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この国は

ぐうたらな亭主のようだ

汗水垂らして女房の稼いだ金を

取れるだけ搾り取って

呑む打つ買うで使い切る

そのくせ言うのだ

誰のおかげで暮らせてると思うんだ


力に差があるので女房は逆らいきれず

子どももいるので逃げ出すことも出来ず

しかし思っている

その横っ面ひっぱたきたい


そんなことを思った

昼のニュースの時間
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2006.05.31 Wed l 日々の罅 l コメント (3) トラックバック (0) l top
接することでしか
誰かの愛情を
確認できないなんて

なんて幼稚な考えなの

しばらく離れていたからって
嫌われたのかもしれないなんて

なんて不安な感情なの

自分に自信がないのね
自分自身を持てないのね

分かるけど
考えすぎては駄目

疑心暗鬼になるほど
毎日は息苦しくなるわ


信じることでしか
誰かの愛情は
確認できないのよ

なんて簡単なことなの

信じればいいの

誰かを
自分を
愛情を
2006.05.31 Wed l 花膳 l コメント (7) トラックバック (0) l top
青空で見つけた白い月
あまりにも頼りなくて哀しくなる
あなたと見たあの日の月と同じ筈なのに
まるで捨てられた仔猫のようね
誰かの手を求めてる

ねえ 何が変わってしまったの
ねえ あなたがいないだけで
ほら
こんなにも消えてしまいそうな
昼下がりの月


帰り道見つけた銀の月
さよならと口にして泣きたくなる
あなたの瞳はあの月よりも冷たかったね
まるでありふれたドラマのようね
そのうちきっと忘れるの

ねえ 何が変わってしまったの
ねえ 私は変わらないのに
ほら
星空で輝き続けてる
あの月だって


覚えているかしら
あの日の言葉
あの月に誓うと言ったのに

波が月に導かれるように
月は太陽に照らされるように
いつまでも
変わらないと思いたかった

ねえ 何も変わっていないの
ねえ あなたはいないけれど
ねえ 何も言えなかったあの日は
ねえ 戻っては来ないけれど

ほら
やっと今
前を見て歩き出せるの

ほら
夕闇が舞い降りて


静かに輝き始めるあの月のように

あの月のように
2006.05.30 Tue l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top
ほんの少し遠回りして
逢いに行く

春の日の桜
五月の梔子

普段暮らしの中にある
お気に入りの場所

細い路地を通って
ただひとりきりで
逢いに行く


ほんの少し足をのばして
逢いに行く

秋の色の蔦
靄の立つ小池

どこにでもあるような
お気に入りの場所

どこかへと向かう途中の
そのついでに寄る
逢いに行く


それだけで
優しい気持ちになる

愛になる
2006.05.30 Tue l 日々の罅 l コメント (4) トラックバック (0) l top
肌寒い夜は

あなたを

ぬいぐるみのように

抱いて眠る


やさしい心音を聴きながら


人恋しい夜には

心を

ブランケットの中に

包んで眠る


自分の心音を聴きながら


秒針の速さで

あなたの鼓動


それよりも少し速い

私の鼓動


眠れない夜には

時計を

子守唄代わりに

聴いて眠る


架空の心音を聴きながら
2006.05.29 Mon l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
開けた窓から入り込む
爽やかな涼しい風が
カレンダーを揺らして
日付を零していった

それで誰も今日が
何日だったか分からず
曜日すらも忘れて
いっそ休むことを決めた

天気は悪くないし
過ごしやすい季節

遠くへは行かなくても
その辺を散策しようか


ブラインド上げた窓から
雲の切れ間の太陽が
壁の時計を照らして
針たちを溶かしていった

それで誰もいまが
何時なのか分からず
太陽も隠れたので
いっそ帰ることに決めた

雨は降りそうにないし
心地いい季節

遠くへは行けなくても
その辺を満喫しようか


月曜日の朝には
そんなことを考える
2006.05.29 Mon l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
夢の中でキスをした
あなた笑ってたね
伝えきれない現実を
笑って縫いとめたのね

世界は残酷だわ
あなたのぬくもりを
こんなに感じ取れるのに
泡沫のように消えるんだから

キスだけじゃかえれないよ
かえりたくないよ

繋ぎとめていて
幻でもいいから


抱き合っていた夢の中
あたし気付いてたね
意識できない現実を
隠すように抱きしめて

世界は傲慢だわ
あなたの誰かのこと
こんな時に思い出させる
忘れさせたままにしておいてよ

キスだけじゃかえらないよ
かえしたくないよ

この手を離さないで
今だけでいいから


感じさせていて
目が覚めるその時まで
2006.05.28 Sun l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
言葉が出てこなくて
自己嫌悪の渦に飲まれる
君に伝えたいことは
こんなにたくさんあるのに

言葉が使いこなせずに
自己欺瞞の森に呑まれる
先に進みたい気持ちは
こんなにたくさんあるのに


メッセージを残すことも
物語を進めることも
行く手の平原に
道を見つけられない


言葉が浮かびあがらず
自己憐憫の池に溺れかける
抜け出すべき手段は
きっとたくさんあるのに

言葉が見つけきれずに
自己顕示の山は崩れる
表現したいことは
こんなにたくさんあるのに


気持ちを表す返事も
書いている話の接ぎ穂も
行く手の海原に
船を見つけられない


言葉が形にならず
自己実現の指が止まる
世界にちりばめられた言葉は
こんなにたくさんあるのに

言葉が創れなくて
自己感情が路頭に迷う
いっそ捨て去ったとしたら
未来はたくさんあるのか


だけど止められない
きっと止まりなどしない
幾多の言葉に
自己を見つけていこう
2006.05.27 Sat l 花膳 l コメント (4) トラックバック (0) l top
恐怖が傍らに隠れてる

怯えてるのはどっち

箪笥の陰に潜んで

机の下に忍んで


いっそ殺せたらいいけど

悪はどちらにもない

持ちつ持たれつの関係

互いに脅かされても


長い手足で

部屋の隅


有益な存在と

分かっていても

心臓には良くないね


共存するものが隠れてる

今どの辺にいるの

足元を擦り抜けて

背後の壁を攀じ登って


八つの手足で

部屋の隅
2006.05.27 Sat l 日々の罅 l コメント (0) トラックバック (0) l top
偉大なる雨よ
願わくば
いま少し
その癒しの滴
かそけきものに
してくれ給え

おおいなる風よ
願わくば
いましばし
その強き息吹き
眠れる如くに
潜め給え

我が身は
翻弄されて
濡れそぼる

傘は飛び服は濡れて
梅雨というより嵐の様相


願わくば
そぼ降る雨と
凪ぐような風を
繊細な手つきで
編む如く

そして
我が身が帰り着くまで
優しく世界を包み給え
2006.05.26 Fri l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
甘く熟した果実
まさしくお日さま果実
いただきます

赤く色づく果実
まろやかくちどけ果実
今すぐ口に

太陽の光
いっぱい浴びて
陽気に可愛く
熟れていくんだ

飲み込む前に
たちまち蕩けて
満足の笑顔

ごちそうさま
2006.05.26 Fri l 花膳 l コメント (4) トラックバック (0) l top
銀白のツバナの柔らかな穂が揺れる
金網に絡め取られた綿毛
囚われの天使の羽

錆びたフェンスを掴み
血の匂いの涙を流す
檻の中でもがいた翼

夕暮れの中で
震えるように揺れて
飛び立った白


風の中まるで狂うように舞った
銀白の波打つような綿毛
浪の花が人魚を捕らう

夜の帳下りて
遠い潮の香りの幻夢
星の光に剥がれた鱗

深更の中に
怯えるように揺れて
飛び散った白


銀白のツバナの甘やかな穂が揺れる
目の前を横切った綿毛
牡丹雪が行く手を阻む

朝の光浴びて
高い天を目指した獣
繋がれた綱に足掻く

照らす陽射しの中に
脅かすように揺れて
飛び去った白


銀白が揺れる野原を横目に
未だ日の高い刻限の中
目の前を舞い飛ぶ綿毛

自由の風向き選び
空気の中に浮かぶ銀白
束縛を受けない在り様

見つめる視界の中を
いざなうように揺れて
飛び越えた白
2006.05.25 Thu l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
春には春の
夏には夏の
気配がすぐそこにあって

太陽や風や草木が
包み込む
世界ごとわたしを

時はいつも
軽やかに
雨のように染み込んで

季節の中で
感じるものは

優しく流れている


咲き誇る花の色も
愛を囀る小鳥たちも

立ち昇る入道雲も
照りつける陽射しも



秋には秋の
冬には冬の
息吹きがわたしに寄り添っていて

夕暮れも涙の色も
甘いほど
わたしを締め付ける

時が来れば
緩やかに
風のように近付いて

季節の中で
感じるものは

静かに流れている


高く遠くなった空も
色づく木の葉の降る音も

凍りついた窓辺も
降り頻る粉雪の白さも



季節の中で
受け取るものは

すべて愛おしい
2006.05.25 Thu l 贈花膳 l コメント (6) トラックバック (0) l top
正直なところ

きみはもう

私に構ってないで

さっさと次の恋を

探すべきだ


たとえこれから

十年二十年

諦めないとしても

きみへの気持ちは

恋にはならない


じつはもう疾うに

恋などではなく

ただの友情であっても

さっさと別の恋を

探すべきだ


私がもっともっと

上手い人間ならば

絞ってたかって掠め取って

利用しつくして

捨ててあげるけど


正直なところ

今のままは

非道になるよりも酷い

さっさとこんなヤツは

忘れてしまうべきだ


構わないと言われても

私がもう

構われたくないのだから

分かって欲しい

恋にはならない




2006.05.24 Wed l 連玉結 l コメント (3) トラックバック (0) l top
屋根の上に登って
お日様見上げ寝転んだ
水分の蒸発する音がする

遠くで車の音がする
蕩けたアスファルトの上
揺れる鏡に映っている

洗濯物ははためく気配
こんな日にはきっと
とてもよく乾くだろう

薄目で見上げた青い空で
小型飛行機が眠たげに
ぼやけた音を響かせている


屋根の上に登って
日向ぼっこしながら昼寝
目玉焼きの夢を見た
2006.05.24 Wed l 花膳 l コメント (5) トラックバック (0) l top
とてもよく出来た舞台だったので
状況は綺麗に整っていたので
言うべき台詞は
それしかなかった

計算され尽くした舞台だったので
流れるように進んでいたので
取るべき行動は
それしかなかった

主演女優に徹する私

分かりやすい脚本
陳腐でチープ

それでもあなたが望むなら
私は演じてみせる


巧妙に仕掛けた舞台だったので
秘密裏に設定されたので
取るべき主導権は
自分だと思ってた

演出家のつもりのあなた

分かりにくい脚本
丁寧でディープ

あなたは脚本ごと全て
私の描いた状況
2006.05.23 Tue l 贈花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
シケた面してんなよ
びしっと行こうよ
びしっとさ
やる気が出ないって言うならさ
あたしが背中を叩こうか

分かってるんだよ
あたしにも
世の中なかなか楽じゃない


腑抜けた顔してんなよ
ばしっと行こうよ
ばしっとさ
どうせ駄目さと言うのなら
あたしが頬っつらはたこうか

知ってるんだよ
あたしもさ
世の中苦しいことばかり


疲れた笑み見せんなよ
ばっちり笑えよ
ばっちりさ
今日を一日終えたなら
あたしが添い寝するからさ

分かってるんだよ
あたしはさ
世の中みんなが敵じゃない

知ってるんだよ
あたしはさ
世の中案外優しいさ
2006.05.23 Tue l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
忘れていたくらい
遠い遠い記憶

ふとした拍子に
思い出した

画面の中に
映った景色が

あんまりにも
懐かしかったから


覚えてないくらい
遠い遠い想い

思わぬ拍子に
思い出した

瞼の裏に
浮かんだ景色が

あんまりにも
鮮やかだったから


この記憶が
真実なのか

私は本当に
あなたと

この景色の中に
いたのか

もう思い出せないのだけど


覚えてないくらい
遠い遠い二人

ふとした拍子に
蘇った

記憶の中の
わたしとあなたは

あんまりにも
微笑ましかった
2006.05.22 Mon l 日々の罅 l コメント (5) トラックバック (0) l top
ちょっと待って
今なんて言ったの
訊き返されるのがいやなら
最初から口にしないで

ちょっと待って
今なにをしたいの
誰何されるのがいやなら
あたしの前ではじっとしてて

わがままね
あたしもあなたも


待たないでいいわ
追いついてみせる
リードしていたいのならば
初めから恋なんてしないで

待たないでいいわ
変わったりしないから
理想の相手が欲しいなら
あなたとはここでさよなら

わがままね
あなたもあたしも


だけど
嫌いじゃないわ
そんなあたしもあなたも
 
2006.05.22 Mon l 花膳 l コメント (3) トラックバック (0) l top
恋をするのは
料理を食べることに似ている


まずお店を選ぶとこから始まる

店構えで決めるのは一種の賭け
どんなに綺麗でも美味しくない店もある
すばらしく汚くても隠れた名店だったりもする

見極める眼力を磨くことが大事


次はメニュー

恋をしたいと思うなら
フルコースを選んでみるといいかも
手順を踏めば踏んだ分だけ
自分に思いこませることが出来るから

思いこみは大切
偽薬だって人を治せるのだから


一皿毎に
恋していると思っていく
恋していると思い込んでいく


ファーストフードや
くたびれた居酒屋の料理や
一杯やった後のラーメンも
悪くないけど


そして食事

目の前の皿を片付けないと次の料理は出てこない
嫌いでも食べてしまわないと片付かない
あるいは
披露宴の料理のようにテーブル一杯埋め尽くしてしまうかも

どっちにしても、目を背けては通れない
見ない振りをしたって
それは消えてなくなりはしないのだから

咀嚼して
飲み込んで
嫌いなところだって
取りこんでしまえるのが理想


それから食後のコーヒー

ようやく全てをクリアしてコーヒーに辿りついて

でも
そのコーヒーが濃いか薄いか
美味しいか不味いかは
やっぱり飲んでみないと分からない

砂糖やミルクを入れるのか
それともブラックでいくかでだって
悩んでしまうかも

それに
本当はコーヒーなんか嫌いかもしれない


それでもようやく全てを終了して
一息ついてみたりする


でも忘れてはいけない

最後の最後には
清算が待っているのだから
2006.05.21 Sun l 月々 l コメント (0) トラックバック (0) l top

羽ばたいてた
行けるはずなんてないのに
羽ばたき続けた
それだけが
生きている証のように

囀ってた
届くはずなんてないのに
歌い続けていた
それだけが
伝えられる手立てのように

あなたが
止まり木をくれたから

あなたが
眠れる巣をくれたから

わたしは
羽を休めることを知った

わたしは
声を嗄らさずにすんだ


けれど
羽ばたくことはやめない
囀ることはやめない

諦めたくないから

信じ続けていたいから


2006.05.21 Sun l 花膳 l コメント (4) トラックバック (0) l top
人間ってね

たくさんの細胞で

出来てるんだよ


その全てが

あなただけを好きだなんて

ありえない


わかるでしょう


あなただって

そうなんだもの
2006.05.20 Sat l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
うずうずしてるんだ

早く先に行きたい

いそいで欲しいんだ

置いてっちゃうよ


いいこと

時間なんてものは

放っておいたら

進んで行っちゃうのよ

あたしを置いて

あなたを置いて



わくわくしてるんだ

早く先を知りたい

あなたの都合なんて

構っていられないよ


いいこと

タイミングなんてものは

待っていたって

あっという間に擦り抜けちゃうよ

あたしを置いて

あなたを置いて


あたしはもう

待ちたくないよ


いいこと

時間なんてものは

タイミングなんてものは

あなたが作って

今すぐにでも
2006.05.20 Sat l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
シアワセってなんだろうって

一日中考えてた


言葉を綴れること

誰かが見てくれること

面白い本に出会うこと

美味しいご飯を食べること

眠たい時に寝れること

大好きな人に逢えること

行きたい場所に行けること

やりたいことが出来ること

誰かがあたしを好きなこと


あたしがあたしを好きなこと


シアワセってなんだろうって

考えても分からない


でも

シアワセに気付くことは出来る


ささやかでも

小さくても

シアワセ感じられることが

私の幸せ
2006.05.19 Fri l 花膳 l コメント (5) トラックバック (0) l top
良く降りますね
ええ この雨ですよ
こんな日には
あなたのようなお客様がおいでになる

お望みの品はございますか
ないものはございませんよ

空飛ぶ箱も
手乗りの象も
時を映す鏡も
時間が歪む時計も


良くご存知ですね
ええ もちろんです
ご希望とあらば
買い取りも致しておりますとも

なにをお売りになりますか
なんだってかまいませんよ

ずぶ濡れの顔
隠れた涙
疲れきった足も
破れさった恋も


かしこまりました
ええ ではその指輪を
恋心ごと
美味なる記憶を織り込んで

その品でよろしいですね
返却は致しかねますよ

ときめいた心臓
引き裂けた心
零れ咲いた笑顔も
零れ落ちた涙も


少しやみましたね
小糠雨になりました
この程度ならもう
哀しみには濡れますまい

さあどうぞ
お帰りなさい

次に迷い込んでこられても
あなたはもはや別の人だ


幸も不幸も厭わずに
ご自分のものにすべきでしたね
嘆いても悔やんでも遅いのです
ええ お返しは出来ません
それがここの規則です

それではどうぞ
またのお越しを


2006.05.19 Fri l 黄昏通り l コメント (4) トラックバック (0) l top
世界の王様 御触れを出した
王子の呪いを 解いてくれ

王子の魂 身体を抜け出
世界のどこかで 迷ってる

紫の目と 白い毛並みの
猫に宿ると 言うそうな


砂漠の王女は 白沙を固め
砂漠の薔薇で 目を埋めた

雪野の王女は 粉雪を積んで
極光の粒で 目を入れた

高原の姫は 白毛の苔と
ベリーの瞳の 猫にした

海岸の姫は 真珠の粒と
人魚の鱗で 猫にした

都会の王女は 白金の猫
瞳は輝く アメジスト


けれどもどれにも 王子は宿らず

砂漠の猫は 風に崩れて
雪野の猫は 陽射しに溶けて
高原の猫は 枯れてしまって
海岸の猫は 波に解けた
都会の猫は 攫われてしまう


あたしはぱたんと 絵本を閉じて
隣の仔猫に 言い聞かす

いいこと あなたが王子様でも
けして戻っては いけないわ

とかくこの世は 世知辛すぎて
王子様では 生きてけないの


仔猫は軽く 喉を鳴らして
気のない振りで 大あくび


白い和毛と 紫の目の
あたしの可愛い 小さな仔猫は
そんなわけで 今日もまた
仔猫のままで 昼寝する
2006.05.18 Thu l 贈花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
重たい雲を掻き分けて
湿った風を押しやって
遠いところに旅に出よう

白すぎるほどの太陽と
目に付き刺さる青空を
追い求めるため旅に出よう

乾いた夏の風が渡る
広い草原に寝転んで
ひなたの匂いの土の上
草笛を吹き鳴らそう

眩しく光る雲が流れる
大海原を前にして
寄せては返す潮騒の歌
松の木陰で聴き惚れよう


大きな雨粒蹴飛ばして
ぬかるむ道を飛び越えて
遠いところに旅に出よう

焦げ付くほどの太陽と
空を突き抜ける雲の城
素肌も灼ける旅に出よう

眩い星の河が流れる
広い砂丘に寝転んで
熱さを残した砂の上
囁きに耳を傾けよう

濃厚に甘い香りに満ちた
秘密の花園に包まれて
囀りさざめく鳥たちの歌
噴水の縁で聴き惚れよう


今にも降りそな雲の下
溢れんほどの水溜りの上

遠いところに旅に出よう
2006.05.18 Thu l 花膳 l コメント (6) トラックバック (0) l top
喋ろうとしたら
舌を噛んで
歩こうとしたら
足が縺れた

筆圧高くて
ペン先は折れて
携帯電話は
周波数違い

なんだよ
原因は全部俺自身か


なにをするにも
俺が邪魔して
仕方ないので
首を絞めた

朦朧とした
意識の向こうで
首から腕が
離れたのを知る

なんだよ
妨害も全部俺自身か


翌朝はやたらに
目覚めが良くて
風呂場に向かえば
小指を打った

悪態吐きつつ
時計を見れば
いつの間にやら
出かける時間

なんだよ
悪いのは全部俺自身か


サイアクは続いても
毎日も続く
もがけど足掻けど
俺は俺でしかない

それに気付いたら
すとんと落ちた
きれいさっぱり
すっきり落ちた


仕事も捗り
舌も滑らか
意中のあの娘の
お誘いメール

それでもたまには
ミスもするけど
致命傷には
至ったりしない

なんだよ
結局は全部俺自身だ
2006.05.17 Wed l 花膳 l コメント (2) トラックバック (0) l top
恋をしている間
あたしはずっと闇の中にいた
目を見開いていても
どんなに耳を澄ませても
灯りひとつない闇の中では
何も見えなかった

恋なんてそんなもの
すべては手探り
すべてが曖昧
それでも良いと思っていた
悟れなかった頃のあたし

彼の顔なんて見えなかったし
彼の心なんてさわれなかった
見えた気がして
さわれた気がした
それだけだった

恋をしている間
あたしは盲目だった

ていうか
悟ってしまったら
きっと恋なんて
終わっちゃうのだ


                  (2005/04/28)
2006.05.17 Wed l 月々 l コメント (3) トラックバック (0) l top
道端に
「楽」が一つ落ちていた
雨に打たれて濡れていた

ぼくは
そいつを横目で見ながら
握った傘の柄 ひと廻し

「楽」でいるのもラクじゃない
「楽」も楽しいだけじゃない


道端の
「楽」はひっそり落ちていて
見向きもされずに濡れていた

ぼくの
左の袖はしっとりと
革の靴はずぶぬれで

「楽」じゃなくてもラクじゃない
ヒトも楽しいだけじゃない


帰り道
「楽」はやっぱり落ちていて
悟ったように濡れていた

ぼくは
そいつにこっそり笑って
傘に隠れて囁いた

お互い
冷たい雨の中
濡れてそぼつる身の上だ

「楽」じゃないけどラクじゃないけど
「楽」と会えたり楽しいかもね


道端に
「楽」が一つ落ちていた
雨に打たれて濡れていた

ぼくは
そいつに別れを告げて
帰って熱い茶を飲んだ
2006.05.16 Tue l 日々の罅 l コメント (3) トラックバック (0) l top