
ただひとりきりで
逢いに行く
ほんの少し足をのばして
逢いに行く
秋の色の蔦
靄の立つ小池
どこにでもあるような
お気に入りの場所
どこかへと向かう途中の
そのついでに寄る
逢いに行く
それだけで
優しい気持ちになる
愛になる
肌寒い夜は
あなたを
ぬいぐるみのように
抱いて眠る
やさしい心音を聴きながら
人恋しい夜には
心を
ブランケットの中に
包んで眠る
自分の心音を聴きながら
秒針の速さで
あなたの鼓動
それよりも少し速い
私の鼓動
眠れない夜には
時計を
子守唄代わりに
聴いて眠る
架空の心音を聴きながら
開けた窓から入り込む
爽やかな涼しい風が
カレンダーを揺らして
日付を零していった
それで誰も今日が
何日だったか分からず
曜日すらも忘れて
いっそ休むことを決めた
天気は悪くないし
過ごしやすい季節
遠くへは行かなくても
その辺を散策しようか
ブラインド上げた窓から
雲の切れ間の太陽が
壁の時計を照らして
針たちを溶かしていった
それで誰もいまが
何時なのか分からず
太陽も隠れたので
いっそ帰ることに決めた
雨は降りそうにないし
心地いい季節
遠くへは行けなくても
その辺を満喫しようか
月曜日の朝には
そんなことを考える
夢の中でキスをした
あなた笑ってたね
伝えきれない現実を
笑って縫いとめたのね
世界は残酷だわ
あなたのぬくもりを
こんなに感じ取れるのに
泡沫のように消えるんだから
キスだけじゃかえれないよ
かえりたくないよ
繋ぎとめていて
幻でもいいから
抱き合っていた夢の中
あたし気付いてたね
意識できない現実を
隠すように抱きしめて
世界は傲慢だわ
あなたの誰かのこと
こんな時に思い出させる
忘れさせたままにしておいてよ
キスだけじゃかえらないよ
かえしたくないよ
この手を離さないで
今だけでいいから
感じさせていて
目が覚めるその時まで
言葉が出てこなくて
自己嫌悪の渦に飲まれる
君に伝えたいことは
こんなにたくさんあるのに
言葉が使いこなせずに
自己欺瞞の森に呑まれる
先に進みたい気持ちは
こんなにたくさんあるのに
メッセージを残すことも
物語を進めることも
行く手の平原に
道を見つけられない
言葉が浮かびあがらず
自己憐憫の池に溺れかける
抜け出すべき手段は
きっとたくさんあるのに
言葉が見つけきれずに
自己顕示の山は崩れる
表現したいことは
こんなにたくさんあるのに
気持ちを表す返事も
書いている話の接ぎ穂も
行く手の海原に
船を見つけられない
言葉が形にならず
自己実現の指が止まる
世界にちりばめられた言葉は
こんなにたくさんあるのに
言葉が創れなくて
自己感情が路頭に迷う
いっそ捨て去ったとしたら
未来はたくさんあるのか
だけど止められない
きっと止まりなどしない
幾多の言葉に
自己を見つけていこう
恐怖が傍らに隠れてる
怯えてるのはどっち
箪笥の陰に潜んで
机の下に忍んで
いっそ殺せたらいいけど
悪はどちらにもない
持ちつ持たれつの関係
互いに脅かされても
長い手足で
部屋の隅
有益な存在と
分かっていても
心臓には良くないね
共存するものが隠れてる
今どの辺にいるの
足元を擦り抜けて
背後の壁を攀じ登って
八つの手足で
部屋の隅
偉大なる雨よ
願わくば
いま少し
その癒しの滴
かそけきものに
してくれ給え
おおいなる風よ
願わくば
いましばし
その強き息吹き
眠れる如くに
潜め給え
我が身は
翻弄されて
濡れそぼる
傘は飛び服は濡れて
梅雨というより嵐の様相
願わくば
そぼ降る雨と
凪ぐような風を
繊細な手つきで
編む如く
そして
我が身が帰り着くまで
優しく世界を包み給え
甘く熟した果実
まさしくお日さま果実
いただきます
赤く色づく果実
まろやかくちどけ果実
今すぐ口に
太陽の光
いっぱい浴びて
陽気に可愛く
熟れていくんだ
飲み込む前に
たちまち蕩けて
満足の笑顔
ごちそうさま
銀白のツバナの柔らかな穂が揺れる
金網に絡め取られた綿毛
囚われの天使の羽
錆びたフェンスを掴み
血の匂いの涙を流す
檻の中でもがいた翼
夕暮れの中で
震えるように揺れて
飛び立った白
風の中まるで狂うように舞った
銀白の波打つような綿毛
浪の花が人魚を捕らう
夜の帳下りて
遠い潮の香りの幻夢
星の光に剥がれた鱗
深更の中に
怯えるように揺れて
飛び散った白
銀白のツバナの甘やかな穂が揺れる
目の前を横切った綿毛
牡丹雪が行く手を阻む
朝の光浴びて
高い天を目指した獣
繋がれた綱に足掻く
照らす陽射しの中に
脅かすように揺れて
飛び去った白
銀白が揺れる野原を横目に
未だ日の高い刻限の中
目の前を舞い飛ぶ綿毛
自由の風向き選び
空気の中に浮かぶ銀白
束縛を受けない在り様
見つめる視界の中を
いざなうように揺れて
飛び越えた白
春には春の
夏には夏の
気配がすぐそこにあって
太陽や風や草木が
包み込む
世界ごとわたしを
時はいつも
軽やかに
雨のように染み込んで
季節の中で
感じるものは
優しく流れている
咲き誇る花の色も
愛を囀る小鳥たちも
立ち昇る入道雲も
照りつける陽射しも
秋には秋の
冬には冬の
息吹きがわたしに寄り添っていて
夕暮れも涙の色も
甘いほど
わたしを締め付ける
時が来れば
緩やかに
風のように近付いて
季節の中で
感じるものは
静かに流れている
高く遠くなった空も
色づく木の葉の降る音も
凍りついた窓辺も
降り頻る粉雪の白さも
季節の中で
受け取るものは
すべて愛おしい
正直なところ
きみはもう
私に構ってないで
さっさと次の恋を
探すべきだ
たとえこれから
十年二十年
諦めないとしても
きみへの気持ちは
恋にはならない
じつはもう疾うに
恋などではなく
ただの友情であっても
さっさと別の恋を
探すべきだ
私がもっともっと
上手い人間ならば
絞ってたかって掠め取って
利用しつくして
捨ててあげるけど
正直なところ
今のままは
非道になるよりも酷い
さっさとこんなヤツは
忘れてしまうべきだ
構わないと言われても
私がもう
構われたくないのだから
分かって欲しい
恋にはならない
屋根の上に登って
お日様見上げ寝転んだ
水分の蒸発する音がする
遠くで車の音がする
蕩けたアスファルトの上
揺れる鏡に映っている
洗濯物ははためく気配
こんな日にはきっと
とてもよく乾くだろう
薄目で見上げた青い空で
小型飛行機が眠たげに
ぼやけた音を響かせている
屋根の上に登って
日向ぼっこしながら昼寝
目玉焼きの夢を見た
とてもよく出来た舞台だったので
状況は綺麗に整っていたので
言うべき台詞は
それしかなかった
計算され尽くした舞台だったので
流れるように進んでいたので
取るべき行動は
それしかなかった
主演女優に徹する私
分かりやすい脚本
陳腐でチープ
それでもあなたが望むなら
私は演じてみせる
巧妙に仕掛けた舞台だったので
秘密裏に設定されたので
取るべき主導権は
自分だと思ってた
演出家のつもりのあなた
分かりにくい脚本
丁寧でディープ
あなたは脚本ごと全て
私の描いた状況
シケた面してんなよ
びしっと行こうよ
びしっとさ
やる気が出ないって言うならさ
あたしが背中を叩こうか
分かってるんだよ
あたしにも
世の中なかなか楽じゃない
腑抜けた顔してんなよ
ばしっと行こうよ
ばしっとさ
どうせ駄目さと言うのなら
あたしが頬っつらはたこうか
知ってるんだよ
あたしもさ
世の中苦しいことばかり
疲れた笑み見せんなよ
ばっちり笑えよ
ばっちりさ
今日を一日終えたなら
あたしが添い寝するからさ
分かってるんだよ
あたしはさ
世の中みんなが敵じゃない
知ってるんだよ
あたしはさ
世の中案外優しいさ
忘れていたくらい
遠い遠い記憶
ふとした拍子に
思い出した
画面の中に
映った景色が
あんまりにも
懐かしかったから
覚えてないくらい
遠い遠い想い
思わぬ拍子に
思い出した
瞼の裏に
浮かんだ景色が
あんまりにも
鮮やかだったから
この記憶が
真実なのか
私は本当に
あなたと
この景色の中に
いたのか
もう思い出せないのだけど
覚えてないくらい
遠い遠い二人
ふとした拍子に
蘇った
記憶の中の
わたしとあなたは
あんまりにも
微笑ましかった
ちょっと待って
今なんて言ったの
訊き返されるのがいやなら
最初から口にしないで
ちょっと待って
今なにをしたいの
誰何されるのがいやなら
あたしの前ではじっとしてて
わがままね
あたしもあなたも
待たないでいいわ
追いついてみせる
リードしていたいのならば
初めから恋なんてしないで
待たないでいいわ
変わったりしないから
理想の相手が欲しいなら
あなたとはここでさよなら
わがままね
あなたもあたしも
だけど
嫌いじゃないわ
そんなあたしもあなたも
恋をするのは
料理を食べることに似ている
まずお店を選ぶとこから始まる
店構えで決めるのは一種の賭け
どんなに綺麗でも美味しくない店もある
すばらしく汚くても隠れた名店だったりもする
見極める眼力を磨くことが大事
次はメニュー
恋をしたいと思うなら
フルコースを選んでみるといいかも
手順を踏めば踏んだ分だけ
自分に思いこませることが出来るから
思いこみは大切
偽薬だって人を治せるのだから
一皿毎に
恋していると思っていく
恋していると思い込んでいく
ファーストフードや
くたびれた居酒屋の料理や
一杯やった後のラーメンも
悪くないけど
そして食事
目の前の皿を片付けないと次の料理は出てこない
嫌いでも食べてしまわないと片付かない
あるいは
披露宴の料理のようにテーブル一杯埋め尽くしてしまうかも
どっちにしても、目を背けては通れない
見ない振りをしたって
それは消えてなくなりはしないのだから
咀嚼して
飲み込んで
嫌いなところだって
取りこんでしまえるのが理想
それから食後のコーヒー
ようやく全てをクリアしてコーヒーに辿りついて
でも
そのコーヒーが濃いか薄いか
美味しいか不味いかは
やっぱり飲んでみないと分からない
砂糖やミルクを入れるのか
それともブラックでいくかでだって
悩んでしまうかも
それに
本当はコーヒーなんか嫌いかもしれない
それでもようやく全てを終了して
一息ついてみたりする
でも忘れてはいけない
最後の最後には
清算が待っているのだから
羽ばたいてた
行けるはずなんてないのに
羽ばたき続けた
それだけが
生きている証のように
囀ってた
届くはずなんてないのに
歌い続けていた
それだけが
伝えられる手立てのように
あなたが
止まり木をくれたから
あなたが
眠れる巣をくれたから
わたしは
羽を休めることを知った
わたしは
声を嗄らさずにすんだ
けれど
羽ばたくことはやめない
囀ることはやめない
諦めたくないから
信じ続けていたいから
人間ってね
たくさんの細胞で
出来てるんだよ
その全てが
あなただけを好きだなんて
ありえない
わかるでしょう
あなただって
そうなんだもの
うずうずしてるんだ
早く先に行きたい
いそいで欲しいんだ
置いてっちゃうよ
いいこと
時間なんてものは
放っておいたら
進んで行っちゃうのよ
あたしを置いて
あなたを置いて
わくわくしてるんだ
早く先を知りたい
あなたの都合なんて
構っていられないよ
いいこと
タイミングなんてものは
待っていたって
あっという間に擦り抜けちゃうよ
あたしを置いて
あなたを置いて
あたしはもう
待ちたくないよ
いいこと
時間なんてものは
タイミングなんてものは
あなたが作って
今すぐにでも
シアワセってなんだろうって
一日中考えてた
言葉を綴れること
誰かが見てくれること
面白い本に出会うこと
美味しいご飯を食べること
眠たい時に寝れること
大好きな人に逢えること
行きたい場所に行けること
やりたいことが出来ること
誰かがあたしを好きなこと
あたしがあたしを好きなこと
シアワセってなんだろうって
考えても分からない
でも
シアワセに気付くことは出来る
ささやかでも
小さくても
シアワセ感じられることが
私の幸せ
良く降りますね
ええ この雨ですよ
こんな日には
あなたのようなお客様がおいでになる
お望みの品はございますか
ないものはございませんよ
空飛ぶ箱も
手乗りの象も
時を映す鏡も
時間が歪む時計も
良くご存知ですね
ええ もちろんです
ご希望とあらば
買い取りも致しておりますとも
なにをお売りになりますか
なんだってかまいませんよ
ずぶ濡れの顔
隠れた涙
疲れきった足も
破れさった恋も
かしこまりました
ええ ではその指輪を
恋心ごと
美味なる記憶を織り込んで
その品でよろしいですね
返却は致しかねますよ
ときめいた心臓
引き裂けた心
零れ咲いた笑顔も
零れ落ちた涙も
少しやみましたね
小糠雨になりました
この程度ならもう
哀しみには濡れますまい
さあどうぞ
お帰りなさい
次に迷い込んでこられても
あなたはもはや別の人だ
幸も不幸も厭わずに
ご自分のものにすべきでしたね
嘆いても悔やんでも遅いのです
ええ お返しは出来ません
それがここの規則です
それではどうぞ
またのお越しを
世界の王様 御触れを出した
王子の呪いを 解いてくれ
王子の魂 身体を抜け出
世界のどこかで 迷ってる
紫の目と 白い毛並みの
猫に宿ると 言うそうな
砂漠の王女は 白沙を固め
砂漠の薔薇で 目を埋めた
雪野の王女は 粉雪を積んで
極光の粒で 目を入れた
高原の姫は 白毛の苔と
ベリーの瞳の 猫にした
海岸の姫は 真珠の粒と
人魚の鱗で 猫にした
都会の王女は 白金の猫
瞳は輝く アメジスト
けれどもどれにも 王子は宿らず
砂漠の猫は 風に崩れて
雪野の猫は 陽射しに溶けて
高原の猫は 枯れてしまって
海岸の猫は 波に解けた
都会の猫は 攫われてしまう
あたしはぱたんと 絵本を閉じて
隣の仔猫に 言い聞かす
いいこと あなたが王子様でも
けして戻っては いけないわ
とかくこの世は 世知辛すぎて
王子様では 生きてけないの
仔猫は軽く 喉を鳴らして
気のない振りで 大あくび
白い和毛と 紫の目の
あたしの可愛い 小さな仔猫は
そんなわけで 今日もまた
仔猫のままで 昼寝する
重たい雲を掻き分けて
湿った風を押しやって
遠いところに旅に出よう
白すぎるほどの太陽と
目に付き刺さる青空を
追い求めるため旅に出よう
乾いた夏の風が渡る
広い草原に寝転んで
ひなたの匂いの土の上
草笛を吹き鳴らそう
眩しく光る雲が流れる
大海原を前にして
寄せては返す潮騒の歌
松の木陰で聴き惚れよう
大きな雨粒蹴飛ばして
ぬかるむ道を飛び越えて
遠いところに旅に出よう
焦げ付くほどの太陽と
空を突き抜ける雲の城
素肌も灼ける旅に出よう
眩い星の河が流れる
広い砂丘に寝転んで
熱さを残した砂の上
囁きに耳を傾けよう
濃厚に甘い香りに満ちた
秘密の花園に包まれて
囀りさざめく鳥たちの歌
噴水の縁で聴き惚れよう
今にも降りそな雲の下
溢れんほどの水溜りの上
遠いところに旅に出よう
喋ろうとしたら
舌を噛んで
歩こうとしたら
足が縺れた
筆圧高くて
ペン先は折れて
携帯電話は
周波数違い
なんだよ
原因は全部俺自身か
なにをするにも
俺が邪魔して
仕方ないので
首を絞めた
朦朧とした
意識の向こうで
首から腕が
離れたのを知る
なんだよ
妨害も全部俺自身か
翌朝はやたらに
目覚めが良くて
風呂場に向かえば
小指を打った
悪態吐きつつ
時計を見れば
いつの間にやら
出かける時間
なんだよ
悪いのは全部俺自身か
サイアクは続いても
毎日も続く
もがけど足掻けど
俺は俺でしかない
それに気付いたら
すとんと落ちた
きれいさっぱり
すっきり落ちた
仕事も捗り
舌も滑らか
意中のあの娘の
お誘いメール
それでもたまには
ミスもするけど
致命傷には
至ったりしない
なんだよ
結局は全部俺自身だ
恋をしている間
あたしはずっと闇の中にいた
目を見開いていても
どんなに耳を澄ませても
灯りひとつない闇の中では
何も見えなかった
恋なんてそんなもの
すべては手探り
すべてが曖昧
それでも良いと思っていた
悟れなかった頃のあたし
彼の顔なんて見えなかったし
彼の心なんてさわれなかった
見えた気がして
さわれた気がした
それだけだった
恋をしている間
あたしは盲目だった
ていうか
悟ってしまったら
きっと恋なんて
終わっちゃうのだ
(2005/04/28)
道端に
「楽」が一つ落ちていた
雨に打たれて濡れていた
ぼくは
そいつを横目で見ながら
握った傘の柄 ひと廻し
「楽」でいるのもラクじゃない
「楽」も楽しいだけじゃない
道端の
「楽」はひっそり落ちていて
見向きもされずに濡れていた
ぼくの
左の袖はしっとりと
革の靴はずぶぬれで
「楽」じゃなくてもラクじゃない
ヒトも楽しいだけじゃない
帰り道
「楽」はやっぱり落ちていて
悟ったように濡れていた
ぼくは
そいつにこっそり笑って
傘に隠れて囁いた
お互い
冷たい雨の中
濡れてそぼつる身の上だ
「楽」じゃないけどラクじゃないけど
「楽」と会えたり楽しいかもね
道端に
「楽」が一つ落ちていた
雨に打たれて濡れていた
ぼくは
そいつに別れを告げて
帰って熱い茶を飲んだ