十二時の鐘が鳴っちゃうよ
走りに不便な靴なんて
いっそ両方脱ぎ捨てちゃって
いそいでいそいで
扉の鍵が閉まっちゃう
重たい門扉が閉ざされて
帰れる場所が隠れちゃう前に
約束事は守らなきゃ
約束したなら守らなきゃ
いそいでいそいで
壁のカレンダーが変わっちゃう
戻らぬ日付に泣く前に
最後の余力で駆け抜けて
ごめんなさいで許される
土下座したって許されぬ
どんな約束も守らなきゃ
守るつもりなら守らなきゃ
だからほら
いそいでいそいで
甘いものは嫌いなんだ、とあなたが
言い訳のように、言ったので
頷いたきり、俯いて
ええ、知らなかったわ、と偉そうに呟き
美味しい筈のチョコを、美味しくなさそうに自分で食べた
隠してたことがあるんだ、と彼が
気詰まりな顔して、切り出すのを
苦しくなるほど待ってたら、くたびれてしまった
喧嘩にすらならない、倦怠の日々で
壊れてしまったのは、心とチョコ
寂しかったんだ、と去り際に
真剣な顔したので、信じてみた
全ての始まりは、スムーズに行くけど
精一杯になりすぎたら、世界が終わってしまう
そうなる前に、そろそろさよならしなくちゃ
たいていのことは、楽しくなれる
チョコレートも、ちょっとしたしあわせ
つまらないなんて、呟いたりしないで
手を伸ばして、手伝ってあげるから
届かない場所を、取り戻しに行こうよ
泣いたりしないで、なんでもないよ
逃げたりしないで、にこやかでいよう
濡れて湿った心を、拭って綺麗に乾かそう
眠りにつく前、猫の仔のように
喉を鳴らして、飲み干したココア
初めての恋は、溌剌としていて
秘めやかな恋を、一人で夢見た
二つめの恋は、不実のままに
平気な顔して、返上したきり
本気の恋を、ホットチョコに想った
まだ見ぬあなたを、待ってたの
見つからないまま、見ていたの
無駄な足掻きと、無残に告げられ
面倒ごとだけ、目の前に
もう戻らない、燃やした包み
妬けるような想いを、焼いて
許せぬ想いを、夕闇に溶かし
夜の街を二人で、よそ見せずに歩いた
楽したいわけじゃないと、落胆の表情
凛然とした私に、悋気を探したあなた
累月の間に、類似してきた二人
連理を契った言葉と、冷凍庫の中で眠ってる
ロンドン土産のチョコは、篭絡の証し
甘いチョコに託して
哀しい恋も、寂しい恋も、
楽しい恋も、嘆いた恋も、
初めての恋も、真面目な恋も、
優しい想いで、笑えるように
(2005/02/11)